シフのベートーヴェン(その4)
アンドラーシュ・シフのゴールドベルグ変奏曲のECM盤をもらったのは、
2004年の1月か、そのあたりだったと記憶している。
シフのゴールドベルグ変奏曲は20年ぶりの再録音である。
デッカでの旧録はスタジオ、ECMの新録はライヴである。
最初,そのことに気づかずにCDプレーヤーにディスクをセットした。
ピアノ・ソロだから、だいたい音量はこのくらいかな、という位置にレベルコントロールをセットした。
すぐに音が出てくるものとかまえていたら、肩透かしをくらった。
演奏が始まるまで(最初の一音が鳴り出すまで)に、すこしばかり時間がかかる。
どうしたのかな、と思っていると、音が鳴り出す。
ライヴ録音だということをジャケットを聴く前に読んでいたら、
どうしたのかな、と思うことはなかったわけだが、
身構えていたのに肩透かしをくらったことは、よかったのかもしれない。
とにかくシフの音は美しかった。
1980年代に、デッカの旧録を聴いた時のことが思い出されてきた。
あの時と、まったく同じだ、と思っていた。
もちろんまったく同じだ、といっても、完全に同じというわけではない。
でも、1980年代にまだ20代のときにシフの演奏を聴いて受けたものと同じものを、
2004年、40代になっていた私は、感じていた。