Archive for category アナログディスク再生

Date: 11月 19th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その18)

私が初めて買ったスタビライザーは、オーディオクラフトのSD33だった。
真鍮製で重量は730g。価格は7500円だった。

SD33にした理由は、このころのオーディオクラフトのつくる製品は、
大きなメーカーのアクセサリーとは、なにか違うものを感じさせるところがあった。

当時のオーディオクラフトの社長であった花村圭晟氏が、自身のためにつくったモノだったからかもしれない。

当時は各社からスタビライザーが出ていた。
材質も違っていたし、形状も違う。
それらの違いによって、スタビライザーを使ったときの音は、違ってくることは容易に想像できた。
では、どれにするのか。
価格的には大きな差はなかった。
スタビライザーが試聴できるオーディオ店もなかった。

そうなると直感しかない。

SD33にはSD33B(7000円)という、重量を追加できるアダプターもあった。
SD33とSD33Bにはしっかりと嵌合するようにネジが切ってあった。

その他にSR6(1500円)も用意されていた。
これは反り補正リングで、金属製の平ワッシャーが数枚入っていた。

レーベルが盛り上っているレコードならばスタビライザーの使用である程度は反りを抑えられる。
けれど、そのレコードを裏返してのせれば周囲が持ち上っているわけだから、
スタビライザーに反りの補正は期待できない。

SR6はターンテーブルシートとレコードのレーベルの間に挿入して使う。
スピンドルに、レコードの反り具合に応じてSR6を挿す。
反りがひどければ枚数を足していき、スタビラザーの重量で反りを抑えるというものだ。
抑えの重量が不足と思えたらSD33Bを足すことで、SD33+SD33Bの重量は1460gになる。

SD33Bを買うことはなかったが、SR6は買った。
使ってみると、よく考えられたアクセサリーだと実感できた。

Date: 7月 20th, 2015
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その34)

ステレオサウンド 51号の五味先生のオーディオ巡礼にも、
フィデリティ・リサーチのFR7は登場している。

51号の訪問先はH氏。
数年後にステレオサウンドの原田勲氏だと知ることになるが、
このときはまだH氏がどういう人なのかは知らなかった。
五味先生の知りあい、それもかなり親しい知りあいだということしかわからなかった。

このH氏が、EMTの927DstにFR7を取りつけられている。
スピーカーシステムはヴァイタヴォックスのCN191、アンプはマランツのModel 7と9のペア。

ここで鳴っていた音がどうでもない音であればFR7のことが気になることはなかった。
五味先生はH氏の音について、こう書かれている。
     *
〝諸君、脱帽だ〟
 ショパンを聴いてシューマンが叫んだという言葉を私は思い出した。このあと、モニク・アースなるピアニストの演奏で同じパバーヌを聴いたためかも知れない。さらにバックハウスでベートーヴェンの作品一〇九、ブタペスト・カルテットで作品一三一、魔笛をクレンペラーで、グリュミオーのヴァイオリンでヴィオッティの協奏曲、更にはヴィヴァルディのヴィオラ・ダ・モーレなど、こちらの好みを知っていて彼は私の気に入りそうなレコードばかり掛けてくれたが、たいがい口のわるい私を承知でこれだけ、こちらの聴き込んだ曲を鳴らせるのは、余程、自信があったからだろうが、それがけっして過信ではないことを私は認めた。この「オーディオ巡礼」では、奈良市南口邸の装置で、サン=サーンスの交響曲第三番の重低音を聴いて以来の興奮をおぼえたことを告白する。
     *
FR7が並のカートリッジではないことがわかる。
だから51号を読んでからというもの、瀬川先生のFR7の評価が気になっていた。
だがFR7に対して、瀬川先生は評価されていない──、というよりも無視にちかい。

なぜなのか。
いまとなっては確かめようはないが、FR7のカタチにあると私は思っている。

47号の新製品紹介のページで初めてFR7の写真を見た時もそう感じていた、
でもこの時は、まだぼんやりとした感じであった。
それからしばらくしてFR7の音を聴くことができた、ステレオサウンドの試聴室である。

音については書かない。
FR7を聴いたということは、FR7がトーンアームに取りつけられたところを見たということである。
ここで47号で感じていたものをはっきりと認識できた。
そして、やっぱりそうだったのかもしれない、ともおもっていた。

Date: 7月 20th, 2015
Cate: アナログディスク再生

私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その33)

カートリッジにはヘッドシェルと一体になったモノがある。
EMTのTSD(XSD)15がそうだし、テクニクスのEPC100Cもそうである。

オルトフォンのSPUも、Gシェル、Aシェルどちらも本体をカートリッジ本体取り外して、
アダプターを介すれば他のヘッドシェルに取りつけられるといっても、
ヘッドシェル一体型のカートリッジということになる。

