EMT 930stのこと(購入を決めたきっかけ・その8)
EMTの930stというプレーヤーは、私にとっては特別な意味をもつプレーヤーでもある。
ただ単に音のよい、信頼できるプレーヤーということだけではなく、
五味先生の「五味オーディオ教室」からオーディオの世界にのめり込んでいった私にとって、
五味先生が、誠実な響きとされていたからだ。
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どんな古い録音のレコードもそこに刻まれた音は、驚嘆すべき誠実さで鳴らす、「音楽として」「美しく」である。あまりそれがあざやかなのでチクオンキ的と私は言ったのだが、つまりは、「音楽として美しく」鳴らすのこそは、オーディオの唯一無二のあり方ではなかったか? そう反省して、あらためてEMTに私は感心した。
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オーディオの世界に足を踏み入れようとしていた13の中学生にとって、
この文章の意味は重かったし、大事なことだということはわかっていた。
音と音楽の境界ははなはだ曖昧である。
音楽を聴いているのか、音を聴いているのか、
とはよくいわれることである。
そういう危険なところがあるのは「五味オーディオ教室」を読めばわかる。
わかるからこそ、
《「音楽として美しく」鳴らすのこそは、オーディオの唯一無二のあり方ではなかったか?》
これをよすがとした。
930stがあれば、どこかで踏みとどまれるかもしれない。
そういう意味で、特別なプレーヤーが930stであり、
その色違いの101 Limited見てわずかのあいだにを買う! と決意して、
私のところに、この特別な意味をもつプレーヤーが来ることになった。