Archive for category アナログディスク再生

Date: 10月 27th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その5)

指揮者の渡辺氏が、ステレオサウンド 48号のブラインドフォールドテストで、
試聴されたプレーヤーシステムは7機種。

①テクニクス/SP10MK2+EPA100+SH10B3(¥280,000)
②EMT/930st(¥1,150,000)
③ヤマハ/PX1(¥480,000)
④デンオン/DP7700(¥198,000)
⑤パイオニア/XL-A800(¥79,800)
⑥ビクター/TT101+UA7045+CL-P1D(¥198,000)
⑦ソニー/PS-X9(¥380,000)

価格は何れも1978年当時のもので、EMTの930st以外はすべてダイレクトドライブ型である。

試聴レコードは、コリン・デイヴィス指揮ボストン交響楽団によるシベリウスの交響曲第1番(フィリップス)と、
ポリーニによるショパンの前奏曲集(グラモフォン)の2枚。

渡辺氏は、どちらのレコードでも、②と⑦、つまりEMTの930stとソニーのPS-X9を、
好ましい音として選ばれた上で、
群を抜いている感じが②、930stにはあると語られている。

Date: 10月 26th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その4)

私もそうだが、ブラインドテスト、と、つい言ったり書いたりしてしまう。
けれど、ステレオサウンド 48号の目次をみると、
「特集=ブラインドテストで探る〝音の良いプレーヤーシステム〟」という題と同時に、
レギュラー筆者による試聴記事には、
「プレーヤーシステムの音の良しあしをブラインドフォールドテストで聴く」という副題がついている。

ブラインドテストとブラインドフォールドテスト──。
この号の試聴に参加されているのは、井上卓也、岡俊雄、黒田恭一、瀬川冬樹の4氏で、
テスト後記で、ブラインドフォールドテストと書かれているのは岡先生だけで、
他の方はブラインドテスト、となっている。

ブラインドフォールド(blindfold)とブラインド(blind)は、
前者は目隠しをする、目をおおう、後者は盲目の、という意味であるから、
テストの内容からいって、ブラインドフォールドテストというべきである。

Date: 10月 24th, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その3)

ステレオサウンド 43号が出たのは1977年6月。
この年の暮に出たステレオサウンド別冊の「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
瀬川先生はJBLの4343の組合せ2例のなかで、ひとつはEMTの930st、
もうひとつの、トータル価格を意識した組合せでは、ガラードの401を使われている。

記事の中で語られているのは、ダイレクトドライブ型では、
音楽の余韻を感じさせるニュアンスが薄らいでいる印象であること、
そして、少しダイレクトドライブ型不信みたいなところに陥っている、ことである。

こうやって、いくつか記事を読むにつれて、
少しずつ、ダイレクトドライブ型には、回転精度とは別の問題があるように思いはじめていた。

1978年9月発売の48号で、ステレオサウンドは、プレーヤーシステムのブラインドテストを行なっている。
オーディオ評論家によるブラインドテストだけでなく、
指揮者の渡辺暁雄氏によるブランドテストの記事も載っていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その2)

ガラード・401について、瀬川先生は、
「このモーターは音がいい。悠然とかまえて、しかも音の輪郭の明瞭で余韻が美しい」と書かれている。

さらにトーレンスのTD125MKIIBについては、こう書かれている。
「素晴らしく安定感のある音。艶のある余韻の美しさ。
音楽の表情を実によく生かすクリアーな音質。残念ながら国産DDでこういう音はまだ聴けない」

まず、このふたつの文章を読み、物理特性では圧倒的に優れているダイレクトドライブ型よりも、
音のよい、旧式のターンテーブルがあるという事実、
プレーヤーといえど性能だけでは語れない、ということを、それが文字の上だけのことで、
実体験が伴っていないにしても、オーディオに関心をもちはじめて、ごく早い時期に知ることとなった。

だからといって、ダイレクトドライブ型を完全に否定していたわけではなく、
方式としては、多くのメリットを持つわけだから、製品の完成度が高くなれば、
旧式のプレーヤーでは聴くことがかなわない、
優れた物理特性に裏づけられた音のよさを実現してくれるものだとも信じていた。

Date: 10月 23rd, 2009
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その1)

なぜダイレクトドライブ型のターンテーブルを信頼していない、その理由のひとつは、
まずはステレオサウンドの影響である。

私より上の世代のオーディオ好きの方たちが最初に手にされたプレーヤーシステムは、
ベルトドライブかアイドラードライブ。
それらにくらべて、1970年代にはいり登場したダイレクトドライブ型は、
ワウ・フラッターがほとんどない正確な回転精度、
それにアイドラー型では問題になっていたゴロも発生しない静粛性などの優位性をほこり、
多くのマニアの方たちが、ダイレクトドライブ方に買い替えられた(飛びつかれた人も多かったときいている)。

