Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 2月 23rd, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その5)

セレッションのHF1300は、正確に言えばドーム型トゥイーターとは呼びにくい。
見た目はたしかにドーム型のようだが、振動板の形状は、いわゆるドーム状ではなく、鈍角の円錐状に近い。
材質は、合成樹脂という記述も見かけるが、山中先生によるとアルミ合金製、とのこと。

この振動板の前面に、音響負荷の役割をもつディフューザーを置き、
振動板の固有振動の抑制と高域の指向特性の改善を図っている。

現在、似た構造のトゥイーターは、おそらくないと思う。

このHF1300を、LS5/1は2個使っている。
ただ単純に並列に接いでいるわけではなく、3kHz以上では、1個だけロールオフさせている。
とうぜん、高域補整のない、一般のパワーアンプで鳴らすと高域はゆるやかに減衰してゆくかたちになるが、
高域補整しない音を聴いてみると、じつは意外にも聴ける。

LS5/1のウーファーは38cm口径のグッドマン製。
1.75kHzのクロスオーバー周波数だから、38cm口径よりも30cm口径のウーファーの方が有利なのでは?
と思いがちだが、38cm口径の方が高域特性に優れているから、の採用理由だときいている。

ウーファーはフロントバッフルの裏側から取りつけられている。
しかもバッフルの開口部は通常の円ではなく、四角。
LS5/1Aを実測したところ、横幅は18cmだった。ウーファーの左右端はバッフルによってやや隠れる形になる。
縦はもうすこし長くとられているが、ウーファーのエッジはほとんど隠れてしまう。

この四角の開口部は、クロスオーバー周波数附近の指向特性を改善するためであり、
LS5/1の開発中に、開発の中心人物であったハーウッド(のちのハーベスの創設者)が気づいたもの、とのこと。

この手法は、チャートウェルのLS5/8まで続いていたし、
スペンドールのBCIII、SAIIIのウーファーも、LS5/1ほどではないにしても、左右は多少隠れている。

実際に測定してみると、60度での効果はあまりないようだが、
30度までの範囲であればはっきりと水平方向の指向特性の改善が示される、ときいたことがある。

Date: 2月 21st, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その4)

いま入手できるスピーカーユニットは、なにも新品、現行製品に限るというわけではない。
少々の根気があれば、良好なモノが見つけられる可能性のある製造中止のユニットも含めて、のことだ。

だから、LS5/1をいまつくるとしたら、大きくふたつある。
ひとつは、あくまでも現行のスピーカーユニットのみで構成するということ。
もうひとつは、現行・製造中止に関係なく、入手できそうなユニットであれば採用するということ。

最初の現行のスピーカーユニットだけで、というのが、実はけっこう難しい。

LS5/1の良さを、なんとか再構築してみたいと思い、
各国のスピーカーユニットの製造メーカーのウェブサイトをみてまわっているけど、
なかなかセレッションのHF1300のかわりになるようなユニットは、ない。

LS5/1のウーファーとトゥイーターのクロスオーバー周波数は1.75kHz。
トゥイーターはドーム型だから、現在のスピーカーシステムの一般的な値からすると、意外に低い。

おそらくHF1300の数字は、1.3kHzから使えるということだと思う。
それでいて十分な高域まで延びていること。

いま入手できる現行製品のドーム型トゥイーターだと、比較的口径の大きなもので25mm、
たいていのユニットはさらに小さい。
といってもうすこし大きい口径のものとなると、いきなりスコーカー用となってしまい、
逆に大きくなってしまう。

HF1300は38mm口径のダイアフラムを採用している。
だから、このトゥイーターを採用した他のスピーカーシステム、
たとえばスペンドールのBCII、BCIII、B&WのDM4などは、
HF1300の上にスーパートゥイーターを追加している。

決して20kHzまで高域がきれいに延びているトゥイーターではない、が、
私の好きなイギリスのスピーカーには、たいてい、このHF1300がついている。

Date: 2月 20th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その3)

手応えを感じていた。

スピーカーシステム本体だけでなく、パワーアンプのほうが、さらにくたびれていた。
時間をかけて、きちんと手入れをしていけば、もっと素晴らしい、美しい音を鳴らしてくれる……。

