598というスピーカーの存在(その20)
長島先生によるステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 2、
「図説・MC型カートリッジの研究」には「世界のMC型いろいろ」という記事で、
当時(1978年)市販されていたMC型カートリッジの代表機種の内部構造図が21機種、掲載されている。
この内部構造図は資料的価値も非常に高い。
この内部構造図は目次にもあるように、神部(かんべ)明さんによるものだ。
以前、神部さんにこのときのことを聞いている。
21のカートリッジすべてひとつひとつ分解して、細部の寸法を計測して描いたものだ、と。
この内部構造図を見比べていくと、ダンパーひとつとっても、
各メーカーによってずいぶん違うことがわかる。
いくつかのメーカーはダンパーを二枚用いる二重ダンパーを採用している。
具体的に名をあげれば、フィデリティ・リサーチのFR7、ハイレクトの2017、ナカミチのMC1000、
スペックスのSD909、EMTのTSD15、オルトフォンのSPUとMC20、フィリップスのGP922だ。
二重ダンパーといっても、TSD15の場合、二枚のダンパーを前後で重ねてるタイプではなく、
内側と外側の二重ダンパーなので、その他の二重ダンパーとは、やや異る。
これら二重ダンパーのカートリッジはふたつのグループにわけられる。
FR7、2017、SPU、MC20というグループとMC1000、SD909、GP922のグループとである。
この二つのグループの違いは、コイルからの引出し線をどう引き出しているかの違いであり、
FR7、2017、SPU、MC20は二重ダンパーの構造を活かし、
コイルからの線をいったん二枚のダンパーではさんだ上で引き出されている。
MC1000、SD909、GP922はコイルからそのまま引き出されているし、
二重ダンパー以外のMC型カートリッジもそうなっている。