Archive for category ブランド/オーディオ機器

Date: 12月 2nd, 2008
Cate: 4343, 4350, JBL

4343と4350(その1)

4343(4341も含む)と4350の、いちばん大きな違いは、中低域の再現力の差だと感じている。
システム全体の構成も、もちろん大きく違う。
4350Aは4343、4341と同じウーファー(2231A)の二発使用で、バイアンプ駆動が前提。
ミッドバス帯域のユニットも、25cm口径の212から30cm口径の2202に、
ドライバーも2420から2440に、全体的にスケールが一回り大きくなっている。

4343が、ある節度を保った、破綻の少ないまとまりのよさを見せるのに対して、
4350Aは凄みのある雰囲気を持つ。

バスレフポートの数も4343は2つ、4350Aは6つ、
エンクロージュアの奥行きも4350Aは50.3cmと、4333、4341とほぼ同じ値だ。

違いはいくつもあるが、それでもいちばんの違いは、中低域だ。

4341のときからそうだが、ミッドバスを加えた4ウェイ構成にも関わらず、
中低域の豊かさが不足している。
周波数特性的に問題なくても、聴感上、エネルギー感が不足気味で、
ミッドハイの2420とウーファーの2231Aの間にはさまれて喘いでいる、そんな印象さえ受ける。

もっとも4341では、逆にこのことが魅力にもつながっており、
スリムでセンシティヴとも言える音は、好きなひとにはたまらないはずだ。

4343になり、ユニットは同じながらも、中低域の鳴りの悪さは改善されており、
4341と比べると、音全体のスケール感は大きく、安定している感がある。
それでも中低域の豊かさを感じさせてくれるかというと、
中低域専用ユニットを持っているのに……、と言いたくなる。

4350Aは、さすがにそんな印象はまったくない。
4ウェイ構成の良さが──うまく鳴ったときの音に限るが──見事に活きている。
これが、JBLが、はじめて開発した4ウェイ・スピーカーだから、おそれいる。

正確には言えば、最初のモデルは4350で、2230ウーファーを搭載している。
4350は聴いたことがないので、4350Aで話を進めていく。

Date: 11月 23rd, 2008
Cate: ESL, QUAD, 長島達夫

QUAD・ESLについて(その5)

ステレオサウンドの弟分にあたるサウンドボーイ誌の編集長だったO氏は、
QUADのESL63が登場するずいぶん前に、スタックスに、
細長いコンデンサースピーカーのパネルを複数枚、特注したことがあって、
それらを放射状に配置し、外周部を前に、中心部を後ろに、
つまり疑似的なコーン型スピーカーのようにして、
長島先生同様、なんとか球面波に近い音を出せないかと考えての試作品だった、と言っていた。

結果は、まったくダメだったそうだ。
だからO氏も、ESL63の巧みな方法には感心していた。

Date: 11月 23rd, 2008
Cate: ESL, QUAD, 長島達夫

QUAD・ESLについて(その4)

QUAD・ESLの2段スタックは、1970年代前半、
香港のオーディオショップが特別につくり売っていたことから始まったと言われている。

ステレオサウンドでは、38号で岡俊雄先生が「ベストサウンド求めて」のなかで実験されている。
さらに77年暮に出た別冊「コンポーネントステレオの世界’78」で山中先生が、
2段スタックを中心にした組合せをつくられている。

38号の記事を読むと、マーク・レヴィンソンは75年には、自宅で2段スタックに、
ハートレーの61cm口径ウーファー224MSを100Hz以下で使い、
高域はデッカのリボン・トゥイーターに受け持たせたHQDシステムを使っていたとある。

山中先生が語っておられるが、ESLを2段スタックにすると、
2倍になるというよりも2乗になる、と。

ESLのスタックの極付けは、スイングジャーナルで長島達夫先生がやられた3段スタックである。

中段のESLは垂直に配置し、上段、下段のESLは聴き手を向くように角度がついている。
上段は前傾、下段は後ろに倒れている格好だ。
真横から見ると、コーン型スピーカーの断面のような感じだ。
上段と下段の角度は同じではないので、写真でみても、威容に圧倒される。

