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Date: 6月 26th, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(続×十五・原音→げんおん→減音)

そういえば山中先生もアルテックのA5をメインスピーカーにされていた時期がある。
ステレオサウンド 16号の五味先生のオーディオ巡礼に載っている。
写真でみるかぎりは決して狭い部屋ではない山中先生のリスニングルームではあるけれど、
アルテックのA5には狭い空間のように、その写真はみえる。

五味先生も書かれている。
     *
私は辞去するとき山中さんに言ったのだ。あなたにはもっと広いリスニング・ルームを造ってあげたいなあと。心から私はそう言った。
     *
だからといって、山中先生は「劇場ふうな音楽」を鳴らされていたわけではなかった。
五味先生に、最初にかけられたレコードは「かえって哀愁のある四重唱」で、
次にかけられたのは「ピアノを伴う独唱」である。

そして五味先生はマーラーの交響曲を聴かせてほしい、といわれている。
ショルティによる「二番」のあとにヨッフムによるブルックナーの交響曲を聴かれている。
     *
同じスケールの巨きさでもオイゲン・ヨッフムの棒によるブルックナーは私の聴いたブルックナーの交響曲での圧巻だった。ブルックナーは芳醇な美酒であるが時々、水がまじっている。その水っ気をこれほど見事に酒にしてしまった響きを私は知らない。拙宅のオートグラフではこうはいかない。水は水っ気のまま出てくる。さすがはアルテックである。
     *
こういうブルックナーの交響曲が響いたのはアルテックのA5だからでもあるのだが、
山中先生の鳴らし方によるところもまた大きいのはいうまでもない。
けれど、それでもアルテックのA5だから、こういう芳醇な美酒として響かせるのである。

そういうアルテックのA5をネルソン・パスは選んでいるのである。
マーチンローガンのコンデンサー型は、
水っ気を、どちらかといえば水っ気ではなく水(それも少し味気ない水)にして出すスピーカーといえよう。
そういう性格のスピーカーから正反対ともいえる性格のA5を使っている。

この水っ気を芳醇な酒として響かせる性格は、ラッシュモアにも引き継がれている、と私は思っている。

Date: 6月 25th, 2012
Cate: 「オーディオ」考

「虚」の純粋培養器としてのオーディオ(その2)

こうやって書いていくという行為は、何かを掘り起している──、
書いている本人はそう思っている。
そして、「何か」とは事実、真実、そういったものであるはずだとも思っている。

けれど本人はそう思っている行為でも、もしかすると何かを埋めている行為でもあるかもしれない。
そんなことを思うことがないわけではない。

見当違いのところを掘り起していれば、
掘り起すことで出た土をどこかに盛ることで、そこにある「何か」を埋めている……、
そういうことがない、と果していえるだろうか。

書くという行為と音を良くしていくという行為に似ているところ、同じところがある、と感じている。
音を良くしていこうと思い、あれこれ試行錯誤しながら音は良くなっていく──。

ここで、けれども……、とおもう。

Date: 6月 25th, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(続×十四・原音→げんおん→減音)

ネルソン・パスがスレッショルドを創立したときからのパートナーでありデザイナーでもあるルネ・ベズネも、
同時期パスと同じマーチンローガンのコンデンサー型スピーカーを使っている。

その後パスとベズネのスピーカー遍歴がどうなっていったのか、その詳細は知らない。
パス・ラボラトリーズからは数年前に4ウェイのアンプ内蔵型のスピーカーシステム”Rushmore”が登場した。

15インチ口径のウーファー、10インチ口径のミッドバス、6インチ口径のミッドハイ(ここまではすべてコーン型)、
スーパートゥイーターのみリボン型を採用したラッシュモアは、
80Wのアンプを1台、20W出力のアンプを3五台搭載したマルチアンプ駆動でもある。
これら4台のアンプの回路は、低域を受け持つ80WのアンプのみXAシリーズと同じ構成で、
3台の20WのアンプはALEPHシリーズとなっている。

