Archive for category アナログディスク再生

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その17)

トーレンスの101 Limitedを使っていた時、
EMTの930st用のガラスターンテーブルと927Dst用のスタビライザーを手に入れた。

930st(101 Limited)はアルミ製のターンテーブルプラッターの上に、
プレクシグラス製のサブターンテーブルがのっている。
これを927Dstのそれと同じつくりのガラス製のモノに変え、
927Dst用のスタビライザーも併用する。

しばらくこの状態で聴いていた。
ガラス製ターンテーブルはそのまま使い続けた。
スタビライザーはというと、レーベルの上に乗せるという使い方はしなくなった。
けれど使わなくなったわけではない。

101 Limitedはトーンアームの真横に、45回転アダプターをおけるようになっている。
927Dstのスタビライザーは上下反対にすれば45回転アダプターになる。
だからスタビライザーは、この位置に置いていた。
つまりトーンアームとターンテーブルプラッターのあいだにスタビライザーがある。

ここにスタビライザーがあるとないとでは、音が違う。
私はここにスタビライザーを置く音をとった。
たいていはこの状態で聴いていた。
ときどき気が向けばスタビライザー本来の使い方をして聴いた。

このスタビライザーが二個あれば、トーンアームの真横に置きながら、
レコードの上にのせるかのせないかという使い分けもできたのだが、一個しか持っていなかった。

スタビライザーはなにもレコードの上にのせるだけが使い方ではない。
こういう使い方もある。

Date: 1月 18th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その16)

したり顔でスタビライザーを使うとレコードの鳴きを抑えてしまう、だからダメ、という人がいる。
スタビライザーはレコードのレーベル部にいわば重りを乗せるものであるからといって、
レコードの鳴きを抑えているといえるのだろうか。

レコード(LP)の直径は12インチ。スタビライザーの直径は7〜8cmのモノが多かった。
これだけのモノでレコードの鳴きを抑えることができるのならば、すごいことである。

それにスタビライザーはたいていの物が金属製だった。
金属といっても真鍮、銅、ステンレスなどがあった。
ガラス製もあった。
ゴムでダンプしてあるモノもあった。

どんなスタビライザーであっても、スタビライザー固有の音(鳴き)がある。
スタビライザーを使うと、スタビライザー固有の音も大なり小なり再生音に附帯して出てくることになる。

スタビライザーはレコードの鳴きの一部を抑えることはできているだろうが、
完全に抑えることなんて無理である。
なのに、スタビライザーの使用に徹底的に否定的な人は、レコードの鳴きを抑えるから、だという。

なぜ、こうも強引な理由をつけて、スタビライザーを使うことに対して白黒つけたがるのか。
音を聴いて瞬時にどちらがいいかを判断する。
これがカッコいいことだと思っているから、ではないのか。

スタビライザーはひじょうにプリミティヴなアクセサリーである。
使い方も簡単である。
だからこそもっともっと気楽につきあえばいいではないか。

その時の自分の感覚が使った方がいいと判断すれば使えばいいだけのことだし、
このレコードでは使わない方がいいと判断したのであるならばそうすればいい。

スタビライザーを使うこと(使わないこと)を楽しめばいいのに……、と思う。

Date: 1月 17th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その15)

スタビライザーを使うのがいいのかどうかについても同じことである。
あるレコードについては使った方がいいことだってある。
同じレコードであっても、カートリッジがかわれば使わない方がいいことだってある。

それにシステムの音も聴き手の感覚も毎日完全に同じではない。
ひとりの聴き手の朝と夜とでも違うように、常に変化しているのだから、
それに応じて柔軟に対処するのが、それができるのがアナログディスク再生の、
デジタルディスク再生に対しての大きな強みといえる。

スタビライザーにもいろんな種類がある。
それらを試して、これがいちばんいい、と思えるスタビライザーをえらぶのではなく、
それぞれのスタビライザーの音の傾向をきっちりと把握しておくことで、
同時にカートリッジとの相性をふくめて、その調整、それらの関係性の把握こそが、
アナログディスク再生の柔軟性を、聴き手が手にすることができる。

このことは針圧計で針圧をできるかぎり精密に測ることではない。
自分の感覚の把握でもある。

つまりあれこれ調整することで、
その時の自分の感覚に合せることは、自分の感覚を調整していることでもある。

アナログプレーヤー関連のアクセサリーをどう捉えるのか。
私は、こう捉えている。

Date: 1月 16th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その14)

