岡俊雄氏のこと(その11)
黒田先生は、岡先生の「本物の、筋金入りのサーヴィス精神」について書かれたのに続いて、
「岡さんは若い。それが岡さんの最大の魅力のひとつであり、
それがまたこの本の説得力をたかめる要因になっている」
と書かれている。
私がステレオサウンドにいたとき、
編集部に遊びにこられた回数がいちばん多かったのは岡先生だった。
岡先生は藤沢にお住まいだった。
そのころ編集部のあった六本木と藤沢はけっこう離れている。
それでも都内にほかの用事があって来られる時は、ふらっと編集部に寄られていた。
ある時、試写会で観たばかりの映画について話された。
その映画の主役の俳優について、将来きっと有名になる、
つまりスターとしての華がある、といったことを黛さん相手に楽しそうに話されていた。
映画のストーリーよりも、その役者についての話の方が多かったように記憶している。
だから、その映画が公開になって観に行った。
「卒業白書」という映画だ。
1983年の映画で主役はトム・クルーズ。
トム・クルーズは「卒業白書」でゴールデングローブ賞 主演男優賞にノミネートされた。
この映画を観ながら、岡先生はこういう映画も楽しまれるのか、と思っていたし、
その後トム・クルーズが大スターと呼ばれるようになっていくのをみるにつれ、
岡先生のいわれたとおりだ、とも思っていた。