カートリッジ本体だけであれば、ヘッドシェルを選択できる。
音のよいヘッドシェルを選ぶ、ということになるのだろうが、
ヘッドシェルの選択においては指かけのつくりはひじょうに重要なポイントになってくるし、
なによりもカートリッジを取りつけて、さらにトーンアームに取りつける。
そしてカートリッジをレコード盤面上におろしてトレースしていく姿もまた重要となる。

一体型カートリッジでは、だから単体のカートリッジ、単体のヘッドシェル以上に、
デザインが優れたモノであってほしい。
なにしろ変更できないのだから。

フィデリティ・リサーチからFR7というカートリッジが登場した。
ステレオサウンド 47号での新製品紹介のページでの取り上げ方も力がはいっていた。
それまでのフィデリティ・リサーチのカートリッジFR1とは、
大きく違う発電構造、それにFR7はヘッドシェル一体型で、
音もデザインも大きく変貌を遂げた、といえた。

FR7の発電構造図を見ていると、確かにユニークなカートリッジではあるし、
ぜひ聴いてみたいという気持になるけれど、
FR7の写真を見ていると、うーん、どうなのだろう……、という気持になっていた。

内部構造が FR1とは大きく異っているためああいう形状になるのは理解できても、
あのデザインが好きにはなれなかった。

47号の特集はベストバイだった。
FR7は、井上卓也、上杉佳郎、菅野沖彦、長島達夫、山中敬三の五人が三星をつけている。
FR7に星をつけていないのは岡俊雄、瀬川冬樹のふたりだけだった。

岡先生は59号のベストバイで、FR7、FR7fの両方に三星をつけられているから、
47号のベストバイにおいては、試聴が間に合わなかったのが理由だったのだろう。

けれど瀬川先生は、やはり星をつけられていない。

Date: 7月 4th, 2015
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(その32)

テクニクスがもしSL10、SL15といったLPジャケットサイズのアナログプレーヤーを開発していなければ、
ビクター、ソニー、デンオンと同じように、電子制御のトーンアームを出していただろうか。

SL10はリニアトラッキング方式で、電子制御である。
ただし一般的なリニアトラッキング方式では、
ストレートのトーンアームパイプがある。

SL10とほぼ同時代の他社のリニアトラッキングアームのプレーヤー、
ヤマハのPX1、パイオニアのPL-L1のように。

テクニクスのジャケットサイズでは、
同じリニアトラッキング方式ではあっても、このパイプはない。

テクニクスがSP10との組合せを前提としたリニアトラッキングアームを開発したとしたら、
どんな形になっていただろうか。
パイプのないリニアトラッキングになっていたのだろうか。

パイプがなかったとしたら、
パイプに起因する問題もなくなる。
つまり低域共振の問題もほとんど無視できるはずであり、
そうなると他社の電子制御のトーンアームで行っていた低域共振の制御は不要となる。

Date: 6月 5th, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その8)

私は(その4)で、
ゲイルのGT2101は大小の三角形から成り立っている、と書いた。

こう書いたのは、GT2101のカタチを想像しやすいようにであり、
ゲイルのGT2101のカタチは本来的には二重円(◎)である。

円の外周を三分割する。
それぞれの弧の向きを反転させる。
つまり内側にカーヴを描くように反転させれば、GT2101の三角形になる。

ターンテーブルプラッターが二重円の内側、
ベースが二重円の外側。
それぞれを三分割して、弧を反転させたカタチがGT2101である。

そこに黒い円盤がのり、回転する。
つまり二重円(◎)の内側の円が黒に反転するわけだ。

GT2101を最初見た時には、こんなことには気づかなかった。
いまごろ気づいた。

GT2101のデザイナーの意図がどうだったのかは知りようがないが、
私は、いまGT2101のカタチを、こう解釈している。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その7)

フランスのメトロノームからカリスタが登場したのはいつごろだったのか。
忘れてしまったけれど、ステレオサウンドでカリスタの写真を見て、
ゲイルのGT2101だ、と思ったことは憶えている。

