こんなスピーカーもあった(その5)
ソニーのCDプレーヤー、CDP777ESDを使っていたことがある。
このCDプレーヤーの電源トランスは、デジタルとアナログで独立していて、リアパネルに取り付けある。
電源トランスが外部に露出するような形で取り付けてある。
もちろん剥き出しの電源トランスではなくシールドケースに収められた状態ではある。
この取り付け方も、ソニーのエンジニアがある問題を解決しようとしての結果であるわけだが、
使いこなす側からみれば、別の問題があることをわからせてくれる。
ステレオサウンドの試聴室で、CDP777ESDを使っていた時に、井上先生がある指示を出された。
そのとおりやってみると、驚くほど音が変化する。
ここでこういうことをやると、これだけ音が変化するのか。
自分で使っているCDP777ESDでもさっそく試してみた。
試してるうちに、こういうふうにしたら、もっといい結果が得られるのではないか、とあることを考えた。
CDP777ESDのリアパネルを加工する必要があったため実験することはなかった。
それから半年ぐらい経ったころ、パイオニアからPD3000というCDプレーヤーが登場した。
PD3000もCDP777ESDと同じように電源トランスがリアパネルに、外部に露出するような形で取り付けてある。
けれどPD3000にはCDP777ESDにはなかった工夫があった。
PD3000の方法は、私が考えていたのと、ほとんど同じだった。
外部に露出している電源トランスに専用の脚を用意する。
さらにリアパネルとはなんらかの緩衝材を介することでフローティングする。
PD3000も同じことを考えていたわけである。
PD3000を見て、同じことを考える人は常にいることを知った。
おそらくパイオニアのエンジニア、私以外にも、同じことを考えていた人はいるだろう。
同時代に同じアイディアを思いつく人は三人はいる、らしい。
そうだと思う。
さらに時代を遡れば、三人程度ではなく、もっと多くの、同じ発想をしていた人たちがいると思ったほうがいい。
この項の(その2)で書いているように、
松ぼっくりをスピーカーシステムのエンクロージュア内に入れてみたら……、と思いついた人がいる。
このアイディアはずっと以前に製品になっている。
(その3)でのテクニクスのNFBのアイディアも、過去にいくつもの例があった。
それゆえに、「だからこそ」が大事なのにと思う。
それを怠る者が、プロフェッショナルを騙っている。