公開対談について(その11)
とにかくインターネットから離れたところで、なにかをやらなければ、と思い始めていた。
それは、この項の(その1)ですこし触れていることがきっかけだった。
三年以上前の夢に長島先生が出てこられた。
そのとき「こんなところにいていいのか!」といわれた。
それで目が覚めた。
「こんなところ」とはどこかを長島先生ははっきりといわれたわけではなかった。
けれど、「こんなところ」がインターネットだけにとどまっていることだ、ということはすぐにわかった。
とにかくインターネットから離れて、つまり外に出てなにかをやろう。
サンスイがショールームでやっていことをいまやれればいいな、と思いはしたが、
そういう時代ではなくなっている。
それにサンスイは、オーディオ御三家と呼ばれていた会社であり、
1970年代は岩崎先生、瀬川先生も健在だった。あのころとは何もかも違いすぎる。
個人が、インターネットを離れてオーディオに関することをやろうとしたら、
まず場所の問題がある。
これは私の場合、問題なかった。
四谷三丁目にあるジャズ喫茶・喫茶茶会記の店主、福地さんが協力してくださるからだ。
ではなにをやるのか。
オーディオ機器を集めて、試聴会ができれば、楽しい。
だが最初からそんなことができるとは思っていない。
とにかくできることは何かと考えた。
対談がある、と思った。
そこで、ある人に、こういう場所で、毎月一度、オーディオと音楽をテーマに対談しませんか、と話した。
相手は乗る気になってくれた。
しばらくして、具体的に話を進めようとしたら、もう面倒臭くなった、という返事だった。
実は、この人がこういう返事をしてくるのはある程度予想していた。
毎度のことである。
彼の性格からして、自分から言い出したことも、私から言い出したことも、
最初のうちはすごい乗る気なのだが、ほんのわずかの間に、まったく正反対のことを言う人なのは、
長いつき合いでわかっていた。
わかっていたことだから、落胆もない。
他の人を探すだけである。
そうして、とにかく毎月第一水曜日の夜七時から、
四谷三丁目・喫茶茶会記での、公開対談を始めることになった。