こんなスピーカーもあった(その3)
ステレオサウンド 57号にテクニカルノートという連載がある。
前号から始まった企画である。
57号では長島先生がマッティ・オタラにTIM歪、NFBのことについてインタヴューされている。
その他に、編集部によるテクニクスとビクター、サンスイのエンジニアへのインタヴューも載っている。
57号のテクニカルノートは、いずれもNFBに関する内容である。
このころ、テクニクスはリニアフィードバック、
ビクターはピュアNFB、サンスイはスーパーフィードバックという技術をそれぞれ開発して、
NFBという古くからの技術を、当時の現代技術によって見直している。
これらの詳細については、ここでの話とは関係ないが、
それでもここで話題にしているのは、テクニクスのインタヴューの中に、
ここでのことと関係しているエピソードが出てきていて、
それを読んだ時(1980年)、エンジニアとはそういうものなのだと感心したからである。
その部分を引用しておく。
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──リニアフィードバック(LFB)回路はテクニクスのオリジナルですか。
テクニクス これにはエピソードがあるんです。私どもに28歳の若い技術者がおりまして、あるとき彼が、もう裸特性の追求にも行きづまりがきたということで、このLFBのアイデアを出したんです。それでは彼のアイデアでやってみようということで、ちょうどSE−A5を出来ていたので急きょA5にこのLFBを搭載したわけです。そうしたら、クォリティが俄然上ったんですね。価格は安いけれどもA3のクォリティが得られたということで、一応満足したわけです。それで、一応特許関係を出そうということで調べたんですが、出るわ出るわ、そういう関連の特許が山ほど出てきたんです。アンプに詳しい数人の方からも、それに似た回路は二十数年前にもあったよ、というお話を伺いました。
担当者にしてみれば、そういうベースなしにたどり着いたわけですから、「やった」と思ったんでしょうね。ところが、そういうわけで「ショボン」としてしまいました。
確かに、20年ほど前の真空管アンプ時代に、無限大フィードバックの手法があります。しかし、実現はしなかったようです。クリップした時に発振してしまうので、みんなおやめになったようですね。
ですから、オリジナリティがあるかといわれたら、基本的にはありません。しかし、アイデアはいただきましたが、実現したのはテクニクスの技術です。単にPFBを初段にかければいいというわけにはいきません。実現させるためのテクニックがいるのです。
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この事例はテクニクスに限ったことではないはずだ。
どのメーカーでも同じのはずであり、プロのエンジニアとして当然のこととしてなすべきことなのだから。
だが、そうでない人がいることを、
ステレオサウンド 57号を読んだ時からずいぶん経ってから知った。