Date: 7月 31st, 2013
Cate: ベートーヴェン
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シフのベートーヴェン(その5)

アンドラーシュ・シフのCDをはじめて聴いた時のことが思い出されてきた。
その時受けた印象が、まるっきり同じである。

だからといってシフが変っていないわけではない。
約20年の歳月、私もそれだけ歳をとっているし、シフだって同じに歳をとっている。
20年前に鳴らしていたオーディオ機器は、なにひとついまはない。
まったく違うオーディオ機器で鳴らしての印象が同じだった。

たとえ同じオーディオ機器を持っていて、住んでいるところも同じだったとしても、
20年前の音と2004年の音がおなじなわけはない。

まわりの環境も、ほぼすべてが変っている。
変っていないものといえば、
デッカ時代のシフゴールドベルグ変奏曲のCDに刻まれているピット(データ)だけしかない。

そのデッカ時代のゴールドベルグ変奏曲のCDを、2004年に聴いたところで、
20年前と同じ印象を受けることは、まずない。
そういうもののはずだ。

にも関わらず、シフの20年ぶりのゴールドベルグ変奏曲の新録を聴いて、
20年前にはじめてシフの演奏を聴いた時と同じ印象を受けている──、
つまり変っていないものを聴いて変化に気付き、
変っているものをきいて、変っていない、と感じる。

このことが意味するところを考えると、
アンドラーシュ・シフの音楽家としての才能の豊かさとか素晴らしさ、といったことではなく、
シフというピアニストの特異性のようなものに気づく。

そして、それからシフのECMでの録音を集中的に聴くようになった。
20年前と同じことをくり返していた。

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