Archive for category QUAD

Date: 11月 12th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その24)

カットオフ周波数以下(もしくは以上)の帯域こそ、すみやかに、そしてきれいに減衰させたいわけだから、
むしろこの帯域こそダンピング能力が、求められるのではないだろうか。

なぜ、マルチウェイのスピーカーシステムで、その周波数より上(もしくは下)をカットするのか、を考えれば、
ごく低い周波数近辺だけでの高い値のダンピングファクターは、ほぼ無意味であるといっても言い過ぎではないし、
この点からのみネットワークを判断すれば、12dB/oct.、24dB/oct.といった偶数次のものが有利である。

ただ偶数次の場合、たとえば2ウェイならばトゥイーターの極性を、
3ウェイならばスコーカーの極性を反転させなければ、フラットな振幅特性は得られない。
しかも、この部分で安易にスピーカーユニットの極性を、他のユニットと反対にしてしまえば、
音場感の再現力に関しては、大きなマイナスになってしまう面ももつ。

それに位相特性を重視すれば、6dB/oct.しかないともいえる。

Date: 11月 12th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その23)

にもかかわらず、ダンピングファクターの、単に表面的な数値のみにとらわれて、
このパワーアンプはダンピング能力が高い、と誇張表現しているサイトが、どことは名指しはしないが、ある。

いまどき、こんな陳腐な宣伝文句にだまされる人はいないと思っていたら、
意外にそうでもないようなので、書いておく。

ダンピングファクターは、ある周波数における値のみではなく、
注目してほしいのは、ダンピングファクターの周波数特性である。
つまり、そのパワーアンプの出力インピーダンスの周波数特性である。
何Hzまでフラットなのか、その値がどの程度なのかに注意を向けるのであれば、まだしも、
単に数値だけにとらわれていては、そこには何の意味もない。

ダンピングファクターから読み取れるのは、そのパワーアンプの、NFBをかける前の、
いわゆる裸の周波数特性である。

それにどんなに可聴帯域において、高い値のダンピングファクターを維持しているパワーアンプだとしても、
奇数次のネットワークが採用されたスピーカーシステムであれば、
カットオフ周波数以下(もしくは以上)の帯域では、ダンピングファクターが低下する。

Date: 11月 12th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その22)

ダンピングファクターによってのみ、スピーカーのダンピングが決まるわけでもないし、
必ずしもダンピングファクターの値が高い(つまり出力インピーダンスが低い)パワーアンプが、
低い値のパワーアンプよりもダンピングにおいて優れているかというと、そんなことはない。

現代アンプに不可欠なNFBを大量にかけると、出力インピーダンスは、けっこう下がるものである。
NFBを大量にかけるために、NFBをかける前のゲイン(オープンループゲイン)を高くとっているアンプは、
ひじょうに低い周波数から高域特性が低下していく。

良心的なメーカであれば、ダンピングファクターの値のあとに、(20Hz)とか(1kHz)と表示している。
つまり、そのダンピングファクターの値は、括弧内の周波数におけるものであることを表わしている。

ダンピングファクターの値が、200とか、それ以上の極端な高いパワーアンプだと、
たいていは数10Hzあたりの値であり、それより上の周波数では低下していくだけである。

つまりごく狭い周波数においてのみの、高いダンピングファクターのものがあるということだ。

Date: 11月 12th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その21)

スコーカー、トゥイーターのローカットについても、同じことがいえる。
6dB/oct.だと、コンデンサーがひとつ直列にはいる。
コンデンサーは、高域になるにしたがってインピーダンスが下がるということは、
いうまでもないことだが、低い周波数になればなるほどインピーダンスは高くなる。

12dB/oct.だと、コイルが並列にはいる。コイルは低域になるにしたがってインピーダンスは低くなる。
パワーアンプの出力インピーダンス+コンデンサーとコイルのインピーダンスの並列値が、
スコーカー、トゥイーターにとっても、駆動源のインピーダンスとなる。

カットオフ周波数よりも、ローカットフィルターならば低い周波数、ハイカットフィルターならば高い周波数は、
できるだけきれいに減衰させたいわけだが、その部分で駆動源のインピーダンスが上昇するとなると、
ダンピングファクターは低下する。

ダンピングファクターは、スピーカーのインピーダンスを、
駆動源(パワーアンプ)の出力インピーダンスで割った値である。

Date: 11月 11th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その20)

ウーファーのハイカットフィルターは、6dB/oct.だとコイルが直列にひとつはいる。
この場合、ウーファーユニットにとってのパワーアンプ(駆動源)の出力インピーダンスは、
パワーアンプの出力インピーダンス+コイルのインピーダンスとなる。

コイルは、高域になるにしたがってインピーダンスが上昇する。
この性質を利用してネットワークが構成されているわけだが、
つまりカットオフ周波数あたりから上の出力インピーダンスは、意外にも高い値となっていく。

