Archive for 6月, 2017

Date: 6月 2nd, 2017
Cate: 戻っていく感覚

The farther backward you can look, the farther forward you are likely to see.

名言・格言の類を積極的に調べることはないが、
なにかのきっかけで知ることは意外とある。

ウィンストン・チャーチルの言葉である。
The farther backward you can look, the farther forward you are likely to see.
(過去をより遠くまでふり返ることができれば、未来も同じくらいに遠くまでみることができよう)

そうだと思う。
そしてfartherをdeeperに置き換えても、そうだと思う。
The deeper backward you can look, the deeper forward you are likely to see.

過去をより深くふり返ることができれば、未来も同じくらいに深くみることができるのではないだろうか。

Date: 6月 2nd, 2017
Cate:

日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その12)

ヴァイタヴォックスのスピーカーシステムといえば、
わが国ではCN191 Corner Hornがもっとも知られる存在である。

CN191の上にBass Binというモデルもあったが、こちらは完全な劇場用であり、
家庭でこのモデルを鳴らしている人は、ほとんどいないと思われる。

CN191の他に、もうひとつBiton Majorがあった。
CN191の陰にかくれがちなこのスピーカーは、
アルテックのMagnificentと同じ構成である。

Magnificentには、もうひとつ型番があってA7-500W-1ともいう。
A7がついていることからもわかるように、基本的には劇場用のA7をベースに、
家庭用に仕上げ直したモデルである。

エンクロージュアの基本は、828である。
フロントショートホーン付きのエンクロージュアを、A7の使用方法とは上下逆に使う。
フロントショートホーンが下部にくる。
エンクロージュアの上部に乗っていたホーンとドライバーを、開口部に持ってくる。
仕上げも素っ気ないA7とは対照的にウォールナット仕上げで、格子グリルを備える。

Biton Majorもそうである。
こちらには格子グリルはつかないが、エンクロージュアの構成、使い方もMagnificentと同じである。

ステレオサウンド 43号で、このスピーカーの存在を知った。
     *
ヴァイタヴォックスの音をひと口でいえば、アルテックの英国版。要するにアルテックの朗々と響きの豊かで暖かい、しかしアメリカ流にやや身振りの大きな音を、イギリス風に渋く地味に包み込んだという感じ。A7−500−8のレンジをもう少し広げて、繊細感と渋味の加わった音がバイトーン・メイジャー。
     *
でも、このころはCN191のほうに目が行ってしまっていた。

Date: 6月 2nd, 2017
Cate:

日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その11)

こういうふうに鳴ってくれるのであれば、アルテックで聴く日本語の歌はいい──、
そう思いながらも、欲深いのか、これがヴァイタヴォックスならば……、と思ってしまう。

日本語の歌といっても、
私の場合、グラシェラ・スサーナによる日本語の歌といいかえてもいいくらいに、
他の歌手による日本語の歌のディスクはそれほど持っていない。
しかも男性歌手よりも女性歌手の方が多く、
いうまでもなくグラシェラ・スサーナも女性である。

だから、ヴァイタヴォックスならば……、と思ってしまうわけだ。
久しく聴いていない、英国のアルテック的スピーカーともいえるヴァイタヴォックスのことをおもう。

ヴァイタヴォックスならば、もっとしんみりと鳴ってくれるのではないか、
ヴァイタヴォックスならば、もっと気品ある声で鳴ってくれそうである、とか、
ヴァイタヴォックスならば……、そんなことをつい思ってしまう。

ヴァイタヴォックスの音は、何度か聴く機会があった。
いいスピーカーである。
でも、一度も日本語の歌をヴァイタヴォックスで聴きたいと思ったことはなかった。
それは、どこかアルテックで聴きたいと思わなかったことと近いのかもしれない。

それが、いま無性にヴァイタヴォックスでグラシェラ・スサーナの歌を聴いてみたい、と思っている。
アルテックで聴いたからである。

Date: 6月 2nd, 2017
Cate:

日本の歌、日本語の歌(アルテックで聴く・その10)

もうひとつ思い出していたことがある。
美空ひばりとアルテックについて、である。

ナロウレンジ考(その16)」と(その15)に書いていることである。

瀬川先生が、銀座の日本楽器でアルテックのA4から突如として鳴ってきた美空ひばりの歌、
その音について書かれているのが(その16)、
美空ひばり自身が、アルテックのA7から鳴ってきた自身の歌をきいて、
「このスピーカーから私の声がしている」がいったというエピソード。

美空ひばりを演歌歌手という人もいるのには少々驚くが、
歌謡曲といってしまうのも少々抵抗感があるし、
そういうことに拘らずに、日本語の歌をうたってきた歌手という認識でいいとおもう。

