総テストという試聴のこと(その2)
いまではあまりいわれなくなっているが、
1970年代はアメリカの音、イギリスの音、日本の音……、といったことがよくいわれていたし、
ステレオサウンドでも創刊15周年記念の企画として、
60号でアメリカンサウンド、61号でヨーロピアンサウンド、62号で日本の音を特集のテーマとしている。
つまり三号にわたっての企画である。
アメリカの音は西海岸の音と東海岸の音というように、大きく分けられていたし、
ヨーロッパの音といっても、イギリスの音とドイツの音とでは大きく違う傾向だし、
フランスの音も、イギリス、ドイツの音ともまた違う。
国が違えば音は違う。つまり気候・風土の違いが音にあらわれている、ということだ。
だが、この国による音の違いがさかんにいわれていた時期でも、
そんなことはない、国による音の違いなどなく、あるのはメーカーの違いだけである、という意見もあった。
いまもそういうことを主張する人は少なくない。
なぜなのか、というと、総テストの経験があるかないか、といえる。
スピーカーシステムだけを数十機種集中して聴くことでみえてくることがあるからこそ、
総テストの意味がいまもあるわけだし、
ひとつのスピーカーシステムを時間をかけてじっくりと聴く試聴とは、また違う試聴であるのが総テストである。
総テストの経験の有無が、時として話が噛み合わない原因になることもある。