でもその期待もしばらくして、アンプが片チャンネル、低域発振しはじめて、
さらにウーファーも片チャンネル、ボイスコイルが断線したようで、まったく鳴らなくなった。

オーディオに関心のない人にとっては、わずか数ヵ月の音のために、
40万円という出費は、馬鹿げたものでしかないだろう。

たしかに高い買い物だった。
しかも、その頃は仕事をしていなかったから。

それでもLS5/1が聴かせてくれた音、
聴かせてくれたであろう音を想像すると、
自分のモノとして鳴らしてよかった、と思えてくる。

LS5/1というスピーカーシステムを、もっともっと詰めていけば、
どこまでの音を鳴らしてくれるのか、そういう想いが、そのときからどこかにくすぶっている。
そして、いつかは、LS5/1をふたたび手にしよう、それも今度は、自分の手でつくって、だ。

LS5/1は製造されて50年以上、KEFのLS5/1Aにしても、40年以上(50年近い)経過している。
もう程度のいいモノを見つけてくるのは、とても困難だし、
使われているユニットの作りからしても、これから先、あと何年もつのかも、心もとないところがある。

ならば、いま手に入るユニットを使って、自分でつくってみるしかない。

Date: 2月 20th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その2)

BBCモニターのLS5/1を、無線と実験の売買欄で見つけて、
なんとかお金を工面して購入して、運び込まれた日、その外観を見て、すこし落胆した。

木目のエンクロージュアのはずなのに、目の前にあるスピーカーはグレイの塗装仕上げ。
売買欄には、はっきりとKEFのLS5/1Aとあったが、
実際に届いたのは、KEFがまだ設立される前につくられたLS5/1だった。

その分、年季の入ったモノだった(つまり、けっこうくたびれていた)。
附属の専用アンプも、EL34のプッシュプルであることは同じでも、
製造会社が、リークとラドフォードで違う。

こんな感じだったので、正直、最初の音出しはまったく期待していなかった。
それでも、ぱっと手にとったCDをかける。

ステレオサウンドで働くようになってしばらくして、
試聴室で聴いた瀬川先生のLS5/1Aを聴いたときよりも、印象がいい。

おそらく、私が手にしたLS5/1は1958年ごろ作られたものと思われる。
当時としてはワイドレンジだったLS5/1も、すでにナローレンジのスピーカーのはずだが、
鳴ってきた音は、そんなことはまったく意識させずに、美しいと思わせてくれた。

見た目のくたびれた感じは、目を閉じて聴いていればまったくない。
フレッシュな音、とはいわないけれど、ケイト・ブッシュの声を、こんなにもよく鳴らしてくれるなんて、
なんという誤算だろう、と思っていた。

しかも、この大きさのスピーカーシステムなのに、驚くほど定位がいい。
その定位の良さは、ある種快感でもある。
ふたつのスピーカーの中央に、数歩前に出て、ケイト・ブッシュがいて、歌っている。

これはそうとうにいいスピーカーだ、と確信した。

Date: 2月 19th, 2011
Cate: KEF, LS5/1A

妄想組合せの楽しみ(自作スピーカー篇・その1)

あれこれ妄想しているのは、システム全体の組合せだけではなく、
自作スピーカーに関しても、けっこう、電車の中、とか、映画館での待ち時間、とか、
そういうなんとなく、ぽっかり空いた時間に考えている。

ただ自作スピーカーといっても、私のなかでは、その大半を占めているのは、
BBCモニターのLS5/1を、どうつくるか、だ。

LS5/1は、グッドマンの38cm口径ウーファーと、セレッションのドーム型トゥイーターHF1300を2本、
やや特殊なネットワークで構成したスピーカーシステムで、
あらためていうまでもはなく瀬川先生がもっとも愛されたスピーカーシステムである。

私の、あまりコンディションのいいものではなかったけれど、LS5/1は鳴らしていた時期がある。
それに、ステレオサウンドの試聴室で、瀬川先生の愛器そのものだったKEFのLS5/1Aそのものも聴いている。

