AAとGGに通底するもの(その9)
「肉体のない音」といえば、3年前にリリースされたグールドの1955年のゴールドベルグ変奏曲を、
ヤマハの、まったく新しい自動演奏ピアノを使って再録音したSACDのことを、
誰しも頭に浮かべるのではないだろうか。
これこそ「肉体のない音」といえるものであるはずで、このディスクが発売されることを知ったとき、
「肉体のない音」とは、どういうものか、この耳で、少なくとも、そのひとつの例を確かめることができると、
そういう気持が先立っていた。
re-performance、と、この自動演奏ピアノの仕組みをつくりあげた会社は、そう呼んでいる。
発売後、すぐに購入した。いわば、変な期待をもちながら、音が鳴りだすのを待った。
鳴った、「グールドだ!」と、当り前すぎることを、心の中でつぶやいた。
ピアノのメーカーも、録音方式も、いろんなことが大きく違うにも関わらず、
「グールドだ!」と認識してしまったことに、すこし拍子抜けするとともに、
すこしばかり驚いてしまった。
これはほんとうに「肉体のない音」なのか。