美空ひばりの日本語の歌は、多くのJ-POPでうたわれる日本語の歌とは違う。
昔からの日本語の歌をきかせてくれる。

その美空ひばりをアルテックが、うまく鳴らすという事実。
ずっと以前から、その事実はある。

たった二例をもってして、事実と言い切るのか、と問われれば、
そうだ、と答えたくなるほど、
アルテックで聴くグラシェラ・スサーナの日本語の歌はよかった。

この時のシステムのセッティングにかけた時間は30分ほどであるから、
まだまだこまかな不備は感じられたけれど、大事なところはきちんと鳴っていた。
おそらく日本のスピーカーで聴くよりも、
ずっと日本人の気持を歌にのせて聴き手に伝えてくれる音であった。

このことをオーディオ的にとらえれば、
ヤマハNS5000の試作機が日本語の歌をまったく鳴らせられなかったことの裏返しでもあろう。

Date: 6月 1st, 2017
Cate: ロマン

THE DIALOGUEと38W(対話における信号伝達)

誰かになにかを伝えたい時、ずっと以前は電話をするか、
直接会って話すかくらいだった。

現在は大きく変化してきている。
ちょっとしたことを伝えたいだけなら、電話でなく、メールをするようになった。
スマートフォンとSNSが一般的になってくると、
メールではなくSNSのメッセージ機能を利用することが増えてきた。

メールにしてもSNSのメッセージ、どちらも文字によって情報を相手に伝える。
手書きの文字ではなく、活字といっていい文字による伝達であり、
ここにおいては、信号伝達である。

信号伝達であり、送信側にも受信側には同じ情報が残る。
スマートフォンがあれば、いつでもどこでもその情報を確認できる意味でも、
信号伝達である。

電話、直接会っての対話は、信号伝達でもあるが、
それ以上にエネルギー伝達といえるのではないか。

声という、その人固有のエネルギーによってやりとりをする。
録音でもしないかぎり、そこでのやりとりはどちらにも残らない。
その意味でも、信号伝達ではなくエネルギー伝達である。

Date: 6月 1st, 2017
Cate: ロマン

THE DIALOGUEと38W(感覚論としてのエネルギー伝送と信号伝送)

これまでに何度か書いているように、
個人的な感覚論にしかすぎないことなのだが、
私にとってアナログディスクはエネルギー伝送、CDは信号伝送、というイメージへとつながっている。

「THE DIALOGUE」はLPで聴いてきた。
もちろん33 1/3回転盤である。
「THE DIALOGUE」は、オーディオラボのLPでもそうとうに売れたのだろう。
しばらくしてUHQR盤による78回転盤も登場した。

手離してしまって、もう手元にはないが、
片面に一曲ずつカッティングされていた、と記憶している。

「THE DIALOGUE」の78回転盤を聴けば、
アナログディスクはエネルギー伝送メディアだと実感する。
ここまでいかなくとも、45回転盤でも同じように感じる。

信号伝送という点からだけみれば、大口径ウーファーよりも小口径ウーファーとなろう。
小口径ウーファーよりもヘッドフォン、さらにはイヤフォンへといこう。

けれどエネルギー伝送メディアと、
感覚的にとらえられるアナログディスクからオーディオに入ってきた者にとって、
信号伝送よりもエネルギー伝送系としてのシステムの構築は,皮膚感覚として排除できない。

私はLPからだったが、SPの時代からオーディオにのめりこんできた人にとっては、
私以上にアナログディスクをエネルギー伝送メディアととらえていても不思議ではない。

もちろん最初に書いているように、あくまでも感覚論である。
アナログディスクを信号伝送メディアととらえても、間違いではない。

それでもオーディオショウなどで、ハイレゾリューション再生を聴いていると、
デジタルにおいて、ハイサンプリング、ハイビットとなることで記録できる情報量は増えるし、
その精度も向上しても、エネルギー量(感覚的には、ではある)が増しているようには、
いまのところ感じることはできていない。

実のところ、自分のシステムでハイレゾリューション再生には取り組んでいないので、
あくまでもオーディオショウやオーディオ店で聴いたかぎりの感想にすぎない。

このへんは自分でやることによって印象は変化してくるであろうが、
それでもエネルギー伝送メディアとしてのアナログディスクの優位性のようなものは、
おそらく私のなかでは変らないかもしれない。

そんな私にとって38Wは、エネルギー伝送系の最後を担うわけだ。
78回転の「THE DIALOGUE」を聴いている私には、
このふたつを切り離して考えられないところがある。