このスピーカーシステムの特質については、瀬川先生ほどではないにしても、
ある程度は知っている、と自負している。

だから、いまLS5/1を再現してみたら……、という誘惑が、消え去ることがない。

オリジナル通りのスピーカーユニットは手に入らないし、
もしコンディションのいいものが手に入ったとしても、
それではオリジナルのLS5/1を超えることは、ほぼ不可能といえる。

ならば、同じコンセプトで、他のユニットを使って、独自のLS5/1を作ってみたい、と思い続けている。

LS5/1をつくるうえで、まずぶつかるのがトゥイーターの選定の難しさである。

Date: 2月 19th, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その9)

瀬川先生の4ウェイ構想は、
各帯域を受け持つスピーカーユニットをできるだけピストニックモーションの範囲内で使いたいがため、
たいてい、こう受けとめられている。

それは誤解とまではいえないけれど、
瀬川先生の4ウェイ構想は、ピストニックモーションと同じくらい、指向特性を重要視しての結果であることが、
意外に見落されている。

私は、むしろ指向特性の方をより重視されていると受けとっている。

私が読んだ瀬川先生の4ウェイ構想は、
ステレオサウンド別冊のHIGH-TECHNIC SERIES-1に掲載されてたもので、
そこでは指向特性については、それほど触れられていない。
私も、最初読んだときは、ピストニックモーションの追求しての構想だと受けとっていたし、
その後、数年間はそう思い続けてきた。

けれど、瀬川先生の書かれたものを広く読んでいくと、
そのなかでも瀬川先生のリスニングルームの環境について書かれたものを読んでいくうちに、
スピーカーの指向特性をひじょうに重要視されていることがわかってきた。

Date: 2月 7th, 2011
Cate: D44000 Paragon, JBL

パラゴンの形態(その2)

JBLの、以前のトレードマークは、Jに「!」を組み合わせたものだった。
このとき言われていたのは、「!」はドライバーとホーンの組合せを表している、ということ。

下部の点がコンプレッションドライバーで、上の部分がホーンにあたるわけだ。
そんな視点からパラゴンを見ると、375とホーンのH5038Pは、まさしく「!」そのものだ。

しかもパラゴンのウーファーの音道はJの形をしていて、その開口部に375+H5038Pがある。
このふたつが、JBLの以前のトレードマークそのものになっている。

パラゴンのデザインは、子細に見れば見るほど、凄い! と思うしかない。
アーノルド・ウォルフは、きっとトレードマークを意識してパラゴンをデザインしたのだろう。
そうとしか思えない。

スーパーウーファーについて(パラゴンに関しての余談)

仮想音源について考えると、JBLのパラゴンをマルチアンプで、
デジタル信号処理で3つのユニットの時間差を補整して鳴らすのは、果してうまくいくのだろうかと思ってしまう。

パラゴンではウーファーいちばん奥にある。しかも低音のホーンは曲っている。
もうパラゴンを聞いたのはずいぶん昔のことで、しかもまだハタチそこそこの若造だったため、
音源がどのへんにできているかなんて、という聴き方はしていなかった。

低音の仮想音源は、高音用の075の設置場所のすこし手前であたりにできるのだろうか。
低音のホーンはこのへんでカーブを描いている。

そして中音は中央の大きくカーブした反射板をめざすように設置されている。
反射板も、中音に関しては、左右チャンネルの音が交じり合っての仮想音源となっているだろう。

高音と中音の各ユニットは近くに位置している。

パラゴンの図面を眺めるたびに、いったいどこにそれぞれの音域の音像は定位するのだろうか、と考えてしまう。
考えるよりも、実際にパラゴンを聴いた方が確実な答えがでるのはわかっている。
でも、いまその機会はないから、こうやってあれこれ考えている。

私の予想では、やはり075の周辺にうまくできるような気がする。
だとすると、パラゴンを、いまの時代に鳴らすことの面白さが、いっそう輝きを増す。

Date: 1月 23rd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その8)