この音は、ほんとうに凄かったと聞いている。
山中先生の言葉を借りれば、3段だから3乗になるわけだ。

長島先生に、この時の話を伺ったことがある。
3段スタックにされたのは、ESLを使って、疑似的に球面波を再現したかったからだそうだ。

繊細で品位の高い音だが、どこかスタティックな印象を拭えないESLが、
圧倒的な描写力で、音楽が聴き手に迫ってくる音を聴かせてくれる、らしい。

その音が想像できなくはない。
ESLを、SUMOのThe Goldで鳴らしていたことがあるからだ。

SUMOの取り扱い説明書には、QUADのESLを接続しないでくれ、と注意書きがある。
ESLを鳴らすのならば、The Goldの半分の出力のThe Nineにしてくれ、とも書いてある。

そんなことは無視して、鳴らしていた。
ESLのウーファーのf0は50Hzよりも少し上だと言われている。
なのに、セレッションのSL6をクレルのKMA200で鳴らした音の同じように、
驚くほど低いところまで伸びていることが感じとれる。
少なくともスタティックな印象はなくなっていた。

Date: 11月 22nd, 2008
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その3)

ウェスターン・エレクトリックの555ドライバーの設計者のE.C.ウェンテは、1914年に入社し、
3年後の1917年にコンデンサー型マイクロフォンの論文を発表している。
555の発表は1926年だから、コンデンサー型マイク、スピーカーの歴史はかなり長いものである。

コンデンサー型スピーカーの原理は、1870年よりも前と聞いている。
イギリスのクロムウェル・フリートウッド・ヴァーリィという人が、
コンデンサーから音を出すことができるということで特許を取っているらしい。
このヴァーリィのアイデアを、エジソンは電話の受話器に使えないかと、先頭に立って改良を試みたが、
当時はアンプが存在しなかったため、実用化にはいたらなかったとのこと。

ウェンテのマイクロフォンは、0.025mmのジュラルミン薄膜を使い、
その背面0.0022mmのところに固定電極を置いている。
11年後、改良型の394が出て、これが現在のコンデンサー型マイクロフォンの基礎・基本となっている。

このことを知った時にふと思ったのは、可動電極がジュラルミン、つまり金属ということは、
コンデンサー型スピーカーの振動板(可動電極)にも金属が使えるのではないか、と。

いまのコンデンサー型スピーカーは、フィルムに導電性の物質を塗布しているか、
マーティン・ローガンのCLSのように、導電性のフィルムを使っている。
金属では、振幅が確保できないためだろう。
しなやかな金属の薄膜が実現できれば、コンデンサー型スピーカーに使えるし、
かなりおもしろいモノに仕上がるはず、と思っていた。

だから数年前にジャーマン・フィジックスのDDDユニットを見た時は、やっと現われた、と思っていた。
DDDユニットに採用されているのはチタンの薄膜。触ってみるとプヨプヨした感触。
これならば、そのままコンデンサー型スピーカーに流用できるはず、という予感がある。

いま手元に要修理のQUADのESL63Proが1ペア、押入れで眠っている。
初期型のものだ。

純正のパネルで修理するのが賢明だろうが、いずれ、かならず、また修理を必要とする日が来る。
ならばいっそチタンの薄膜に置き換えてみるのも、誰もやってないだろうし、楽しいはず。
ただ、あれだけの面積のチタン薄膜がなかなか見つからない。

Date: 11月 22nd, 2008
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その2)

QUADの旧型のESLを、ESL63とはっきりと区別するために、ESL57と表記するのを見かける。

ESL63の末尾の「63」は、発売年ではなく、開発・研究が始まった1963年を表している。
なのに、ESL57の「57」は発売年を表しているとのこと。
ESLが発表されたのは1955年である。

なぜ、こう中途半端な数字をつけるのだろうか。

ところで、ESLだが、おそらくこれが仮想同軸配置の最初のスピーカーだと思う。
中央にトゥイーター・パネル、その左右にスコーカー・パネル、両端にウーファー・パネル。
ESLを90度向きを変えると、仮想同軸の配置そのものである。

ESLを使っていたとき、90度向きを変えて、鳴らしたことがある。
スタンドをあれこれ工夫してみたが、安定して立てることができず、
そういう状態での音出しだったので満足できる音ではなかったが、
きちんとフレームを作り直せば、おもしろい結果が得られたかもしれない。

Date: 11月 21st, 2008
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その1)

