ナルシスにて
海底に
万雷をきく
めざめかな
スケッチブックに、こう書かれていた。
新宿のナルシスに飾ってあった。
岡本潤氏によるもの。
岡本潤氏のことはほとんど知らない。
岡本氏が、なぜこう書いたのかはわからない。
ただジャズ喫茶の音、
岡本氏の時代のジャズ喫茶の音とは、こういうことだったのか、と勝手に思いながら眺めていた。
大音量ということだけでは、海底には届かない。
ジャズ・オーディオが大音量だった、ということがいまでも語られているが、
大音量という言葉だけで語られるものではなかったと思っている。
単なる大音量では、目から星が出る、という表現を、
菅野先生が岩崎先生の鳴らされる音を聴いて、そう言われるはずがない。
海底にまで届く万雷のようであるからこそ、ではないのか。
そういう音によって、なにかがめざめる。
遠い昔のジャズ喫茶の音はそういうものだったのかもしれない。
そして、岩崎先生の音もそうだったとおもっている。