4ウェイ構成のスピーカーシステムで、もっとも重要、と昔からいわれているのは、ミッドバスである。

あえていうことでもないと思うが、ここで言う「4ウェイ」とは、
瀬川先生の提唱されたもの、
JBLの4343、4350などの同じもの、
岡先生のいわれる2ウェイの両端の帯域を拡張したもの、のこと。

スペンドールのBCIIIのように、3ウェイのBCIIIにさらにウーファーを足したもの、とか、
3ウェイにスーパートゥイーターを足したものではなく、ミッドバス帯域に専用のユニットのもつモノのこと。

この種の4ウェイで、なぜミッドバス(中低域)のユニットが重要となるのか。
もちろん、音楽のメロディ帯域を受け持つ、ということもある。
でも、オーディオ的にいえば、
それ以上に、このミッドバスのユニットのみが、40万の法則に従っている、ということだ。

このことはふしぎと誰も指摘していないことだが、他のどんな構成のスピーカーでは、
ウーファーやトゥイーターはもちろん、スコーカーでも、40万の法則を満たすことは、まずできない。
4ウェイのスピーカーシステムにおいて、ミッドバスだけが、そうである。

40万をミッドバスの下のカットオフ周波数300Hzで割れば、上限は約1.3kHzになる。
ほぼ4343のミッドバス(2121)の受持帯域に重なる。

このことに気がつけば、瀬川先生がフルレンジからスタートされ、ユニットを段階的に足していくことで、
帯域の拡大を実現されてきたことを、少し違う視点から眺められるようになる。

Date: 1月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その7)

スピーカーシステムとして完成させるときに、4ウェイという形態はそうとうに難しいことなのだろうか。

井上先生はマルチウェイのスピーカーは、方程式を解くのに似ている。
2ウェイなら二次方程式、3ウェイなら三次方程式、4ウェイなら四次方程式で、
次数が増えてゆくにつれて、解くのは難しくなるのと同じだ、とよく言われていた。

一方で、岡先生はすこし違う意見だった。
4ウェイよりも、むしろ3ウェイのほうがクロスオーバー周波数を、
どこにとるかによって、かえって難しくなることもある。
4ウェイ、それも2ウェイをベースにして、
それの低域と高域を拡張するためにユニットを2つ足すかたちの4ウェイであれば、
むしろ3ウェイよりもシステムとしてまとめやすい、といったことを言われていた。

井上先生と岡先生の意見のどちらが正しいか、ということではなくて、
4ウェイにすることによって生じる難しさもあり、
4ウェイにすることによってかえって簡単に解決できることもある、ということだろう。

私の中には、4ウェイ絶対論、とまで書くと大げさすぎるけれど、
それでも4ウェイ構成に対しては、負の印象はほとんどない。

それはやはりJBLの4343の存在があり、瀬川先生のフルレンジから始まる4ウェイ構想を読んできたからだ。

なにがなんでも4ウェイでなければならない、とは言わない。
それでも、十分につくりこまれたモノであれば、4ウェイの優位性を認めたい、という気持は残っている。

でも、いまや4343のJBLからも、4ウェイが消えていく時代だ。

Date: 1月 22nd, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その6)

JBLのカタログには、4348はまだ残っている。

センタースピーカー用のLC2CHと4348だけが、JBLのラインナップで4ウェイ構成だ。
つまり実質的に4348、1機種のみ、といってもいいだろう。
その4348も、いまオーディオ雑誌で取り上げられることも極端に少なくなっている。

4365、その前に登場したS9900、それにDD66000の取り扱われ方と比較すると、
残っている、という表現が、かなしいかな、ぴったりという感じだ。
(いましがたハーマン・インターナショナルのサイトを見たら、生産完了品につき流通在庫のみ、とあった)

バイアンプ仕様の4350を別格とすれば、4341から始まったJBLのスタジオモニターにおける4ウェイ・システムは、
4343でピークを迎え、そのあとはゆっくりと消えていくような印象すら受ける。

4348のスタイルを見ると、あきらかに4343を意識している、と思う。
スラントプレートの音響レンズを、JBLはもう採用することはないはず。
ゆうえに4343の、インパクトあるデザインは、もうJBLのスピーカーには望めないだろう。

