Date: 10月 27th, 2014
Cate: 理由
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「理由」(その28)

白川静氏が書かれている。

【きよし(浄・清)】純粋で美しい。余分のものや汚れのないことをいう。対義語の【きたなし】はもと「形無し」の意で本来の形が崩れること。これに対して「きよし」は、本来の生気を保っている状態をいうものであろう。もとは人の生きざまをいう語であろうが[万葉]では山川についていうことが多い。

ならば「音楽を聴いて、涙した……、浄化された」ということは、
本来の生気を保っている状態になることであるはずだ。
本来の生気を保っている状態以上にはならないのではないか。

「音楽を聴いて、涙した……、浄化された」と頻繁に口にする人の中には、
どうも勘違いされている方がいるように感じる。
浄化を、あたかも本来の生気を保っている状態以上にしてくれるのだ、と。

【きたなし】はもと「形無し」の意で本来の形が崩れることならば、
浄化によって、本来の生気を保っている状態とは、本来の形をとり戻す、ということになるだろう。

本来の形がいびつなものであったなら……、と考えてしまう。
浄化とは、己のいびつな形から目をそらすことではない、と。

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