ところが、実際に自宅で使ってみると、それまでのベルトドライブ、アイドラードライブといった、
旧式のプレーヤーシステムの方が、音がよかったのではないか、という声があがりはじめ、
オーディオ誌においても、メーカーにおいても、ダイレクトドライブ型の再検討が行われはじめていた時期と、
ちょうどオーディオに関心をもちはじめた時期とが重なっていたことが、
ステレオサウンドの影響を大きくしたといえるかもしれない。

ステレオサウンドを読みはじめて3冊目の43号(ベストバイの特集号)では、
ガラードの401が取り上げられている。

Date: 1月 30th, 2009
Cate: アナログディスク再生, 五味康祐

五味康祐氏のこと(その7)

「想い出の作家たち」のなかで、五味千鶴子氏が語られている。
     *
亡くなる前にベッドに寝ていても、毛布をシュッとかけなおして、「折り目正しくなってるか」とたずねるのです。
「ええ、きちんとなってますよ」と言うと安心しました。何かお見舞いの品をいただいても「真心こもってるか」と言います。「とても真心のこもったものをいただきましたよ」と言うと、「そうか、人間は折り目正しく、真心こめていかなきゃいけないよ」と言っていたのをよく覚えております。
     *
「折り目正しく、真心こめて」が、
五味先生がオーディオ愛好家の五条件のひとつにあげられている、
「ヒゲのこわさを知ること」につながっているのは明らかだろう。

漫然とレコードをあてがうことで、センタースピンドルの先端をレコードの穴の周辺で行ったり来たりさせて、
その跡が細く残る。光にあてると、すぐにわかるスジがヒゲだ。

「折り目正しく、真心こめて」レコードを扱うのであれば、
こんなヒゲがつくことはない。
レコードの扱いは、ひいては音楽の扱いである。
それでも、ヒゲがあっても、肝心の盤面にキズがなければ音には無関係とわりきっている人もいるだろう。

あえて言うが、必ずしも無関係とは言えない。
レコードのセンター穴も、アナログプレーヤーのセンタースピンドルも、その寸法に許容範囲がある。
規格によって定められている寸法ぴったりだと、すっという感じで、レコードをターンテーブルの上に乗せられない。
ごくまれにレコードのセンター穴がぎりぎりの寸法のためなのだろう、
レーベル面をぐいっと力を込めて押す必要があったレコードに出合ったこともあるが、
ほとんど全てのレコードがすっとおさまる。

つまりセンタースピンドルとセンター穴の間には、わずかだけど、すき間が生じている。
そのためレコードがかならずしもセンターにきている保証はどこにもない。
ほぼ確実にどの方向かにオフセットしているわけだ。

以前、ナカミチから、このレコードの偏心をプレーヤー側で自動調整する製品TX1000が出ていた。
TX1000で調整前と後の音を聴き較べると、レコードの偏心による
──偏心といっても、ほんのわずかなブレなのに──音の影響の大きさに驚かれる方も少なくないだろう。

TX1000のように自動調整機構がついてないプレーヤーでも、偏心の影響はすぐにでも確かめられる。
同じレコードをセットして音を聴く。そしていったんレコードを取り外して、またセットして音を聴く。
けっこう音の違いがあるのに気づかれるはずだ。
端的にわかるのが、カートリッジを盤面に降ろした時の音である。
通常、ボリュームを絞ってカートリッジを降ろし、ボリュームをあげるが、
レコードの偏心を確かめたい時は、あえてボリュームには触れず、いつも聴く位置にしておく。

偏心が少なく、ほぼ中心にレコードがセットされている時の、カートリッジが盤面に降りた時の音は、
スパッとしていて、尾をひかず気持ちのいいものだ。
偏心が多いと、「あれっ?」と思うほど、この時の音が違う。

使い手の手に馴染んだプレーヤーで、「折り目正しく、真心込めて」レコードをセットしていると、
たいていは、いい感じの位置にレコードが収まってくれる。

これは、私の体験から断言できる。
ステレオサウンドの試聴室で、それこそ多い日は、何度も何度もレコードを取りかえ、ターンテーブルに乗せている。
その回数は、半端ではない。

だから言える。
ヒゲをつけるようなレコードのセットでは、偏心も大きかろう、音も冴えないだろう、と。