アナログディスク再生とデジタルディスク再生。
このふたつの違いは、いろんな言葉で表現できる。

究極的には、アナログもデジタルも同じだと私は考えている。
だからといってアナログディスク再生とデジタルディスク再生が同じというわけではない。

デジタルディスク再生、
いいかえればCDプレーヤーの場合、ひとつのブラックボックス的要素が強い。
アナログプレーヤーにはブラックボックス的要素はほとんどないといえる。
機種によって、その辺の違いはあるけれど、
ほとんどすべての動作は視覚的に確認できるのがアナログプレーヤーである。

それゆえに調整箇所が多いのがアナログプレーヤーである。
CDプレーヤーでは、アナログプレーヤーでカートリッジを交換するようなことはできないし、
カートリッジの調整にあたる箇所もない。

つまりアナログプレーヤーによるアナログディスク再生は、
その時々の自分の感覚に応じて調整すること(融通をつけること)ができることが、
CDプレーヤーによるデジタルディスク再生との大きな違いである。

スピーカーから鳴ってくる音をきく聴き手は、いうまでも人間である。
機械がきくわけではない。
人間である以上、常に同じ状態ではない。
スピーカーから鳴ってくる音楽に気乗りしない時もある。身が入らない時もある。
上の空で聴いてしまいそうになるときがある。

そういう時、アナログにプレーヤーならば、その時の自分の感覚に合せるように調整することができる。
カートリッジの交換も、そう受けとめることができる。

このLPにはこのカートリッジで、というふうに決めておくのではなく、
むしろ、いま聴きたいレコードを、いまの感覚に合せてカートリッジを選択する、という聴き方である。

Date: 1月 12th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その19)

1970年代がおわろうとしていたころから、
ダイレクトドライヴ型プレーヤーの音質が問題になりはじめていた。
性能は確かに優れている。けれど音がどうもよくない……、そんなふうにいわれはじめてきた。

ベルトドライヴ、リムドライヴの、音がいいと評価を得ていたプレーヤーと比較していわれたのは、
まずターンテーブルプラッターが軽いからではないか、があった。
つまり慣性モーメントが小さい。そのことが音に影響を与えている、と。
それからモーターのトルクが弱いから、だともいわれはじめた。

けれど冷静にカタログに発表された値をみていくと、
ダイレクトドライヴ型のすべてのプラッターが軽いわけではない。
ベルトドライヴ、リムドライヴと同等のモノもあったし、
モーターに関してもトーレンスのTD125のようにかなり弱いタイプも、ベルトドライヴ型にはあった。

プレーヤーの音は、そんな部分的な値によって決ってしまうものではない。
ベース、サスペンション、その他のいくつもの要素が有機的に関係してのトータルの音質である。

それでも国産メーカーは、そんな声に反応してだろうか、
そんなことはない、と証明するためだろうか、
ターンテーブルプラッターの重量を増し、モーターのトルクも強くしていった。

たとえばテクニクスのSP10MK3のプラッターは銅合金+奄美ダイキャスト製で、重量は10kg。
デンオンのDP100のプラッターは6.5kg、オンキョーのPX100Mは銅合金削り出しで10kg、
これらは重量級のダイレクトドライヴである。

これだけの重量物を回転させるのだからモーターのトルクも高い。
いま、これだけのモノがつくれるだろうか、と思える。

Date: 1月 11th, 2015
Cate: アナログディスク再生

ダイレクトドライヴへの疑問(その18)

コマをまわすときのことを考えてみる。
小さなコマであれば中心の軸を指でまわす。
これでけっこうまわる。

けれど大きなコマ(重量のあるコマ)になってくると、
中心の軸を指でまわすことは大変になってくる。
だからコマの周囲にヒモを巻きつけて、
そのヒモを思いきり引っ張ることでコマに回転を与える。

ターンテーブルプラッターを指で廻そうとする時、どこに指を置くか。
ほとんどの人が外周のところに指をおいて廻す。
わざわざスピンドル近くに指を置いて廻そうとはしない。

同じ回転数で廻そうとしたら、外周よりも内周のほうが指の移動距離は短くなる。
つまり外周であれば内周よりも速く廻さなければならない。
それでも外周を選ぶ。

楽に廻せるからである。

ダイレクトドライヴは理想の方式のように思える。
モーターの回転をそのままターンテーブルプラッターにつたえて廻す。
けれどモーターのシャフトはターンテーブルプラッターの中心でもある。

つまり、指で廻す時にもっとも力を必要とする最内周にあたる。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その13)

針圧計に精度の高さを求めるのは、何かを決定したい行為なのかもしれない。
いい感じで鳴るポイントを見つけ出した。
それを針圧で記憶する。
次にそのカートリッジを使う時にも、その針圧にぴったりと合わせる。