QUADのESL(旧型)を使っていたときに、山中先生にそのことを話したら、
「ESLをぐんと上まで持ちあげてみるとおもしろいぞ。
録音スタジオのモニタースピーカーと同じようなセッティングにする。
前傾させて耳の斜め上から音が来るようにすると、がらっと印象が変るぞ!」
とアドバイスをいただいたことがある。

やってみたいと思ったが、このセッティングをやるための、
壁(もしくは天井)からワイヤーで吊り、脚部を壁からワイヤーで引っ張る方法は、
賃貸の住宅では壁に釘かネジを打ち込むことになるので、試したことはない。

山中先生は、いちどその音を聴かれているとのこと。
そのときの山中先生の口ぶりからすると、ほんとうにいい音が聴けそうな感じだった。

Date: 11月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と4341(その4)

4341と4345には台輪(ハカマ)がついている。台輪の下に何かを置いて床から持ちあげても、
底板の鳴りは基本的に変化しない。
台輪の内側にブロックをかませたら、もちろん変化するが、台輪を利用するかぎり、
底板の鳴り(天板の鳴り)はメーカーが意図したままである。

4343に限らないが、台輪がないスピーカーを床にベタ置きしたとしよう。
底板は床によって補強されたのと同じになり、底板の鳴りは大きく減る。
するとどうなる。天板の鳴りが、逆に増えてしまう。
これはダイヤトーンが測定で明らかにしている。

天板の上に石や木を乗せて振動を抑えると、
次はエンクロージュアの強度的に弱い箇所の振動が増える。

どこかでエンクロージュアにたまっているエネルギーを消費しないと、
イタチごっこになってしまうわけだ。

4343の底板の四隅に木のブロックを、できるだけ外側にもってきて、
つまり底板が何にも接触していない面積をできるだけ広くした状態の音を聴いて、
ブロックを少しずつ内側に入れていく。
つまり底板の、フリーな面積が減ることになる。低音の表情が変化していく。

トーンコントロールやイコライザーなどの電気的なコントロールとは、
また違う、低域のコントロール方法である。

4343が縦置きだけのスピーカーで、もし台輪がついていたら、
4343の評価はすこし変わっていただろう。

Date: 11月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と4341(その3)

4333Aの横幅と奥行きは619×514mm、4341は600×500mmと割合近い寸法だ。

エンクロージュアのプロポーションがどう音に影響するかを正確に把握するには、
いくつものエンクロージュアを試作して試聴することを行なうことだが、
メーカーの技術者でないかぎり無理である。

だから、私の印象は、あくまでも実際の製品を聴いてきた蓄積からのものである。

バスレフ型の場合、密閉型よりもエンクロージュアの奥行きの影響が大きいように感じている。
なんとなく、こういう理由かなぁ、と思っていることはあるが、まだはっきりとしたことは言えない。

それでも、バスレフ型はある程度の奥行きがあったほうが、好ましい低音が得やすい。そう感じている。

4343だが、低音が出ないわけではない。2π空間でなくても、低音を出すことはできる。
ただ、そうすんなり行かないことがケースが多い。

4343を設置する際、大抵の人が床と4343の底板の間に何かをかませるだろう。
木のブロックだったり、コンクリートのブロックだりをかませて、すこし床から持ちあげる。

ここで注意したのは、ブロックの材質の音が影響することもだが、
それ以上に、どういうふうにかませるか、である。

底板の鳴りは天板の鳴りと関係していて、天板の鳴りは音場感に影響する。
しかも天板が、聴取位置から見えなくても、だ。

Date: 11月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と4341(その2)

4343は2π空間前提のスピーカーだから、ときとして低域が不足しがちなのか。

ブックシェルフ型スピーカーという言葉が生れたとき、
この手のサイズのスピーカーは、文字通り本棚の中に設置し、
スピーカーの周囲を本で埋めることでバッフルを拡大するのと同じ効果をねらい、
低域の量感をカバーしていた。

あらためて説明するまでもなく、壁に埋め込めば、低域の鳴り方は大きく変化する。
これも言うまでもないことだが、壁に埋め込まないまでも、左右、後ろの壁だけでなく、
さらに床に近づけることで、低域の周波数レスポンスは改善される。

理論的には部屋のコーナー、つまり左右の壁、床の3つの面が交差するところにスピーカーを置けば、
無響室での特性よりも18dB程度上昇することになる。
もっともこれは理想の壁、床の場合で、実際には6から12dBくらいだと言われている。

