老いとオーディオ(「エマニエル夫人」を観て)
映画「エマニエル夫人」の日本公開は、1974年12月となっている。
私は小学六年生だった。
話題になっていた。
ポスターもよく目にしていた。
あの籐の椅子に坐っているシルヴィア・クリステルは、とにかく強烈だった。
観に行きたいと思っていたけれど、
当時は小学生がひとりで観に行けるわけはなかった。
親と一緒と、という映画でもない。
結局観ることはなかった。
東京に出て来てひとり暮らしを始めてもテレビを持っていないのだから、
ここでも観ることはなかった。
10年くらい前だったか、DVDになっているのをみかけた。
買おうとも思ったけど、買わなかった。
観る機会を逸したままになってしまうのかな、と思っていたら、
Huluで「エマニエル夫人」三部作が公開された。
意外な感じがした。
観て最初に感じたのは、主演のシルヴィア・クリステルが若い、ということ。
そして年齢設定も若い、ということだった。
小学六年生の私には、当時のポスターで見ていたシルヴィア・クリステルは、
とても大人のように思えた。
シルヴィア・クリステルは1952年生れだから、映画撮影時は21歳ということになる。
あのころの私には、もう少し大人の女性のように映っていた。
けれど映画の冒頭に登場するシルヴィア・クリステルは、むしろ少女の面影がある。
そんなふうに 感じたことに驚き、
それだけ私が齢を重ねてきたことを実感していた。それだけ老いたことを。