598というスピーカーの存在(その22)
スピーカーシステムからレベルコントロールをなくしてしまえば、
その分配線材の引き回しが減り、レベルコントロールに必要に可変抵抗を、固定抵抗に置き換えることによる、
コストの削減が図れる。
レベルコントロール用のプレートの要らなくなるし、
製造工程においてもレベルコントロールがなくなることで省ける工程も出てくることになる。
トータルでみれば、製造コストをおさえることになっているはずだ。
598の価格帯のスピーカーシステムは、
ほかの価格帯では考えられないほど原価率が高くなっていたはずだ。
それでも売れ筋の価格帯の製品であるだけに、各社間の競争はおさまるよりも、反対の方向であった。
とにかくわかりやすいところにはコストをかけ、削れるところは削る──、
そういう流れから、598のスピーカーシステムからレベルコントロールが消えていったという見方もできる。
音質的にもコスト的にもメリットがある、レベルコントロール削除。
メーカーが、責任をもって、各ユニットのバランスを調整しているのであれば、
使い手側から文句は出なかったし、オーディオ評論家からもそれに対する批判は出なかった、はず。
にもかかわらず598のスピーカーシステムに対して、
レベルコントロールをなくしたことに、あれこれいわれていた。
なぜ、そんなふうになっていったかについては、
598のスピーカーシステムが物量を投入しすぎたため、重量バランスを欠いたことが大きく影響している、
と私は考えている。
同じレベルコントロールが省かれることの多いイギリスのスピーカーシステムに対しては、
そういったことはいわない人でも598のスピーカーシステムに対しては、いう。
それは598のスピーカーシステムのレベルコントロールが拙いから、ということでは必ずしもない。