ラッシュモアの資料には各ユニットの出力音圧レベルが記載されている。
ウーファーが97dB/W/m、ミッドバスとミッドハイ、スーパートゥイーターは98dB/W/mと、
ユニットそのものの能率がかなり高いものが選ばれている。
これらのユニットをラッシュモアでは-6dB/oct.というゆるやかなカーヴでクロスさせている。
(スーパートゥイーターのローカットのみ12dB)

ラッシュモアが登場したとき、紹介記事の多くにはネルソン・パスがラッシュモアを開発するきっかけにもなり、
パス自身が愛用していたスピーカーとしてアルテックのA5の名があげられていた。

A5について改めてここで書く必要もないだろう。
古典的な高能率の、極端に広くない劇場であれば、
このスピーカーだけで十分通用するだけの朗々とした音を楽しませてくれるスピーカーシステムである。

1970年代、日本のオーディオマニアはこのA5や弟分にあたるA7を家庭に持ち込む人は少なくなかった。
むしろジャズの熱心な聴き手のあいだでは、それが当然のことように受け止められていた。

A5はもちろん、A7も日本の住宅環境では大きすぎるスピーカーシステムであり、
A5、A7にとって日本の住宅環境は極端に狭すぎる音響空間でもある。
それにA5、A7の仕上げは家庭内という近距離で眺めるスピーカーシステムでもない。
あくまでも業務用の仕上げである。
それでもA5、A7を導入する人はいた、少なからぬ人が、あの時代にはいた。

Date: 6月 24th, 2012
Cate: 「オーディオ」考

「虚」の純粋培養器としてのオーディオ(その1)

書くことが幾つもある時に限って、なにか新しいテーマで書きたくなる。
やめとけばいいのに、と自分でも思いながらも、とにかく新しいテーマを考え出すために、
以前書いたものをランダムに拾い読みすることもある。

そんなことをせずに、いま書いているテーマの先をさっさと書けばいいのに……、とは思っても、
テーマを増やしたいときは、ときに無理してでも増やしてきた。

自然に、というか、ふいに新しいテーマが浮ぶときもある。
こうやってなかば無理矢理に新しいテーマを考え出すときもある。

今日のタイトルは、「虚」の純粋培養器としてのオーディオ。
そうやってつけたタイトルである。

2010年12月に、「虚」の純粋培養ということばを使っている。
1年半前に、そうおもった。いまもそうおもっている。

だから、タイトルを、「虚」の純粋培養器としてのオーディオ、としたわけだが、
いざタイトルにしてみて気がつくことがある。

本当にオーディオが「虚」の純粋培養器であるとすれば、
オーディオを追求するということは、どういうことなのかを、もう一度考え直さなければならないことになる。

「音は人なり」とこの、「虚」の純粋培養器としてのオーディオは相反することになりはしないだろうか。
そうも考えられるわけだが、それでも、いまはまだ直感でしかないし、おぼろげながらでしかないが、
決して、このふたつのことは矛盾しないはずだ。

Date: 6月 23rd, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その15)

何度か書いているようにfacebookでaudio sharingという非公開のグループをやっている。
現在94人(私も含めて)の方が参加されていて、
このブログへのコメントはfacebookにてもらうことが多くなっている。

今朝、昨夜書いた「D130とアンプのこと」の(その14)へのコメントがあった。
ヤマハのB4の出力インピーダンス(ダンピングファクター)の連続可変についての記事のことだった。
ステレオサウンドでは47号の新製品紹介でB4は登場しているけれど、
この機能についての音の変化にはふれられてなかった。
その後もB4の、この機能についての記述はステレオサウンドにはなかった。

コメントには長岡鉄男氏のダイナミックテストからの引用があった。
1978年のFM fanからの引用ということになる。
     *
出力インピーダンスのツマミを動かすと、かなりの音色変化があり、右へ動かせばゆったり、おっとり、左へ動かせばしゃっきり、がっちりとなる
     *
ということはスライドコントロールを右へ動かせばB4の出力インピーダンスは高くなり、
つまりダンピングファクターは小さくなり、
中央よりも左へ動かせば出力インピーダンスはマイナスへと変化していったことがわかる。

