総テストという試聴のこと(その1)
いろいろなところに出掛けては音を聴いている人は多い。
個人のリスニングルームを訪ねては、音を聴かせてもらう。
オーディオ販売店に出掛けては、気になる製品をいくつか聴かせてもらう。
オーディオショウに行き、それぞれのブースの音を聴いてくる。
ジャズ喫茶、名曲喫茶と呼ばれているところへも、音を聴きに足を運ぶ。
だが、そうやって数多くの音を聴くようにしていても、
なかなか体験できないのが、いわゆる総テストと呼ばれる試聴である。
総テストとは、例えばスピーカーの試聴なら、その時点で集められるスピーカーシステムをできるだけ集め、
ごく短期間で試聴する。
そこで集められるのは、少ない場合でも20機種ぐらい、多くなれば60機種をこえることもある。
つまり60機種のスピーカーシステムなりアンプなりを、数日間で一気に聴き通す。
ステレオサウンドが3号で、アンプの総テストをしたのが、その始まりといえよう。
ステレオサウンド 3号で集められたアンプの数は35機種となっている。
1967年、こういう試聴テストを行っていたところはひとつもない、ときいている。
総テストはステレオサウンドの試聴のやり方、というイメージが私の中にはできあがっている。
他にもオーディオ雑誌はあるが、月刊誌では総テストと呼べるだけの機種数を集めての試聴は難しい。
総テストは三ヵ月に一冊という、季刊誌だからうまれてきた試聴のやり方でもある。