非常に高額で、音もいいという評判のカリスタだけど、
GT2101が登場したときの衝撃を味わった者には、どうしても二番煎じとうつってしまう。

ターンテーブルとCDトランスポートという違いがあるけれど、
あとから登場したのだから、より洗練したモノであってほしい、と思ったことも憶えている。

GT2101の衝撃が大きかったのは、デザインだけではなかった。
私にとって、ジョン・カールがエレクトロニクス部分を設計していることも、理由のひとつである。

GT2101は10〜99rpmまで、0.1rpmステップで回転数を設定できる。
本体とカールコードで接続されている円筒状のコントローラー上部中心にあるボタンを押せば、
33 1/3rpmに固定可能なことは知っていたけれど、それ以上の操作方法に関しては、
当時のオーディオ雑誌からの情報ではよくわからなかった。

いまは「Gale GT2101」で検索すれば、画像だけでなく動画もすぐに見つかる。
今回、その動画を見て、こうやって回転数を変えるのか、その操作に関しても驚きがあった。

こんなアナログプレーヤーが1977年か78年ごろに登場している。
ゲイルのデザイナーは誰だったのか、どんな人だったのか。

Date: 6月 2nd, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その6)

カートリッジの振動系以外は絶対に振動してはならない、
これをアナログディスク再生の理想とすれば、
レコード盤はターンテーブルプラッターに吸着することが、
より理想的であるわけで、レコード盤を浮すなどもってのほかということにもなる。

けれど世の中に無共振ということはありえないのだから、
それに振動を完全にコントロールすることも不可能なのだから、
ノイズも音のうち、と同じで、振動(共振)も音のうち、という考え方もできる。

究極を追い求めながらも、現実ではどこかで折り合いをつけることも求められる。
どこで折り合いをつけるのかは、人によって違ってきて当然であり、
どちらが正しいとか間違っているとか、他人が干渉すべきことではない。

アナログディスク再生の面白さは、こういうところにもある。
人それぞれ与えられた環境は違う。
その環境の中で、どう折り合いをつけていくのか。
また自分の感性とどう折り合いをつけるのか。

そのことに対して、いろいろなアプローチがやれるのがアナログディスク再生である。
こうでなければならないと決めつけてしまうのも、その人の自由ではあるけれど、
アナログディスク再生はそれでは面白さの半分も味わえないままになってしまうかもしれない。

ゲイルのGT2101、トランスクリプター、シネコのプレーヤーシステムのように、
レコード盤を浮すやり方は試そうと思えば簡単に試せることである。

確かにレコード盤の振動はターンテーブルシートに密着させるよりも増えることは、
実測データが示しているが、そのことがどう音に影響するのかは、
どんな本を読んでも書いてないし、それにケース・バイ・ケースでもある。

こうでなければならないと決めつけてしまったら、経験値を高めることはできない。
アナログディスク再生に必要なのは、高価なアナログプレーヤーやカートリッジではない。
使い手のアナログディスク再生への深い理解であり、
これを得るには、思い込みに捕われることのない耳(感性)とあらゆることを試してみる好奇心ではないだろうか。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その5)

ゲイルGT2101の振動実測データをみると、やっぱりな、と多くの人が思うことだろう。

「プレーヤー・システムとその活きた使い方」は、
当時の日本ビクターの音響研究所長の井上敏也氏の監修によるもので、
多くの実測データはビクターによる測定である。

Galeでのハウリングの実験とついている章では、ふたつの実装データが載っている。
ひとつは、ターンテーブルプラッター外周に三つあるレコードを支持する箇所に、
カートリッジを降ろしての測定、
もうひとつはレコード支持部間にカートリッジを降ろしての測定である。
つまりレコードが浮いている状態の測定となる。

レコード支持部での結果は25Hzにピークがあるがそれもそれほど大きくはない。
それ以上の周波数ではかなり低く抑えられていて、かなり優秀な特性を示している。

レコードが支持部から離れて浮いている状態だとどうなるのか。
21Hzと50Hzに大きなピークがある。
60Hz以上の周波数ではうねりが見られ、
あきらかにスピーカーからの音圧によってレコードが揺すられていることがわかる。

その状態であっても、マグネフロートが効果的に働いているのか、
アクリルというベースの特質なのか、面積をできるだけ抑えたベース形状のおかげなのか、
ハウリング特性は優秀である。

レコードを浮すと音が大きくなる、という人がいる。
カートリッジは振動を電気信号に変換するものだから、
レコードそのものがスピーカーからの音圧でゆすられ振動が大きくなっているのだから、
その振動も含めてカートリッジはピックアップして電気信号へと変換するのだから、
音が大きくなって当然といえよう。

Date: 6月 1st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その4)