これが12dB/oct.だとコイルのあとにコンデンサーが並列に入るわけだから、
パワーアンプの出力インピーダンス+コイルのインピーダンスとコンデンサーの並列値となる。
コンデンサーは、コイルと正反対に、周波数が高くなるとインピーダンスは低くなる。

つまり6dB/oct.と12dB/oct.のネットワークの出力インピーダンスを比較してみると、
そうとうに違うカーブを描く。
18dB/oct.だと、さらにコイルが直列にはいるし、24dB/oct.だとコンデンサーがさらに並列にはいる。

6dB/oct.、18dB/oct.の奇数次と、12dB/oct.、24dB/oct.の偶数次のネットワークでは、
出力インピーダンスが異り、これはスピーカーユニットに対するダンピングにも影響する。

Date: 11月 10th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その19)

目の前にオーディオのシステムがある。
パワーアンプは? ときかれれば、「これ」と指さすわけだが、
スピーカーシステムから見たパワーアンプは、そのスピーカーシステムの入力端子に接がっているモノである。

つまりパワーアンプとともに、スピーカーケーブルまで含まれることになる。

そしてスピーカーユニットから見たパワーアンプは? ということになると、どうなるか。
スピーカーユニットにとってのパワーアンプとは、信号源、駆動源であるわけだし、
スピーカーユニットの入力端子に接がっているモノということになる。

つまりスピーカーユニットにとっての駆動源(パワーアンプ)は、
パワーアンプだけでなく、ネットワークまで含まれた系ということになる。

ということは、パワーアンプの出力インピーダンスに、
ネットワークの出力インピーダンスが関係してくることになる。
このネットワークの出力インピーダンスということになると、
6dB/oct.カーブのネットワークよりも、12dB/oct.仕様の方が有利となる。

Date: 11月 10th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その18)

この項の(その11)で書いたスピーカーシステムは、
6dB/oct.のネットワークとスピーカーユニットに音響負荷をかけることで、
トータル12dB/oct.の減衰特性を得ているわけだが、
これまでの説明からおわかりのように伝達関数:1ではない。

スピーカーシステムとしての出力の合成は、位相特性は急激に変化するポイントがある。
つまり6dB/oct.ネットワーク採用の技術的なメリットは、ほぼないといえよう。
もちろん12dB/oct.のネットワークを使用するのとくらべると、ネットワークのパーツは減る。
ウーファーのハイカットフィルターであれば、通常の12dB/oct.では、
直列にはいるコイルと並列に入るコンデンサーが必要になるのが、コイルひとつで済むわけだ。

パーツによる音の違い、そして素子が増えることによる、互いの干渉を考えると、
6dB/oct.のネットワークで、
12dB/oct.のカーブが、スピーカーシステム・トータルとして実現できるのは意味がある。

けれど、事はそう単純でもない。

Date: 11月 10th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その17)

チャンネルデバイダーを例にとって話をしたが、スピーカーのネットワークでも同じで、
ネットワークの負荷に、負荷インピーダンスがつねに一定にするために、
スピーカーユニットではなく、8Ωなり4Ωの抵抗をとりつけて、その出力を合成すれば、
6dB/oct.のカーブのネットワークならば、振幅特性、位相特性ともにフラットである。

他のカーブでは、伝達関数:1は実現できない。
ただし6dB/oct.のカーブのネットワークでも、実際にはスピーカーユニットが負荷であり、
周波数によってインピーダンスが変動するために、決して理論通りのきれいにカーブになることはなく、
実際のスピーカーシステムの出力が、伝達関数:1になることは、まずありえない。

ただインピーダンスが完全にフラットで、まったく変化しないスピーカーユニットがあったとしよう。
それでも、現実には、スピーカーシステムの出力で伝達関数:1はありえない。
スピーカーユニットの周波数特性も関係してくるからである。

ひとつひとつのスピーカーユニットの周波数帯域が十分に広く、しかもそのスピーカーユニットを、
ごく狭い帯域でのみ使用するのであれば、かなり伝達関数:1の状態に近づけることはできるが、
実際にはそこまで周波数帯域の広いユニットはなく、
ネットワークの減衰特性とスピーカーユニットの周波数特性と合成された特性が、
6dB/oct.のカーブではなくなってしまう。

Date: 11月 10th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その16)

最近のオーディオ誌では、ほとんど伝達関数という言葉は登場しなくなったが、
私がオーディオに興味をもち始めた1976年ごろは、まだときどき誌面に登場していた。

チャンネルデバイダーがある。
入力はひとつで、2ウェイ仕様なら出力は2つ、3ウェイ仕様なら3つあるわけで、
通常なら、それぞれの出力はパワーアンプへ接続される。

このチャンネルデバイダーからの出力を合成したとしよう。
当然、入力信号と振幅特性、位相特性とも同じになるのが理想だが、
これができるは、遮断特性が6dB/oct.だけである。つまり伝達関数:1である。

