「理由」(その14)
五味先生が「HiFiへの疑問」(「オーディオ巡礼」所収)に、こう書かれている。
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いつも言うことだが、名曲は、それぞれが名曲だと教えられて人は聴いてきたのではない。或る人が或る曲を聴いて、いい曲だとおもった。彼は自分の胸でそう思っていた、別の人は別の場所で曲を聴いて、感動した。その二人が、偶然、話しあったときに、お互いが似た感じを味わっていたことを知った。──そういう、何万という人々の共通の感動が名曲を作り出したのである。作曲されただけで、名曲というようなものはない。名曲は人々がつくるのだ。
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「真実」も同じだと思っている。
「真実」は人々がつくるものであるし、時間の淘汰を経てきたものであるはずだ。