五味康祐氏とステレオサウンド(「音楽談義」をきいて・その2)
「音楽談義」は1967年春、鎌倉で行われた。
当時のことだからオープンリールのポータブルデッキでの録音だと思う。
当然モノーラルである。
それを編集してカセットテープ二巻におさめたのが「音楽談義」である。
そのことからわかるように、音は良くない。悪いといってもいい。
かなり聞き取りづらいところもある。
それでも聞いていると、話の面白さに引き込まれて、
まったく気にならないといえばウソになるけれど、がまんならないというほどではない。
この「音楽談義」から小林秀雄氏の発言だけを抜粋して、
「音楽談義」で語られているレコードを収録したものが、
いまも新潮社から発売されている「小林秀雄講演【第六巻】 音楽について」だ。
こちらはCD二枚組であり、収録されている音楽は「音楽談義」に収録されている数よりも多い。
けれどここでは小林秀雄氏の発言の抜粋であり、「音楽談義」そのものを聞くことができるわけではない。
このことを勘違いされていて、
「音楽談義」そのものが「小林秀雄講演【第六巻】」で聞けると思っている人がいる。
「音楽談義」には、ステレオサウンド 2号に掲載された「音楽談義」をおさめた冊子ついている。
その冒頭には、
このカセットブックの開設資料として、ステレオサウンド誌2号(昭和42年5月1日発行)に掲載されたものを、著作権者の許可を得て全文掲載いたします。
なお、両氏の加筆訂正を経て文字化された誌面と肉声のテープ内容とでは、表現等で多少の違いがありますことを予めお断りしておきます。
と書いてある。
小林秀雄氏は、話したものに対してかなり加筆訂正をされるときいている。
だからステレオサウンド 2号を読んでいるから「音楽談義」は聞く必要がないわけではないし、
「音楽談義」を聞いたからステレオサウンド 2号掲載の「音楽談義」を読まなくていいわけでもない。
ステレオサウンド 2号に掲載された「音楽談義」は、
新潮文庫「直観を磨くもの―小林秀雄対話集―」で全文が読める。