EMT 930stのこと(購入を決めたきっかけ・その3)
トーレンスのPrestigeを、Referenceと同シリーズのプレーヤーとして見るから、
そう思って(がっかり)しまったわけで、
Prestigeというターンテーブルシステムを、そういう先入観なしに冷静に捉えれば、
この時期のトーレンスの主力モデルであったTD12、TD226、TD127といったプレーヤーに、
Referenceの開発で得られたさまざまなことをフィードバックした上級機として見るべきものである。
そういう視点でとらえれば、Prestigeにがっかりすることはない。
でも、これはあくまでも頭のなかで冷静に捉えようとしてのことでしかなく、
一度でもReferenceの素晴らしいパフォーマンスに接した者にとっては、
そんなことはどうでもいいこと、ということになってしまう。
私は熊本のオーディオ店で、Referenceの音を初めて聴いた。
このときの音は、瀬川先生が鳴らされた音であった。
最後にかけられたコリン・デイヴィス指揮のストラヴィンスキーの火の鳥における「凄さ」は、
陳腐な表現で申しわけないが、ほんとうに凄かった。
そして、このときの瀬川先生が私が会えた最後の瀬川先生でもあったから、
Referenceの印象は、ますます強くなっていた。
そんなReferenceと比較してしまう私が悪いわけであって、
Prestigeが悪いプレーヤーということではない。