コメントしてくださったMさんはJBLの4343をお持ちで、B4も所有されている。
ご自身の音の印象も長岡氏の印象と同じとのこと。

B4は、この出力インピーダンス可変機能の他に、出力段のA級/B級の動作切替えもできる。
A級動作時は30W、B級動作時は120Wの出力をもっている。

同じ回路構成の同じアンプでもA級動作とB級動作の音は基本的なクォリティは同一であっても、
動作を切替えれば微妙な音のニュアンスにおいては差がある。
A級動作の音とB級動作の音とどちらがいいかをではなく、B4はひとつのアンプで、
出力段の動作切替え、出力インピーダンスの可変機能、
このふたつの機能をうまく利用することで、音の変化はかなり広く調整が利き、
積極的な使い方が可能といえば、そういえるアンプである。

こういう機能は不要だ、こんな機能にお金をかけるくらいならば、
その分の費用を音質向上に向けてほしい、とか、
それらの機能を省いて価格を安くしてほしい、という意見もあると思う。

でも、使い手がその気になれば、B4のように一台でそうとうに楽しめるアンプという存在は、
やはりいつの時代にも存在してほしい、と私は思っている。

楽しむことは学ぶことでもあるからだ。

Date: 6月 22nd, 2012
Cate: D130, JBL

D130とアンプのこと(その14)

管球式アンプではいくつか搭載されているモデルがあったダンピングファクターの可変機能だが、
トランジスターアンプとなると、あまり多くないのではないか。
私が知らないだけなのだろうが、
私が思い出せるダンピングファクターを可変できるトランジスター式のパワーアンプは、
ヤマハのB4とマークレビンソンのML3、ML9ぐらいである。

マークレビンソンの2機種は連続可変ではなくスイッチによる3段階(HIGH、MID、LOW)切替えである。
具体的に、どの程度ダンピングファクターを変化させているのかは発表されていない。
ML9は聴いたことがない。
ML3はステレオサウンドの試聴室で一度か二度聴いているけれど、
ダンピングファクターを切替えてみることをしてなかったように記憶している。
いま思えばもったいないことをしたと思う。

ただステレオサウンドのバックナンバーを読み返しても、
ML9、ML3でダンピングファクターを変えての試聴記は載っていない。

あくまでも推測にすぎないが、ML9、ML3のダンピングファクターの変化幅はそれほど大きくないような気がする。
そのためあまり効果がみられず、誰もふれなかったのかもしれない。

ヤマハのB4はダンピングファクターは発表されている。
正確には発表されているのは出力インピーダンスで、1Ωから-1Ωまで連続可変となっている。

出力インピーダンスがもっとも高い値(1Ω時)にはダンピングファクターは8、
フロントパネルにあるスライドコントロールを中央にもってくれば、
出力インピーダンスは下りダンピングファクターの値は高くなる。
そして中央をこえてさらにツマミを動かすと出力インピーダンスはマイナスになっていく。
いわゆる負性インピーダンス駆動となる。

1988年にヤマハはAST(Active Servo Technology)方式を発表した。
このASTは別の会社が商標登録しており、すぐにYST(Yamaha Active Servo Technology)と変更されたが、
このAST方式はバスレフ型スピーカーと負性インピーダンス駆動を組み合わせたものだ。

ヤマハB4の、この機能による音の変化はどうだったのだろうか。
機会があれば、いまこそ試してみたいと思っている。
それもネットワークを内蔵した一般的なスピーカーシステムだけでなく、
フルレンジユニットを、ネットワークを介することなくB4と直接結線して、
ダンピングファクターを変えた音を聴きたい。

Date: 6月 21st, 2012
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その5)