アナログプレーヤーのアクセサリーは昔からいろんな種類がある。
そのひとつにディスクスタビライザーがある。

スタビライザーはレコードのレーベル部分にのせる、なんらかの素材による重しである。
昔は素材も重量もいろんな種類があった。
重量によるモノ以外にコレットチャック式のモノもあったし、吸着式のモノもあった。
プレーヤーによってはスタビライザーが標準装備のモノもいくつかあった。

昔からアナログディスク再生に熱心な人であるなら、
スタビライザーをひとつは持っていると思う。
そんなに高価なアクセサリーでもなかったし、レーベルのところにのせるだけだから、
結果が好ましくなければ使わなければ、それでいい。

つまり元の状態に簡単に戻すことができる。
手軽に試させて、音の変化も確実にある(よいと感じるかそうでないかは別として)。

このスタビライザーに関しても、決定しようとする人がいるように思える。
あるレコードで、スタビライザーのあるなしの音を比較試聴する。
どちらがよいかを判断して、スタビライザーありでいくのか、なしでいくのかを決定する。

けれど、これも決定するようなことだろうか。
スタビライザーありの音、なしの音を、いろんなレコードで聴いておく。
いい悪いを判断するためではなく、自分の中に判断材料・基準をつくっておくためにも聴いておく。

そうすれば、少なくとも自分のシステムにおいて、
このレコードのときにはあったほうが好ましく聴ける、
別のレコードではないほうが好ましい、という判断はすぐにつくようになる。

ならばスタビライザーをのせたほうがいいと判断したらのせればいいだけの話で、
どのレコードに関してものせるかのせないかを決定するようなことではない。

Date: 1月 10th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その12)

アナログディスク再生に関すること全般にいえるのは、柔軟性が必要だということ。
針圧の調整にしても、新品で買ってきたカートリッジをとりつけて音を聴く。
最初は私だって標準針圧にあわせて聴く。
聴いてすぐに針圧を調整したりはしない。

レコードを何枚か、その状態で聴いてみる。
針圧を下限・上限まで変化させてみるのは早くてもその後であり、
新品のカートリッジを聴きはじめた、その日のうちに細かな調整はしない。

しばらく使っている(その音を聴いている)と、
なんとなく針圧を含めた調整をしたほうがいいかな、と思える時がある。
そういう時に、こまかな調整をしっかりとやる。

それでいい感じで鳴ってくれる針圧があったとする。
それをメモするようなことは、前にも書いたように私はしない。

その数値をどこまでも正確に計り、次にそのカートリッジを取り付けた時に正確に同じ数値にしたところで、
同じ音には鳴らない。
さまざまな要素によって、音は微妙に変化しているから、
それでもいい感じで鳴ってくれるポイントをまた出そうとしたら、
以前の数値にはもうこだわらないことである。

音を聴いて、どうしたらいいのか、瞬時に判断するものである。
そんな判断は、すぐには身につかない。
だから気に入ったカートリッジが見つかったら、あれこれいろんな調整を辛抱強くやってみるしかない。
そうやって感覚量を身につけるしかない。

オーディオのプロフェッショナルではないのだから、自分の好きなカートリッジに関して、
そういう感覚を身につければいい。
それは針圧計が示す数値とは関係のないものだ。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その11)

日本人はマメだ、といわれる。
カートリッジのことに関しても、レコードごとにカートリッジを交換することもある、
そういう話をきくとマメだな、と思う。

私はすでに書いているように交換することはしなかった。
結局EMTのTSD15でずっと聴いていた。

ときどきは、あのカートリッジでこのレコードをかけたら……、と想像はするけれど、
想像だけでもいいや、というところがある。

こんな私は、カートリッジをマメに交換しているひとからすれば、
マメじゃないマニア、ということになる。

けれど、気に入ったカートリッジを最適に調整することに関しては労を惜しまない。
針圧調整をはじめとして、細かな調整をきっちりとやっていく。
その意味では、マメといえる。

そういうマメさからすれば、カートリッジを頻繁に交換している人に対して、
そこまで細かく調整しているのですか、と問いたくなる。

こんなことを書いている私だが、ここまで調整するようになったのは、
ステレオサウンドの試聴室で井上先生に鍛えてもらったおかげである。
この経験がなければ、徹底的に調整をつめていくことは、
このへんだろう、このくらいやればいいだろう、と、自分の中だけの基準でやっていただけかもしれない。

カートリッジ、アナログプレーヤーの調整は、そんなレベルではすまない。
しかも、そこまでくると感覚量こそが大事になってくる。
針圧ひとつとっても、針圧計が示す数字にとらわれたり、頼ったりしていては、まだまだだといえる。