それでも4348は、バスレフダクトの数と位置、そしてインラインのユニット配置、
それにミッドバスフレームの形、こういうところに4343を、わずかとはいえ感じさせる。

だからかえって、4343と、頭の中でつい比較してしまう。

そういうデザインのことは措いて、音に関していえば、
以前も書いたように4343の後継機は4348だろう。
4344よりも、ずっと4343をうまくリファインしたところがあって、
鳴らそうと思えば、1970年代後半の、あの時代の音の片鱗を確実に聴かせてくれる。

4348が、さらに4365の技術をベースにして、
4368といった型番のスピーカーシステムとして再登場したら……、そういったことも考えたくなる。

けれど、現実には、もうJBLから4ウェイのスタジオモニターは、出ない気がしてならない。

Date: 1月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その5)

昨秋登場したJBLの3ウェイ・スタジオモニターの4365の評価は高い。

見た目のプロポーションは決していいとは思っていないが、音は、うまくまとめられている。

オーディオ機器のプロボーションは、とても大事であって、ときに仕上げよりも気になることがある。
たとえば、最近の製品でいえば、ラックスのSQ38uと同じくラックスの新しいアナログプレーヤーのPD171。

この2機種に関しては、デザインが、というよりも、プロポーションがおかしい、と思う。
どちらもずんぐりして、鈍重な感じが漂っている。
プリメインアンプとアナログプレーヤーという、どちらも必ず頻繁に手をふれるもの。
目につくところに、どちらも置くモノにも関わらず、
なぜあえて、こういうプロポーションにしたのだろう……。

しかもどちらも型番からわかるように、以前のラックスを代表してきたモノである。
とくにPD121は、木村準二氏による素晴らしいデザイン(瀬川先生のデザインと勘違いされている方が多いけれど)。

テクニクスのSP10と同じモーターを使いながら、SP10のすこし野暮ったいデザインと正反対の、
あれだけ洗練されたデザインに仕上げたのと較べると、
同じメーカーのアナログプレーヤーとは思えないほど、
あえていえば、あの艶めいた漆黒のレコード盤を演奏するものとは思えない野暮さである。
PD121の洒落気は、みじんもない。

SQ38uについても同じだ。
なぜ同じ型番で、ああいうふうにしてしまったのだろうか。
まだ別の型番、それもSQ38をまったく連想させないような型番だったら、まだしもなのに。

その、大切なプロポーションで不満を感じる4365だが、音を聴くと、
もうJBLは4ウェイをつくることはないんだろうな、と感じてしまう。

Date: 1月 21st, 2011
Cate: 4343, JBL

4343とB310(もうひとつの4ウェイ構想・その4)

瀬川先生の「本」づくりで、けっこうな量の文章を入力したが、
意外にもJBLのユニットの音質そのものについて書かれているものは、少ない。

スイングジャーナル、1971年8月号とステレオサウンド 35号、ベストバイの特集の中に見つかるくらいだ。

ステレオサウンドのベストバイは、いまと違い、スピーカーユニットも選ばれている。
フルレンジ、トゥイーター、スコーカー、ウーファー、ドライバー、ホーンと分けられ、
それぞれの中から選ぶという形だが、
フルレンジ、トゥイーター、スコーカー、ウーファーではJBL以外のユニットも瀬川先生は選ばれているが、
ことドライバーに関してはJBLだけ、である。
ウーファーではアルテックの515Bについて書かれているのに、アルテックのドライバーは選ばれていない。
エレクトロボイスもヴァイタヴォックスのドライバーについても、同じだ。

だから当然ホーンも、JBLだけの選択となっている。
しかもJBLのドライバーも、プロ用の2400シリーズのみの選択だ。
(ウーファー、トゥイーターに関しては、JBLのコンシュマー用も選ばれている)
242024402410の3機種だけ。

おもしろいことに、この3機種は、岩崎先生も選ばれている。

この3機種については、それぞれ瀬川先生の書かれたものを読んでいただきたいが、
2440のところには、やはり「2420より中〜低域が充実する」と書かれている。
反面、2420よりも「中〜高域」で少しやかましい傾向」とある。

