「異相の木」(その11)
カートリッジ専門メーカーであるオルトフォンも、一時期スピーカーを手がけていた。
1970年代なかばごろである。
type 225、type 335、type 445というモデルが輸入されていた。
type 225が2ウェイで48000円,type 335が3ウェイで79000円、
type 445が3ウェイでダブルウーファー仕様で140000円(価格はいずれも一本)。
type 445はフロアー型となっていた。
とはいえ高さ68cmのエンクロージュアだから、
日本の感覚ではブックシェルフに分類されてもおかしくはない。
三機種ともスピーカーユニットはオルトフォン自社製ではなく、
オルトフォンと同じデンマークのスピーカーユニット製造メーカー、Scan Speak製。
オルトフォンのスピーカーシステムは1978年ごろには製造中止になっている。
後継機種も出てこなかった。
type 225はステレオサウンド 36号の特集「スピーカーのすべて」で取り上げられている。
あまり成功しなかったのだろう。
オルトフォンからはアンプも出ていた。
MC20と同時期に登場したヘッドアンプMCA76は、
デンマークの測定器メーカーとして知られるBrüel & Kjærのエンジニアが協力している、と聞いたことがある。
そうかもしれないし違っているかもしれない。
いまも昔もオルトフォンはカートリッジおよびカートリッジ関連以外の製品も作っている。
けれどいまも昔もオルトフォンはカートリッジの専門メーカーである。
だからこそ、もしJBLがカートリッジを手がけていたら……、と想像する時に、
こういうメーカーであるオルトフォンが参考になる気がしている。
それにオルトフォンがハーマン傘下にあった時期、試聴用のスピーカーはJBLの4343であり、
試聴レコードの多くはドイツ・グラモフォンのレコードだったことを、つけ加えておく。