「続コンポーネントステレオのすすめ」で、瀬川先生は次のように書かれている。
     *
 たとえば、イギリス・トランスクリプターの Transcriber や、同じくイギリスのゲイルGT2101のように、一種前衛彫刻を眺めるようなデザインの奇抜さは、他に類のないという点で、とりあげるに値するかもしれない。フランスのシネコMark2002は、前二者ほどユニークではないにしても、透明のアクリルベースの美しさがユニークだ。
     *
ゲイルもトランスクリプターも同じ時代に、同じイギリスから生れている。
《一種前衛彫刻を眺めるようなデザイン》に関しては、ゲイルのGT2101の方につよく感じる。

GT2101は大小の三角形から成り立っている。
この三角形は直線から成るものではなく、内側にカーヴしている三角形で、
アクリル製なので透明な三角形でもある。

大きな三角形がベースで、三つの頂点に脚部がある。
この脚部は希土元素酸化物マグネット使用のマグネフロート方式で、
そのためベース部分は二枚のアクリルが使われている。

ターンテーブルプラッターは小さな三角形で、レコードは頂点にある円形のステンレス、
スピンドル周辺の円形のステンレスの四点によって浮くことになる。

瀬川先生が挙げられているトランスクリプターもシネコも同じようにレコードを浮している。
シネコは外周の六点とスピンドルの計七点支持、
トランスクリプターは外周六点、スピンドルとその間に三点の計十点支持である。

レコードをターンテーブルプラッターに密着させない。
これは昔からアマチュアの間でも試みられている。
私もずっと昔に実験したことがある。
いまも、レコードは浮した方がいいと主張する人はいる。
エアーキャップ(通称プチプチ)をターンテーブルシート代りにする人もいる。

音に関してはあえて書かないが、
レコードを浮すことによるレコードそのものの振動についての実測データはある。
誠文堂新光社から出ていた「プレーヤー・システムとその活きた使い方」に、
ゲイルのGT2101を使った実測データが載っている。

Date: 5月 31st, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その3)

1970年代、イギリスにゲイル(Gale)というメーカーが登場した。
輸入元はテレオンだった(スピーカーだけはオンライフが以前輸入していた)。

現在ゲイルは輸入されていないが、会社は存在している。
ウェブサイトを見ると、あの頃の意気込みはまったく感じられない、
別の会社になったかのようである。

当時のゲイルの製品はスピーカーシステムとターンテーブルが輸入されていた。

スピーカーシステムはGS401。
日本では、というよりもステレオサウンドではGS401Aが取り上げられていた。
GS401Aは横に長いプロポーションのブックシェルフ型だが、
しゃれたパイプ製の専用スタンドが用意されていた。

両サイドがクロームメッキされ、
フロントバッフルを囲むように黒のサランネットがエンクロージュアを一周している。
カラー写真でみると、黒とシルバー(というよりも輝く白ともいえる)のコントラストが、
とにかく印象に残るデザインだった。

GS401には通常の木製エンクロージュアのCタイプも用意されていた。
こちらは同じ内容ながら縦置きのブックシェルフ型。

GS401Aは、ステレオサウンド別冊「コンポーネントステレオの世界 ’78」で、
亀井良雄氏による素敵な写真で確認できる。

最初スピーカーシステムが紹介され、しばらくしてターンテーブルのGT2101が登場した。
GS401A以上に、モダンな印象をあたえるターンテーブルだった。

GT2101は音の良いターンテーブルだったのかどうかはなんともいえない。
私が当時見たのは、さほど大きくないモノクロの写真だけ。
実物をぜひとも見たかったターンテーブルである。

Date: 5月 30th, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その2)

別項でラックスのPD121について書いた。
そこに、アナログプレーヤーにおける主役は、やはりレコードだと思う、と書いた。

PD121のように、無駄がなくシンプルな表情をみせてくれるアナログプレーヤーにふれると、
そのことを強く思うとともに、最近登場したアナログプレーヤーのいくつかは、
そのことを忘れてしまったのか、それとも気づいてさえいないのか、
アナログプレーヤーこそ(我こそ)が主役とでも言わんばかりの形相をしている。

そんなアナログプレーヤーでも音が良ければ気にしない人もいれば、
どうしても使う気になれないという、つまり私と同じ人もいる。

アナログプレーヤーは他のオーディオ機器と違い、
それ単体でデザインが完結するモノではない。
ターンテーブルプラッターの上にレコードがのせられ、回転する姿が美しくあるべきだ。

Date: 3月 9th, 2015
Cate: アナログディスク再生

建造物としてのアナログプレーヤー(その1)

スタートレックに登場するU.S.S. ENTERPRISE NCC-1701。
スタートレックをみるたびに、アメリカが生んだ最高のデザインのひとつだと思うとともに、
アナログプレーヤーに、このカタチをもってこれないだろうか、とも思ってしまう。