12dB/octのカーブでは振幅特性にディップが生じ、位相特性も急激に変化する。
18dB/oct.のカーブでは振幅特性はほぼフラットでも、位相特性はなだらかにシフトする、といったぐあいに、
6dB/oct.カーブ以外、入力と合成された出力が同じになることは、アナログフィルターを使うかぎり、ありえない。

Date: 8月 12th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その15)

「思いこみ」のもつ力を否定しているわけではない。
思いこみ力が、いい方向に作用することだってあるのは、わかっている。

ただ「思いこみ」で、だれかにオーディオの技術や方式について、
そのことを音に結びつけて、オーディオ、オーディオ機器について説明するのは、
絶対にやってはいけないことだ。

これは害以外の何ものでもない。
けれど「思いこみ」の人は、そのことにまったく気づかず、害を垂れ流しつづけるかもしれない。

「思いこみ」の人のはなしをきいている人が、よくわかっている人ならば、こんな心配はいらないが、
そうでない人のことの場合も、案外多いと思う。

「だから素晴らしい」と語る、その人の仕事の詳細を、私は知らないが、
それでも、オーディオに明るくない人のシステム導入のことをやっているのは、本人からきいている。
彼は、ここでも、思いこみだけの技術的説明を行なっているのだろう、おそらく……。

Date: 8月 11th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その14)

己の知識から曖昧さを、できるだけなくしていきたい。
誰もが、そう思っているだろうが、罠も待ち受けている。

曖昧さの排除の、いちぱん楽な方法は、思いこみ、だからだ。
思いこんでしまえれば、もうあとは楽である。
この罠に堕ちてしまえば、楽である……。

Date: 8月 10th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その13)

この「伝達関数:1」ということが、「だから素晴らしい」と力説した人の頭の中にはなかったのだろう。

では、なぜ彼は、6dB/oct.のネットワークがいいと判断したのだろうか。
彼の頭の中にあったのは、
「思いつき」と「思いこみ」によってつくられている技術「的」な知識だけだったように思えてならない。

そこに、考える習慣は、存在していなかったとも思っている。
考え込み、考え抜くクセをつけていれば、あの発言はできない。

いま、彼のような「思いつき」「思いこみ」から発せられた情報擬きが、明らかに増えている。

Date: 7月 28th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その12)

スピーカー用のLCネットワークの減衰特性には、オクターブあたり6dB、12dB、18dBあたりが一般的である。
最近ではもっと高次のものを使われているが、6dBとそれ以外のもの(12dBや18dBなどのこと)とは、
決定的な違いが、ひとつ存在する。

いまではほとんど言われなくなったようだが、6dB/oct.のネットワークのみ、
伝達関数:1を、理論的には実現できるということだ。

Date: 7月 27th, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その11)

少し前に、あるスピーカーについて、ある人と話していたときに、たまたま6dB/oct.のネットワークの話になった。
そのとき、話題にしていたスピーカーも、「6dBのカーブですよ」と、相手が言った。
たしかにそのスピーカーは6dB/oct.のネットワークを採用しているが、
音響負荷をユニットにかけることで、トータルで12dB/oct.の遮断特性を実現している。

そのことを指摘すると、その人は「だから素晴らしいんですよ」と力説する。

おそらく、この人は、6dB/oct.のネットワークの特長は、
回路構成が、これ以上省略できないというシンプルさにあるものだと考えているように感じられた。
だから6dB/oct.の回路のネットワークで、遮断特性はトータルで12dB。
「だから素晴らしい」という表現が口をついて出てきたのだろう。

Date: 7月 21st, 2009
Cate: ESL, QUAD

QUAD・ESLについて(その10)

QUADのESLのほかに、遮断特性(減衰特性)6dB/oct.のカーブのネットワークを採用したスピーカーとして、
井上先生が愛用されたボザークが、まずあげられるし、
菅野先生愛用のマッキントッシュのXRT20も、そうだときいている。

これら以外にもちろんあり、
ダイヤトーンの2S308も、トゥイーターのローカットをコンデンサーのみで行なっていて、
ウーファーにはコイルをつかわず、パワーアンプの信号はそのまま入力される構成で、やはり6dB/oct.である。

このタイプとしては、JBLの4311がすぐに浮ぶし、
1990年ごろ発売されたモダンショートのスピーカーもそうだったと記憶している。

比較的新しい製品では、2000年ごろに発売されていたB&WのNSCM1がある。
NSCM1ときいて、すぐに、どんなスピーカーだったのか、思い浮かべられる方は少ないかもしれない。
Nautilus 805によく似た、このスピーカーのプロポーションは、
Nautilus 805よりも横幅をひろげたため、ややずんぐりした印象をあたえていたこと、
それにホームシアター用に開発されたものということも関係していたのか、
多くの人の目はNautilus 805に向き、
NSCM1に注目する人はほとんどいなかったのだろう、いつのまにか消えてしまったようだが、
井上先生だけは「良く鳴り、良く響きあう音は時間を忘れる思い」(ステレオサウンド137号)と、
Nautilus 805よりも高く評価されていた。