組合せという試聴(その6)
雑誌の編集者であれば、関心・興味のない記事でも、場合によっては担当することもある。
けれど川崎先生の「アナログとデジタルの狭間で」の担当編集者は、そうではなかった。
彼は、金沢21世紀美術館で開催された川崎先生の個展に出かけている。
たしか連載が終ってからだったはずである。
押しつけられて担当していたわけではなかったはずだ。
強い関心・興味は、その時点までは少なくとも持っていたはずだ。
そのことを知っているから、どうしてもいいたくなる。
あれから約十年である。
人は生きていれば取捨選択を迫られるし、意識的無意識的に取捨選択をやっている。
十年のあいだにも、いくつもの取捨選択が、誰にでもある。
そこで何を選ぶのか。
現ステレオサウンド編集長が、十年のあいだに何を選んだのかは私にはまったくわからない。
でも、彼が何を捨て去ったのか……、
そのうちのひとつだけはわかる。
それがいまの間違った編集へとつながっていっているのではないのか。