1970年代にくらべるといまのケーブルの品種は、いったい何倍程度に増えたのだろうか。
ケーブルの会社もずいぶん増えたし、まだ増え続けている。

昔はオーディオ店に行ってはカタログを集めてきていたし、
オーディオ雑誌に載る広告も、いまとはずいぶん違ってスペックをきちんと表示してあった。

ケーブルは基本的に2つの導体から構成される。
つまりそこには静電容量が存在することになる。
だから1970年代のスピーカーケーブルのカタログには1mあたりの静電容量を載せているものが多かった。
いまは、どうなのだろうか。静電容量を表示しているケーブルは全体の何%なのだろうか。

静電容量はケーブルを長くすればするほど増えてくる。
静電容量という言葉からわかるようにコンデンサーと同じなのだから、
平行する金属の面積が増えれば増えるほど容量は増えるし、
その距離が近くなればなるほど、また容量は増えていく。

だから1mのケーブルと2mケーブルとでは、
同じケーブルであれば2mだと1m時の倍の静電容量になる。

30mになれば1mのときの値の30倍になる。
この静電容量はパワーアンプの出力に対して並列に、負荷としてはいることになる。
コンデンサーの性質として高域にいくにしたがってインピーダンスは低下していく。
静電容量が大きいほどパワーアンプにとっては負荷として厳しいものとなってくる場合もある。

30mもスピーカーケーブルを延ばすということは、こういうことも考えられるわけだが、
おそらく30mのスピーカーケーブルを提案した本田一郎氏も、
それを受け入れて試した中野英男氏も、スピーカーケーブルのこういう性質はわかっていたはず。

ここで思い出してほしいのは、本田氏は太いケーブルを30m引き延ばしたわけではない。
中野氏が書かれているように細いケーブル、ということだ。

Date: 6月 21st, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(続×十三・原音→げんおん→減音)

スレッショルドの800Aが登場したころ、
カナダのデイトンライトがガス入りのコンデンサー型スピーカーシステムを作っていた。
このガスのおかげで従来のコンデンサー型スピーカーよりも高圧をかけることが可能になったとかで、
コンデンサー型としては異例なほどのエネルギー感の再現が可能であった、らしい。

ただデイトンライトのXG8はパワーアンプをそうとうにより好みするスピーカーだったようで、
XG8を満足にドライヴできるアンプは、当時はほとんどなかった、ともきいている。

スレッショルドの800Aの開発時のエピソードして、ネルソン・パスが語っている。
パワーアンプにとって厳しい負荷であったXG8をパラレル接続にしている人を紹介されたパスは、
800Aの試作機を携えてサクラメントからサンフランシスコまで車で向ったそうだ。

800Aの試作機の保護回路の電流制限値は15Aに設定していたところ小音量時でもすぐに保護回路が働いてしまう。
それで一旦サクラメントにもどり、25Aに設定しなおしてもうまくいかない。
そうやって改良を800Aの試作機にくわえていくことで、最終的には保護回路を外すことが可能になり、
XG8のパラレル接続を問題なくドライヴできるだけでなく、
音質的にもそれまでのアンプでは得られなかったレベルに達することができた、そうだ。

こういうこともあって800Aはアメリカではデイトンライトの使い手から評価を寄せられたそうで、
またデイトンライトのXG8のために800Aは開発されたという人もいたそうだ。

このことと、STASIS1がカッティング用のアンプとして使われたこと、
さらにSTASISシリーズの1984年ごろのS/500IIは核磁気共鳴を測定するための機器として、
ある大学の研究室に20台納められた実績をもつこと、
これらのことからいえるのは、パスがいたころのスレッショルドのアンプは、
条件の厳しい負荷を問題なくドライヴできる性能を持っていた、ともいえる。

ネルソン・パスがどんなシステムを使っていたのか。
スレッショルド時代は、マーチンローガンのコンデンサー型に、
10インチ口径のウーファーを8本を使ったサブウーファーを足し、しかもこのウーファーにはMFBをかけている。

これが1984年ごろのことだ。

Date: 6月 21st, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(続×十二・原音→げんおん→減音)

