「理由」(その6)
「五味オーディオ教室」によって、オーディオを読む楽しみ、そして想像する楽しみを、
それこそ暗記するほどまでくり返し読むことで、自分の中に根付かせていた、ようにいまは思う。
タンノイ・オートグラフが、空気が無形のピアノを鳴らす、のを想像していた。
EMT・930stの鳴らす「誠実な音」、優れた真空管アンプの鳴らす「倍音の美しさ」、を想像していた。
想像できるようになるまで、とにかく読むしかなかった。
1976年当時は、すでにオーディオブームだった。
いまでは想像できないだろうが、NHKの教育テレビで「オーディオ入門」という番組をやっていたし、
そのテキストも販売されていた。
菅野先生が龍角散のCMに登場されたのも、このあたりのことだ。
とはいえ、熊本の中心部から、バスで1時間ほどかかるイナカ町では、だからといって、
あれこれ内外の有名なオーディオ機器の音を聴けたわけではない。
聴くためには、バスに揺られて熊本市内まで出て行く必要があった。
都内のバスとはちがって、距離に応じて料金は増していくから、
バス代かレコード代か、はたまたステレオサウンドを買うか。アルバイトのできない中学生は迷う。
それに熊本市内まででかけたところで、オートグラフをマッキントッシュのC22とMC275で聴けるわけでもない。
だから、読むことに集中するしかなかった、ともいえる。
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ご無沙汰いたしております。
いいですね。そんな若き時代の思い出、ある程度年齢を経たオーディオマニアの多くは同様の時代を過ごしたのではないでしょうか。何度も何度も何度も文章を読み込み、自らの憧れのイメージを何処までも膨らませてゆく。
実は人生の秘訣がここにあったことを、わたしはかなり年齢を経た後知ることとなりました。でも音楽とオーディオの世界では思い余っていつの間にか実践していたのです。その意味で実際の人生の師匠は五味さんであり瀬川さんであったといえます。
年齢は経ましたが、まだまだ憧れの世界は残っています、そして少しの欲望も。やはり音楽オーディオは永遠だと感じています。
先日ウィーンで聴くことの出来たティーレマン、ウィーンフィルのベートーヴェン第9番、多分フルトベングラーのバイロイトの第9に並ぶ歴史的演奏であったと感じています。今はあのサウンドイメージをわがリスニングルームで更に磨き上げようと楽しく格闘しています。
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読み返すことで、発見があるわけですから、
たしかに人生の秘訣なのかもしれません。
本にしてもレコードにしても、読み返す、聴き返すことによる発見こそ、
失ってしまっていけないものかも。
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ティーレマン、バイロイトで振っているんですね。いま知りました。
しかもCD化されている。急に聴いてみたくなりました。