EMT 930stのこと(購入を決めたきっかけ・その6)
少年とは、私のこと。18でステレオサウンドで働くようになったので、少年ということだった。
このときいたNさんも、同姓の人がサウンドボーイ編集部にいたので、Jr.(ジュニア)と呼ばれていた。
私も、Nさんと呼ぶことはなくて、ずっとジュニアさんといっていた。
当時のステレオサウンド編集部は、そういう雰囲気があった。
いまは、おそらくそんなことはないと思う。
「少年、これ買えよ」
私だって支払えるだけの経済力があれば、欲しい。
EMTの930stは、五味先生も愛用されていたし、瀬川先生も927Dstにされるまで使われていた。
買えるものならば、いますぐ欲しいプレーヤーだった。
けれどトーレンスの101 Limitedは150万円だった。
21歳の若造が買える金額ではない。
そうでなくてとも、ロジャースのPM510を買ってから一年ほどしか経っていなかった。
余裕は、まったくなかった。
Oさんの「少年、これ買えよ」に続いて、
NさんもSさんも「買いなよ」と、簡単にいってくれる。
このとき930stは製造中止だといわれていた。
101 Limitedにしても、型番が示すように101台の限定である。
この機会をのがしたら、新品の930stを手に入れることは難しくなる。
無理なのはわかっている。
でも、これしかない、とおもったら、「買います」といっていた。