スレッショルドのSTASIS1の出力段に使われている出力トランジスターの数は72個だ、とすでに書いた。
電圧増幅段に使われているトランジスター、FETの数をあわせると増幅部だけで85個になる。
STASIS1はモノーラル仕様で、1台の重量は48kg。
この規模で、200Wの出力を実現し、当時テラーク(と記憶している)のカッティング用アンプにも採用されている。

くり返しになってしまうが、
STASIS1はスレッショルド時代におけるネルソン・パスの傑作であり頂点でもあった。

このSTASIS1をつくった男が、ほぼ30年後に発表したSIT1は、STASIS1と同じモノーラル仕様であっても、
ずいぶんと規模は異るパワーアンプである。

輸入元のエレクトリのサイト、ステレオサウンド 182号の小野寺弘滋氏による記事を読めばわかるように、
SIT1に使われているトランジスターの数はわずか1。1石アンプである。
STASIS1の1/80以下である。
重量は13.1kgと、STASIS1の1/3以下である。

これらのことから想像がつくようにSIT1の出力は8Ω負荷で10Wと、STASIS1の1/20。
ちなみにダンピングファクターはSTASIS1は100以上(DC〜20kHz)となっている。
可聴帯域においてほぼフラットということは、トランジスターアンプではそれほど多くはない。
ダンピングファクター100ということは出力インピーダンスは0.08Ωということになる。
SIT1は出力インピーダンス:4Ωと発表されているから、ダンピングファクターは8Ω負荷時において2。
4Ω負荷だと、STASIS1は50以上、SIT1は1である。

こうやってスペックだけを比較していくと、
STASIS1は物量を投入したトランジスターアンプそのもの、
SIT1は直熱三極管のシングルアンプ、それも無帰還のそれ、とも思えてくる。

このふたつのアンプを、ネルソン・パスは設計している。

Date: 6月 20th, 2012
Cate: High Fidelity

ハイ・フィデリティ再考(続×十一・原音→げんおん→減音)

ネルソン・パスの新しい会社パスラボラトリーズのデビュー作ALEPH 0は,
それまでのスレッショルドのパワーアンプとは外観・機構と回路ともに、
まるっきりといっていいほど異ったモノだった。

ALEPHシリーズの特色は出力段にある。
スレッショルド時代のパワーアンプの特色も出力段にあったわけだが、
ALEPHシリーズの特色とスレッショルド時代の特色は、同じ人間が考えついたものとはすぐには思えぬほど違う。

基本的にトランジスターアンプの出力段はコンプリメンタリープッシュプルである。
いわば+側のトランジスターと−側のトランジスターのペアから構成されていている。
これはほぼすべてのトランジスター式パワーアンプではそうなっている。

ごく一部例外的な回路構成のアンプがあり、そのひとつがSUMOのThe Goldであり、ALEPHシリーズである。
だからといってThe GoldとALEPHの回路構成が似ているかといえば、また異るわけだが。

現在のパスラボラトリーズのラインナップにはALEPHはなくなっている。
Xシリーズ、XAシリーズがある。
これらのシリーズの回路については不勉強でどうなっているのかについてはほとんと知らない。
ALEPHに採用された回路ではないことは確かである。

ALEPHに興味を持っていた私は、その点すこしがっかりしていたのだが、
ファーストワットからSIT1とSIT2を、ネルソン・パスは出してきた。
ALEPHの回路とSITの回路はまた異るものなのだが、
それでもこのふたつのシリーズに流れている考え方には共通したものを感じる。

そしてパスラボラトリーズのXシリーズ、XAシリーズとSITシリーズの違いは、
スレッショルドのパワーアンプとALEPHシリーズとの違いにも似ているもの感じる。

ひとりのアンプ・エンジニア(ネルソン・パス)がこれらのアンプをつくり出している。
ここにオーディオの世界の広さと奥行の深さを感じることができる。
そして個人的には、ALEPHとSITの両シリーズには、減音に関して通じるものを感じとれる。

Date: 6月 20th, 2012
Cate: audio wednesday

第18回audio sharing例会(2002年7月4日)

