598というスピーカーの存在(その21)
MC型カートリッジの性能はカンチレバー、針先、ダンパー、コイルなどによって決まっていくものであり、
コイルからの引出し線の引き出し方は性能ということには影響しないとも考えられる。
けれど、その性能の中に音を含めると、コイルの引き出し線の引き出し方は影響するといえるる。
このことについて長島先生は、こう解説されている。
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MCカートリッジは、強い磁界の中をコイル引出し線が通る場合、リード線の振動によって発電が行なわれ、この信号が出力に混入してしまうことがある。こうなると、種として高域にコイルリード線の鳴きの影響が生じ、再生音を濁らせる結果となりやすい。その点、このカートリッジのように、コイルリード線の振動部分をダンパーでダンプした構造にしておけば、そのような害はほとんど防止することができるのである。
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二重ダンパーを採用しているカートリッジであれば、細かな配慮をすることで、
この部分の問題をほぼ解消できるわけでもあり、
このコイルの引出し線がカートリッジ内部で振動によって発電する問題は、
そのままスピーカーエンクロージュア内部の配線材に関してもあてはまることである。
スピーカーエンクロージュア内部にはスピーカーユニットからの洩れ磁束があり、
しかも互いに干渉しているわけでもある
そんな中をネットワーク本体からレベルコントロールまでの配線材は通っている。
しかもスピーカーエンクロージュア内部は、ウーファーの音圧によって振動の影響は大きい。
音量を上げれば、それだけ内部の振動も大きくなる。
さらにネットワークのコイルからのノイズの影響もある。
コイルはその性質上、定常状態を保とうと働く。
信号が流れていない状態から信号を流そうとすると、流すまいとしてパルス状のノイズを発生するし、
それまで流れていた信号をとめると、今度は流そうとして、今度もパルス状のノイズを出す。
そういういくつもの音に影響の与える環境の中を配線材は引き回されているわけだから、
配線材の引き回し方、固定の仕方は音のクォリティに関係してくるし、
引き回しがなくなれば、それだけ音質的には有利であるし、ずっと楽になるともいえよう。