エンタープライズ号は建造物である。
アナログプレーヤーもまた建造物として捉えた方がいいのではないか。

これまでにいくつかの、そう捉えられるアナログプレーヤーが登場しているものの、
エンタープライズ号の域に達しているとは、まだまだいえない。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その17)

トーレンスの101 Limitedを使っていた時、
EMTの930st用のガラスターンテーブルと927Dst用のスタビライザーを手に入れた。

930st(101 Limited)はアルミ製のターンテーブルプラッターの上に、
プレクシグラス製のサブターンテーブルがのっている。
これを927Dstのそれと同じつくりのガラス製のモノに変え、
927Dst用のスタビライザーも併用する。

しばらくこの状態で聴いていた。
ガラス製ターンテーブルはそのまま使い続けた。
スタビライザーはというと、レーベルの上に乗せるという使い方はしなくなった。
けれど使わなくなったわけではない。

101 Limitedはトーンアームの真横に、45回転アダプターをおけるようになっている。
927Dstのスタビライザーは上下反対にすれば45回転アダプターになる。
だからスタビライザーは、この位置に置いていた。
つまりトーンアームとターンテーブルプラッターのあいだにスタビライザーがある。

ここにスタビライザーがあるとないとでは、音が違う。
私はここにスタビライザーを置く音をとった。
たいていはこの状態で聴いていた。
ときどき気が向けばスタビライザー本来の使い方をして聴いた。

このスタビライザーが二個あれば、トーンアームの真横に置きながら、
レコードの上にのせるかのせないかという使い分けもできたのだが、一個しか持っていなかった。

スタビライザーはなにもレコードの上にのせるだけが使い方ではない。
こういう使い方もある。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その16)

したり顔でスタビライザーを使うとレコードの鳴きを抑えてしまう、だからダメ、という人がいる。
スタビライザーはレコードのレーベル部にいわば重りを乗せるものであるからといって、
レコードの鳴きを抑えているといえるのだろうか。

レコード(LP)の直径は12インチ。スタビライザーの直径は7〜8cmのモノが多かった。
これだけのモノでレコードの鳴きを抑えることができるのならば、すごいことである。

それにスタビライザーはたいていの物が金属製だった。
金属といっても真鍮、銅、ステンレスなどがあった。
ガラス製もあった。
ゴムでダンプしてあるモノもあった。

どんなスタビライザーであっても、スタビライザー固有の音(鳴き)がある。
スタビライザーを使うと、スタビライザー固有の音も大なり小なり再生音に附帯して出てくることになる。

スタビライザーはレコードの鳴きの一部を抑えることはできているだろうが、
完全に抑えることなんて無理である。
なのに、スタビライザーの使用に徹底的に否定的な人は、レコードの鳴きを抑えるから、だという。

なぜ、こうも強引な理由をつけて、スタビライザーを使うことに対して白黒つけたがるのか。
音を聴いて瞬時にどちらがいいかを判断する。
これがカッコいいことだと思っているから、ではないのか。

スタビライザーはひじょうにプリミティヴなアクセサリーである。
使い方も簡単である。
だからこそもっともっと気楽につきあえばいいではないか。

その時の自分の感覚が使った方がいいと判断すれば使えばいいだけのことだし、
このレコードでは使わない方がいいと判断したのであるならばそうすればいい。

スタビライザーを使うこと(使わないこと)を楽しめばいいのに……、と思う。

Date: 1月 17th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その15)

スタビライザーを使うのがいいのかどうかについても同じことである。
あるレコードについては使った方がいいことだってある。
同じレコードであっても、カートリッジがかわれば使わない方がいいことだってある。

それにシステムの音も聴き手の感覚も毎日完全に同じではない。
ひとりの聴き手の朝と夜とでも違うように、常に変化しているのだから、
それに応じて柔軟に対処するのが、それができるのがアナログディスク再生の、
デジタルディスク再生に対しての大きな強みといえる。

スタビライザーにもいろんな種類がある。
それらを試して、これがいちばんいい、と思えるスタビライザーをえらぶのではなく、
それぞれのスタビライザーの音の傾向をきっちりと把握しておくことで、
同時にカートリッジとの相性をふくめて、その調整、それらの関係性の把握こそが、
アナログディスク再生の柔軟性を、聴き手が手にすることができる。

このことは針圧計で針圧をできるかぎり精密に測ることではない。
自分の感覚の把握でもある。

つまりあれこれ調整することで、
その時の自分の感覚に合せることは、自分の感覚を調整していることでもある。

アナログプレーヤー関連のアクセサリーをどう捉えるのか。
私は、こう捉えている。