夜の質感(その10)
バーンスタインの、ドイツ・グラモフォンでの新録によるマーラーを20数年前、
最初に聴いたときも、いまもそうなのだが、
なにか得体の知れない何かが潜んでいるように感じるところがある。
その生き物のうねりとうなりのようなものにふれている気がする。
そう感じるから、バーンスタインとマーラーの作品とが一体化したと思ってしまう。
この得体の知れない何かの正体を知りたい、と思ってきた。
いまも思っている。
そして、この得体の知れない何かを感じる時に、あぁマーラーだ……、と声にこそ出さないが、
心の中でつぶやいている。
これがマーラーの正しい聴き方なんていう気はさらさらない。
ただ、私はそうマーラーを聴いているし、だからバーンスタインの新録のマーラーを聴きつづけている。
得体の知れない何かが潜んでいるところこそ、闇だとも感じている。