598のスピーカーという存在(その16)
1982年の598のスピーカーシステム三機種にはフロントバッフルに、
スコーカーとトゥイーターのレベルコントロールのツマミと表示パネルがついている。
1987年の598のスピーカーシステム三機種のフロントバッフルにはレベルコントロールはない。
リアバッフルにもない。レベルコントロール機能自体が省かれている。
なぜレベルコントロールがなくなったのか。
これも聴感上のS/N比と関係してのことであある。
レベルコントロールの表示パネルはたいていプラスチック製だった。
エンクロージュアは木製。
フロントバッフルを叩いた時の音と較べると、
レベルコントロールのプラスチック製のパネルを指ではじいた音は異質なものである。
この異質な音はスピーカーユニットに信号が加わり振動が発生することで、
その振動がフレームからフロントバッフルに伝わり、このプラスチック製のパネルとも振動させ、
不要輻射の発生源となる。
しかもレベルコントロールのツマミも多くはプラスチック製で、回転できるように周辺どの間に溝がある。
この溝も不要輻射の発生源となっている。
昔の国産のスピーカーシステムはフロントバッフルに、こういったつくりのレベルコントロールがある。
それが音にどのくらい影響しているのかは、
このレベルコントロールをフェルトなどで覆い隠してみることではっきりと耳で確認できる。
その意味ではレベルコントロールを廃したことは決して悪いことではない。
そう考えることもできる。
実際にイギリス製のスピーカーシステム、
それもBBCモニターのスピーカーではレベルコントロールがないものも多い。
そのことに批判めいたことはいう人はいなかった。
けれど598のスピーカーシステムからレベルコントロールが消えたことに対しては、
批判の声もあった。
それはなぜだろうか。
実は598のスピーカーシステムの重量が増し、重量バランスが悪くなってしまったことと関係している。