だから4343を壁に埋め込まずに使うと低域が不足すると、決めつけるのは間違っている。

4333Aはどうだろうか。

4333Aの外形寸法はW619×H778×D514mmで、4343よりもやや小さい。
人によっては、特にジャズが好きなひとは、4343の低域よりも4333Aのほうがずっといい、と言う。
バスレフポートのチューニングも違うだろうが、やはりエンクロージュアの奥行きが、
深く関わっているように思えて仕方がない。

Date: 11月 19th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343と4341(その1)

4343は2π空間を前提に設計されていると書いた。その前身の4341はどうだろうか。

資料はないから断言できないが、4341の外観から判断すれば、
4π空間(フリースタンディング)での使用前提と言えないが、
少なくとも2π空間は考えられていないはずだ。

理由はエンクロージュア底部に台輪(ハカマ)がつけられているからだ。
壁に埋め込むことを想定していたら、こんなものはつけないはずだ。4345もハカマ付きだ。

4343と4344のエンクロージュアの外形寸法は全く同じだが、4343と4341は異る。
4341のほうが背が低く、奥行きがある。横幅もわずかだが狭い。
4341:W600×H950×D500mm
4343:W635×H1050×D435mm

4343は奥行きが足りないような気がする。そこが低音の鳴らし難さと関係しているのではないか。

4341、4343、4333A、4350A、すべてウーファーは2231Aである。
このなかで、低音不足になることが多いと言われるのは4343。
4333の奥行きは514mm、4350は508mm。

4343だけ、他のエンクロージュアと比べて約7cm薄い。

低域の鳴り方は、同じウーファー、同じ内容積のエンクロージュアでも、
とうぜんだがプロポーションによって違ってくる。

Date: 11月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343とコンシューマーモデル(その3)

4343時代のころ、オンキヨーから、スピーカーの位相チェッカーが出ていた。
細長い形状で、パルスをスピーカーに入力して、先端のマイクロフォンで音をとらえ、
インジケーターの緑がついたら正相、赤がついたら逆相というものだった。
いまでも同じ機能のものは、他社から発売されているらしい。

これで4344を極性をチェックしたことがある。
結果は、ウーファーは逆相。ミッドバス、ミッドハイ、トゥイーターは緑が点灯し正相だった。
ネットワークだけの回路図ではなく、4344の回路図をみればわかるが、
ウーファーのプラス端子はネットワークのプラスにつながっている。
つまりユニットが逆相だから、ネットワークを通しても逆相である。
ところが、上3つのユニットは、ネットワークのプラスとユニットのマイナスがつながっている。
反転しているわけだ。だから、当然、トータルでは正相になる。

4343は逆相だったと記憶している。

2π空間での使用が前提の4343は逆相、
4π空間(いわゆるフリースタンディング)使用の4344は、ウーファーは逆相だが、
トータルでみれば正相といってもいいだろう。

このことから推測すると、おそらくL250もシステムとしては正相だと考えてもいいだろう。

この極性の変化は、デジタル時代を迎えるにあたってのJBLの変化なのだろう。
逸早くデジタル時代を見据えていたのだろう。
だからこそL250とともにデジタル・マスターレコーダーを運んできた、と私は考えるのだが……。

Date: 11月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343とコンシューマーモデル(その2)

JBLのスピーカーユニットは、以前は、いわゆる逆相だった。
スピーカー端子のプラス(赤色)に、電池の+(プラス)をつなぐと、
通常は振動板が前に動くのだが、JBLは反対に後ろに動く。
これがJBLの音の秘密のひとつとも言えるが、音場感を重視した再生を目指すなら、
正相状態で使ったほうが有利である。

フルレンジスピーカーをお持ちなら、一度スピーカーのプラス・マイナスを逆にして聴いてみるといい。
逆相にして鳴らすと、音像型と表現したくなるような感じになることが多い。

ネットワークを使用したマルチウェイの場合、スピーカー端子のところで、
プラス・マイナスを反転させるのは、あまりおすすめしない。
なぜならネットワークはアンバランス構成であり、パワーアンプも大半のものがアンバランス出力だからで、
基本的にパワーアンプのアースとネットワークのアースを接続すべきであるからだ。
マルチウェイのスピーカーで反転した音を聴きたいのであれば、
スピーカーユニットの端子のところで反転したほうがいい。