Date: 1月 8th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その10)

アナログディスク全盛時代、カートリッジの平均所有本数は日本人がいちばん多い、ということがいわれていた。
アメリカ、ヨーロッパにもオーディオマニアは大勢いる。
けれど彼らの多くは、頻繁にカートリッジを交換するようなことはしない。
そんなこともいわれていた。

ほんとうだったのどうかははっきりとしない。
でも、SME式のプラグインコネクターが普及していたのは、
というよりもほぼ標準規格といってもいいほどなのは日本だけで、
そのことも影響して、アメリカ、ヨーロッパではレコードごとのカートリッジ交換は一般的ではなかった。
こんな話もきいている。

たしかにそうなのかもしれない。
マークレビンソンのLNP2は、入出力端子にスイスのLEMO社製のコネクターに変更したさいに、
型番の末尾にLがつくようになった。
これは日本だけのことで、他の国で売られていたLNP2(他のアンプも含めて)には、
LEMOコネクターになってからも、Lはついていなかった。

並行輸入対策としての型番末尾のLであった。
いわば日本仕様であり、日本仕様はこれだけではなかった。

初期のLNP2はPHONO入力は一系統のみだった。
それが途中からPHONO1、PHONO2となった。
これも日本のみである。

輸入元のRFエンタープライゼスの要望で、日本にはアナログプレーヤーを複数台使っている人、
ダブルトーンアームの人が少なくないから──、ということだったらしい。

私としては微小入力のPHONOに、
接点がひとつよけいに透ることになるのだから、PHONOは一系統のほうがいいのに……、と思うのだが、
あのころの日本で、LNP2を買える層はそうではない人が多かったということになる。

Date: 1月 4th, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その9)

インターネット・オークションが盛んになり、
個人売買が日常となってくることで、見えてくるものもある。

オーディオ店が買取り、中古として売る場合には、多少の整備がなされる。
少なくとも店側として高く売りたいから外観はキレイにする。
前使用者の手垢を感じさせるものは取り除く。

けれど個人売買だと、必ずしもそうではない。
はっきりと前使用者の手垢を感じさせるものがついてくることがある。

それがカートリッジの場合であれば、
ヘッドシェルに、針圧をメモしたテープが貼ってあったり、
さらにはカートリッジ交換時の調整をはぶくために、
ヘッドシェル込みの重量をすべて一定にするためにウェイトで調整したり、
高さ調整を省くためにヘッドシェルとカートリッジの間にスペーサーを挿んだり、という例もあるときく。

スタティックバランス型のトーンアームであれば、
ヘッドシェル込みの重量を調整すれば、針圧調整すら不要になる。
重量調整の、最初の手間さえ面倒と思わなければ、いいアイディアといえるかもしれない。

私にこういう発想はなかった。
私は気に入ったカートリッジを見つけたら、そのカートリッジを最適に調整するようにしていたし、
カートリッジをあれこれ交換することはやっていなかった。

ときにはまったく傾向の違うカートリッジで聴きたいという欲求はあったけれど、
それほど強いものではなく、結局交換することはほとんどなかった。

そんな使い手もいれば、LPのジャケットにカートリッジの型番をメモしている人もいる。
このLPにはこのカートリッジ、というふうに交換していく人である。

Date: 1月 3rd, 2015
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その8)

私は、針圧とインサイドフォースキャセラー量を、バイアスと捉えている。
針圧は垂直方向、インサイドフォースキャセラーは水平方向のバイアスであることは、以前書いた。

このバイアスは同じカートリッジで最適値を、ある条件のもとでさがし出したら、
常にその値でいい、というものではない。
温度によっても最適バイアス値は変化する。
レコードによっても違ってくるし、
毎日レコードをかけているカートリッジと半年ぶりに使う時と、一年ぶり、
さらにはもっとひさしぶりに使う時とでは、同じバイアス値が最適とはならない。

2.6gの針圧が最適だったとしても、次にかけるときには、
もろもろの条件の変化により、2.65gだったり2.55gだったりすることだってある。
2.6gが1.6gになるような、大きな変化はないけれど、わずかの違いは生じてくる。

私はそう考えているから、針圧計の精度にやたらこだわる人の考えは正直理解できない。
そのとき鳴らすカートリッジの最適バイアス値は、前回の値はあくまでも参考値でしかすぎない。
あとは耳で聴いて、ほんのわずか針圧印加用のウェイトをずらしていくだけであるからだ。