Date: 1月 7th, 2011
Cate: Bösendorfer/Brodmann Acoustics, VC7

Bösendorfer VC7というスピーカー(その16)

国産アンプで、磁性体を徹底的に取り除こうとしたのはソニー/エスプリのTA-E901、TA-E900があげられる。

1982年、このころの国産メーカーのオーディオ雑誌の広告は、いまとは違って、文字がびっしりあった。
それをしっかり読むことでも、オーディオの勉強になることも、けっこうあった。

ソニーのこのころの広告もそうだ。
中島平太郎氏が署名入りの文章が載ったこともあるし、
設計者自ら、広告の文章を書いているものもいくつもある。

たとえばステレオサウンド 63号に上記、ふたつのコントロールアンプの広告が載っている。
設計者の樋口正氏が書かれている。
設計者が語るESPRITの「エスプリ」、という題名がついている。

そこに、TA-E901、TA-E900からいかにして磁性体を排除していったかについての内容で、
その手法は、正直、いまでも役に立つものだと思う。

磁性体かどうかを判断するのに磁石を使う。くっつけば磁性体。くっつかなければ非磁性体。
でもなかには、これでは検知できないミクロンオーダーの鉄分があって、
そんなわずかな量の鉄分であっても、確実に音に影響を与える、とソニーの広告にはある。

そんなごくごくごわずかな量の鉄分を検知するために、0.1gのサマリウムコバルトマグネットを、
女性の髪の毛に結びつけ、磁気検出計として使った、とある。

少しでも敏感に反応するために、できるだけ細く、しなやかで長い髪の持ち主探しからはじまった、
その検出計は、わずかな鉄分が含まれているだけですーっと吸いつく、そうだ。

その検出計がある部品(抵抗)に反応した。
でもこの抵抗を分解してみても、使用材質に磁性体はない。
それでも検出計が反応するわけだから、
さらに調べていくと、塗料に磁性体が含まれていたことを発見できた、とのことだ。

これはいまでも役に立つ手法だろう。

こういう情報が得られたのにくらべると、いまの広告は、いい悪いは措いとくしても、
なにかものたりなさを感じてしまう……のは、こちらが歳をとったということだけではないはずだ。

Date: 1月 1st, 2011
Cate: BBCモニター, PM510, Rogers, 瀬川冬樹

BBCモニター考(特別編)

昨年秋、また瀬川先生が書かれたメモとスケッチをいただいた。
その中に、BBCモニター、というよりもロジャースのPM510についてのメモがある。

1年前の今日も、瀬川先生のメモを公開した。
今年は、去年に比べるとずっと量は少ないが、このPM510についての「メモ」を公開する。
     *
◎どうしてもっと話題にならないのだろう、と、ふしぎに思う製品がある。最近の例でいえばPM510。
◎くいものや、その他にたとえたほうが色がつく
◎だが、これほど良いスピーカーは、JBLの♯4343みたいに、向う三軒両隣まで普及しない方が、PM510をほんとうに愛する人間には嬉しくもある。だから、このスピーカーの良さを、あんまりしられたくないという気持もある。

◎JBLの♯4345を借りて聴きはじめている。♯4343よりすごーく改良されている(その理由を長々と書く)けれど、そうしてまた2歩も3歩も完成に近づいたJBLを聴きふけってゆくにつれて、改めて、JBLでは(そしてアメリカのスピーカーでは)絶対に鳴らせない音味というものがあることを思い知らされる。
◎そこに思い至って、若さの中で改めて、Rogers PM510を、心から「欲しい」と思いはじめた。
◎いうまでもなく510の原形はLS5/8、その原形のLS5/1Aは持っている。宝ものとして大切に聴いている。それにもかかわらずPM510を「欲しい!!」と思わせるものは、一体、何か?

◎前歴が刻まれる!
     *
内容からして、なにかの原稿のためのメモであろう。
そして最後の1行の「前歴が刻まれる!」だけ、インクの色が違う。しばらくたってから書き足されている。

注意:若さの中で改めて、とあるが、「若」の字がくずしてあり、他の漢字の可能性も高いが、
ほかに読みようがなく、「若さ」とした。