ただし、これでも厳密に言えば、コイルの巻き方の向きの問題があるので、
他の要素を全く変えずに極性のみ反転させるのは、
バランス接続のアンプを使い、そのバランスケーブルのところで反転させるのが望ましい。

ここまでこだわらなくても、試しにスピーカー端子のところで反転した音を聴いて、
その状態の音が気にいったのであれば、スピーカーユニットの端子で反転させてみるのもいいだろう。

ネットワークがバランス構成のものも、数はひじょうに少ないがいくつかある。
それならば、スピーカー端子のところで反転してもかまわない。

Date: 11月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL
2 msgs

4343とコンシューマーモデル(その1)

4333のコンシューマーモデルがL300、4331のそれはL200(B)、
4343はL400が出ると言われていたけど、結局は登場しなかった。

これらスタジオモニター・シリーズとコンシューマーモデルの、いちばんの違いは再生空間である。

4343も、4333、4331は2π(パイ)空間での使用を前提に設計されている。
おもに低域の再生においてである。

最近ではあまり言われなくなったが、2π空間とは、スピーカーまわりの自由な空間の広さで、
2πが表すように、スピーカー前面の空間──水平方向180度、垂直方向180度、2つの180度空間である。
つまり4343、4333、4331は壁に埋め込んで使うことを前提している。壁バッフルを利用するわけだ。

L300、L200(B)、それにL250もそんな使い方は想定されていない。
4π空間──スピーカー前面だけでな後面も、水平、垂直の180度空間──での使用が前提である。
とくにL250はそうである。

そして4343のお姉さんにあたる4344も、じつは4π空間前提で設計されているスピーカーである。

Date: 11月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343とL250(その4)

なぜJBLはL250のためにデジタル・マスターレコーダーまで運んできたのか。
JBLのスタッフは、L250をデジタルのプログラムソースで聴いてほしかったためだろうが、
自社製品でもないレコーダー、それもかなりの重量物を日本まで持って来たのか。

なんの根拠もない推察だが、
おそらくL250の開発において、デジタルのソースで試聴していたのではないだろうか。

デジタルのソースで聴いた時、それまでのスピーカーとは違うよさをL250は発揮してくれる、
そう考えても良いような気がする。

B460もいっしょだったことも考え合わせたい。
L250のウーファーは14インチだが、JBLの発表によると、30Hzまでフラットに再生するという。
B460は、25Hz前後の帯域をフラットにする補正が加えられており、
実際のリスニングルームでの設置では20Hzまで拡張されるという。

−6dB/oct.のネットワークの採用、ピラミッド型のエンクロージュアなど、
あきらかに音場型スピーカーといえる特徴をもつL250、
そして音場感の再生で重要となる最低域の再生、それを受け持つB460、
この2つの組合せのよさをデモするのにふさわしいソースは、
低域再生に安定したよさを聴かせるデジタルのソースであろう。

Date: 11月 18th, 2008
Cate: 4343, JBL

4343とL250(その3)

スピーカーの周波数特性で、振幅周波数特性を重視するか位相回転の少なさをとるかで、
ネットワークの次数は自然と決ってくる。

もっともシンプルで、カーブはゆるやかたが、位相回転の少ないのは−6dB/oct.型である。

古くは、井上先生が愛用されたボザークのスピーカーがそうである。
カーブがゆるやかなため、ひとつひとつのユニットの再生周波数帯域はある程度広く、
しかも周波数特性の両端に共振峰が少ないことが求められる。
そのためホーン型ユニットで採用されることはほとんどない。

L250のユニットは、すべてダイレクトラジエーター型。しかも専用ユニットが開発されている。

エンクロージュアもピラミッド型で、上部に行くに従い細くなっている。
平行面を減らし定在波を抑えるとともに、
JBLのスピーカーにはめずらしい、ユニットまわりのバッフルの面積を小さくするなど、
いわゆる音場型スピーカー的アプローチをとっている。

L250のプロトタイプは、グレッグ・ティンバースが、自身のために作ったものとのこと。

もしかすると、L250は、それまでのJBLのスピーカーとは異り、
逆相ではなく正相ではなかったかと、いま思っている。