スピーカー・セッティングの定石(その3)
KEF Model 105に感じた疑問。
それに対する答らしきものを見つけるにはけっこうな時間を必要とした。
ずっと考え続けていたわけではないが、それにしても20年以上経っていた。
それでも答らしきものとしかいえない。
これが完全な答とはいえない。
それでも、これまで聴いてきた音、聴かせてもらった音をふり返って気づいたことがある。
低音再生に関しては、スピーカーを内側に向ける必要はないどころか、
むしろ内側に向けない方がいいのではないのか。
スピーカーと聴き手の位置関係は、
左右のスピーカーを結んだ距離を底辺とする正三角形の頂点で聴くことが基本である。
正三角形が、時には部屋の関係もあって二等辺三角形になることもあるが、
基本は正三角形であり、スピーカーシステムの指向特性が60度の範囲まで保証しているものであれば、
たしかにスピーカーシステムを内側に向ける必要はない、ともいえる。
けれど実際にはスピーカーシステムの指向特性が再生周波数帯域で均一であるとはいえない。
JBLは4350、4341(4343)といった4ウェイのスタジオモニターを開発した理由は、
この指向特性の均一化の実現である。
ただしここでの指向特性はあくまでも水平方向のものであり、
ユニットの数が増えるマルチウェイでは垂直方向の指向特性はまた別問題として存在する。
実際には、だからスピーカーシステムを内側に向けることが多くなる。
どのくらい内側に向けるのか、その角度はスピーカーの指向特性も関係してくるし、
スピーカーシステムのエンクロージュアのプロポーションも関係してくる。
たいていの場合、内側に向けた方がいい結果が得られる。
けれどもし低域(ウーファー)のみ、内側に向けずに正面を向かせ、
中高域のみ内側に向けることができたら……、と考えたことがあった。
そして自作スピーカーを、実にうまく鳴らしている人のセッティングを思い出していた。