想像つかないこともある、ということ(その1)
スイングジャーナル 1978年5月号に「岩崎千明を偲ぶ会開かれる」という記事が載っている。
一関ベイシーの菅原昭二氏が、岩崎先生との想い出について書かれている。
そこにこうある。
*
背筋を伸ばしたままの状態でそっと腰をおろすとパラゴンがうなった。圧倒的な音量。私だって音量では人後におちない部類に入ると思うのだが、岩崎さんのそれはまたひとつ、ケタが違うのだ。見るとSG520のボリュームつまみはこれ以上、上に昇れないところに行っている。プリ・アンプのボリュームをオープンにしちゃうとどうもスカッとふんぎりがつくようなのだ。これができるかできないかで、岩崎さんになれるかなれないかが別れるのだ。
*
岩崎先生のパラゴンはLE15Aが入っているものだから、カタログに載っている出力音圧レベルは95dB。
菅原氏が聴かれたのは引越しの途中であって、新居にはすでにハーツフィールドやパトリシアンがおさまっていて、
ステレオサウンド 38号にも載っているパラゴンが置かれている、いわば旧宅での音である。
菅原氏の文章ではパワーアンプがなにかははっきりしないけれど、
ステレオサウンド 38号ではクワドエイトLM6200RとパイオニアExclusive M4だったが、
これらのアンプはすでに新居に運ばれていたのだろう。
だからコントロールアンプはSG520だったと思う。
ということはパワーアンプもM4ではなく、JBLのSE400なのかもしれない。
出力はM4もSE400もほぼ同じ。だから、どのパワーアンプなのかはっきりしなくても、
そんなことは些細なことでしかない。
岩崎先生の旧宅のリスニングルームは、写真でみるかぎり、ものすごく広い空間ではない。
そこでSG520のボリュウムが全開ということは、正直想像つかない。
菅原氏が「またひとつ、ケタが違うのだ」と書かれている。
そうとうに大きなことだけははっきりしている。
でも、それがほんとうのところ、どれだけのレベルなのかは、いまの私にはまだ想像つかない。
しかも音圧計で、ピークで何dB出ていました、といったことで表せる領域でもない。
ただ音がでかいだけではないのだから。
それでも、その領域に少しでも近づきたい、という気持が芽生えている。