喫茶茶会記のスピーカーのこと(その3)
別項でふれたように、中域を受け持つ807-8Aの上下をホーンごと反転させた。
こうすることで入力端子が下に来る。
たったこれだけでも音の変化は決して小さくない。
同じことは既製品のスピーカーでも確かめることができる。
なにもユニットを取り外して向きを変えなくとも、
スピーカー端子に対して上側からスピーカーケーブルを挿すのか、下側から挿すのか。
これだけで音は確実に変化する。
(スピーカー端子の構造によっては試せないこともある)
807-8Aの端子が上にあることは知っていた。
下にしたいと最初から思っていたけれど、
そうすると銘板が上下逆さまになってしまう。
これが気にくわなくて、そのままの状態であれこれやっていた。
けれどトゥイーターの使い方が決り、手応えを感じてきたので、
試しに、と上下を反転させた。
変化量が小さかったら元に戻すつもりだったが、
予想以上に変化は大きかった。それもよい方向、狙っていた方向に思い通りに変化した。
正面からみている分には、上下逆さまになってくることに気づく人はそうはいない。
スピーカーの後にまわりこめばすぐにわかるけれど、
ここでの変化は他のところでなんとかできる性質のものではないため、これでいくことにした。
11月4日に私が喫茶茶会記でやったことは、システムの調整(チューニング)ではない。
エンクロージュアが変ったばかりで、まとまりのない状態のスピーカーを、
スピーカーシステムとしてまとめるための、ひとつのカタチの提案である。
目の前にあるウーファー、エンクロージュア、ホーン、ドライバー、トゥイーターすべてを使って、
私なりのカタチを提案したわけである。
幸いなことに、喫茶茶会記の店主・福地さんは気に入ってくれた。
なので、スピーカーシステムとしてのチューニングはこれから始まる。
ホーンとドライバーの位置はさらにこまかく調整していきたいし、
トゥイーターに関してもいくつかのことはやっておきたい。
それにネットワークとその配線まわりを、そうとうにきちんとしておきたい。
他にもいくつかやっておきたいことはある。
それでも、福地さんはほんとうにうれしそうに聴いてくれていたし、
途中で来られた常連のOさんもうれしそうに聴いてくれていた。
ひとまず提案は成功といえる。
こういうときの人の表情をみていると、
自分のシステムでいい音を出した時よりも、うれしく思ってしまう。
今回のカタチは私が出したものであり、人が変れば同じユニットを使ってもカタチは変ってくる。
私によるカタチをいじるな、とは私はいわない。
自由にいじってもらっていい、くずしてもらってもいい。