私にとってアナログディスク再生とは(デザインのこと・その34)
ステレオサウンド 51号の五味先生のオーディオ巡礼にも、
フィデリティ・リサーチのFR7は登場している。
51号の訪問先はH氏。
数年後にステレオサウンドの原田勲氏だと知ることになるが、
このときはまだH氏がどういう人なのかは知らなかった。
五味先生の知りあい、それもかなり親しい知りあいだということしかわからなかった。
このH氏が、EMTの927DstにFR7を取りつけられている。
スピーカーシステムはヴァイタヴォックスのCN191、アンプはマランツのModel 7と9のペア。
ここで鳴っていた音がどうでもない音であればFR7のことが気になることはなかった。
五味先生はH氏の音について、こう書かれている。
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〝諸君、脱帽だ〟
ショパンを聴いてシューマンが叫んだという言葉を私は思い出した。このあと、モニク・アースなるピアニストの演奏で同じパバーヌを聴いたためかも知れない。さらにバックハウスでベートーヴェンの作品一〇九、ブタペスト・カルテットで作品一三一、魔笛をクレンペラーで、グリュミオーのヴァイオリンでヴィオッティの協奏曲、更にはヴィヴァルディのヴィオラ・ダ・モーレなど、こちらの好みを知っていて彼は私の気に入りそうなレコードばかり掛けてくれたが、たいがい口のわるい私を承知でこれだけ、こちらの聴き込んだ曲を鳴らせるのは、余程、自信があったからだろうが、それがけっして過信ではないことを私は認めた。この「オーディオ巡礼」では、奈良市南口邸の装置で、サン=サーンスの交響曲第三番の重低音を聴いて以来の興奮をおぼえたことを告白する。
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FR7が並のカートリッジではないことがわかる。
だから51号を読んでからというもの、瀬川先生のFR7の評価が気になっていた。
だがFR7に対して、瀬川先生は評価されていない──、というよりも無視にちかい。
なぜなのか。
いまとなっては確かめようはないが、FR7のカタチにあると私は思っている。
47号の新製品紹介のページで初めてFR7の写真を見た時もそう感じていた、
でもこの時は、まだぼんやりとした感じであった。
それからしばらくしてFR7の音を聴くことができた、ステレオサウンドの試聴室である。
音については書かない。
FR7を聴いたということは、FR7がトーンアームに取りつけられたところを見たということである。
ここで47号で感じていたものをはっきりと認識できた。
そして、やっぱりそうだったのかもしれない、ともおもっていた。