前回の針圧を、0.01gで測ってメモしていたところで、役に立たない。
カートリッジの針圧とインサイドフォースキャセラー量は、固定しておくものではない。

Date: 12月 31st, 2014
Cate: アナログディスク再生

アナログプレーヤーのアクセサリーのこと(その7)

最近のトーンアームの中には、針圧の目盛りのないモノがある。
そういうトーンアームを使うには、どうしても針圧計が必要となる。

針圧の目盛りのないトーンアームは昔もあった。
グレイのトーンアームがそうで、針圧計も昔からあった。
シュアー、キースモンクス、スペックス、ナガオカ、グレース、N&Cなどがあった。
これらはシーソー式で、オモリを移動したりオモリを追加したりして、
シーソーが水平になる値が針圧を示していた。

電子式の針圧計はテクニクスのSH50P1が最初だった。

針圧計の精度にこだわる人がいる。
0.1g単位ではなく0.01g単位で測定できるモノ、
さらにはもう一桁精度の高いモノが望ましい、ということになっている。

なぜ、そこまで精度の高さを針圧計に求めるのだろうか。
私はシュアーの針圧計で充分である。
シュアーでなくともいい、シーソー式の針圧計で何が不足なのだろうか。

そう問えば、精度が……、という答が返ってくる。
たしかにカートリッジの針圧はわずかな変化でも音は変化してくる。

EMTのTSD15の針圧は2〜3g、最適2.5gとなっている。
TSD15を使う時、まず2.5gに針圧をセットして音を聴く。
それから2gにしてみる、次に2.5gと3gの中間値である2.25gにする。
上限の音も聴いてみる。3gにして聴く。
次に3gと2.5gの中間値2.75gの音を聴く。

それでどのあたりの音が望ましいのかあたりをつけるわけだ。
たとえば2.75gの音がよかったのであれば、2.5gと中間値、3gとの中間値の音を聴く。

こうなふうにして最適値をさぐりあてていく。
そうやってある針圧に決めて、その針圧を測る。

その値が2.6gだったとしよう。
カートリッジをいくつも持っていて、頻繁に交換する人は、
次の機会にTSD15をとりつけたときに、針圧計を使い、2.6gにセットするのだろうか。

Date: 12月 8th, 2014
Cate: アナログディスク再生

電子制御という夢(SL10のこと)

ステレオサウンド 55号の編集後記。
     *
 五味先生が四月一日午後六時四分、肺ガンのため帰らぬ人となられた。
 オーディオの〝美〟について多くの愛好家に示唆を与えつづけられた先生が、最後にお聴きになったレコードは、ケンプの弾くベートーヴェンの一一一番だった。その何日かまえに、病室でレコードを聴きたいのだが、なにか小型の装置がないだろうか? という先生のご注文で、テクニクスのSL10とSA−C02(レシーバー)をお届けした。
 先生は、AKGのヘッドフォンで聴かれ、〝ほう、テクニクスもこんなものを作れるようになったんかいな〟とほほ笑まれた。
     *
原田勲氏の編集後記である。
〝ほう、テクニクスもこんなものを作れるようになったんかいな〟
テクニクスにとって最上の褒め言葉だと思う。

これを読んでいたから、強く印象に残っていたから、
SL15ではなくSL10を選択したのは、予算の関係もあってだが、五味先生がそういわれたことを知ったからである。

そして、ここでもうひとつ重要なことは、オーディオの〝美〟である。
音の美ではなく、オーディオの美。

オーディオのデザインについて語っても、
音の美しかみえていない人のデザインについて語る言葉と、
オーディオの美をみている人のデザインについて語る言葉の違い。

オーディオの美と音の美。
私はオーディオマニアだ。
五味先生の書かれたものでオーディオの世界に入ってきた。

だからこそのオーディオの美である。

Date: 12月 8th, 2014
Cate: アナログディスク再生, 型番

電子制御という夢(テクニクスの型番)

テクニクスのアナログプレーヤーの型番はSLから始まる。
ターンテーブルはSPから始まる。

テクニクスのターンテーブルのフラッグシップモデルはSP10。
SP10を頂点として、SP15、SP20、SP25などがあった。
数字が大きくなるほど価格は安くなっていく。

これはアナログプレーヤーも基本的には同じである。
SLの後に続く数字が大きいほど低価格帯のモデルであり、数字が小さくなるほど価格は高くなっていく。

けれどSL10の登場で、このシリーズに関してだけは変更があった。
SL10は10万円、型番の数字と定価が一致している。
上級機のSL15は15万円で、SL7は7万円。これもか型番の数字と価格の一致。
だから型番の数字が大きいほど価格は高くなるという、それまでの型番のつけ方は逆になっている。