来月のaudio sharing例会は、
2週間前にも告知したようにちょうど10年目になるので、2002年7月4日のことがテーマです。

2002年7月4日のこと、といわれても「何なの?」「何のことなの?」とわからない方もおられると思いますが、
あえて書きません。わかってくれる方が来てくださればいい、と思っているからです。

場所はいつもと同じ四谷三丁目の喫茶茶会記のスペースをお借りして行います。

Date: 6月 20th, 2012
Cate: ジャーナリズム

附録について(その1)

昨年末に出たステレオ誌は附録が話題になった。
Dクラスアンプの完成基板とACアダプターがついてきたわけで、
しかもDクラスアンプはラックスの開発によるものだから、
これだけのものがついてきて、いつもの定価よりは倍程度になっていても、お得な買物といえるだろう。
売り切れた書店も多かったようだ。

ステレオはその前からスピーカーユニットを附録としていたことがあった。
今夏もまたスキャンスピーク製のスピーカーユニットが附録となる。
ステレオを出版している音楽之友社では音楽の友にもバッグを附録としている。

附録がついている、ついてくるのは音楽之友社の出版物ばかりでなく、
いま書店に並んでいるオーディオベーシックにはインシュレーターが附録となっているし、
夏に出るDigiFi(ステレオサウンド)には、USB入力のDクラスアンプが附録となる。
ステレオサウンドではHiViにUSBケーブルを附録にする予定。

女性誌の附録の流れが、ついにオーディオ雑誌にも波及してきた、という感じで、
附録のおもしろさを喜ぶ人もいれば、附録に対して否定的な受け止め方もする人もいよう。

オーディオ雑誌の附録は、Dクラスアンプにしても、スピーカーユニットにしても、安いものではない。
本よりも高いものが附録となっている。
だから附録がついている号は、通常の定価よりも高くなる。
それでも附録そのものを欲しいと思っている人にとっては、充分お得な買物だから、通常の号よりも売れるだろう。

でも附録を必要としない人のために、附録なしでも売っているのか、と気になる。
いま売っているオーディオベーシックは、共同通信社のサイトをみるかぎりは、附録なしでは売っていないようだ。
通常1500円のオーディオベーシックを、
今号に限っては附録は要らない、という人でも2000円出して購入しなければならない。
わずか500円の差だから、ともいえる。

でもアンプやスピーカーユニットが附録となると500円程度の差ではなくなる。
DigiFiは通常1300円が2980円になる。これは附録なのか、と思ってしまう。

附録の波は、いまのところステレオサウンド誌にはまだ及んでいないように見える。
でも、オーディオ雑誌で──私がオーディオ雑誌を買うようになってから、ではあるが──最初に附録をつけたのは、
ステレオサウンドだった。
1978年12月に出た49号に、1979年の卓上カレンダーがついていた。
それまでのステレオサウンドの表紙からいくつかを選んでカレンダーに仕上げたものだった。
本の定価は1600円と、いままでと同じだった。

こういう附録は素直に嬉しいものである。
こういう附録の方が私は附録らしくて好感が持てるし、いまもつけてくれたら、と思う。

Date: 6月 19th, 2012
Cate: ロングラン(ロングライフ)

ロングランであるために(その2)

「永遠の価値」とまでいってしまうと、それはもう無理なことではあるけれど、
永く価値あるモノ、価値の変らないモノはあるのだろうか──。
あるとしたら、いったいどういうモノなのか、どういう条件を満たしているモノなのか、
こんなことをステレオサウンドにはいったばかりの頃、先輩編集者のNさんと何度か話したことを思い出す。

彼は瀬川先生のEMT・927Dstを譲ってもらい使っていた。
私もそのころから927Dstが欲しかったけれど手が出せる価格では、もうなくなっていた。
それにいきなり927Dstというのも、
たとえお金があったとしても、段階を踏むこともまた大切であるという考えからみると、手を出すべきではない。
それで930stのトーレンス版101 Limitedを、なんとか購入したわけだが、
このふたつのEMTのプレーヤーは、その価値がこれから先も変らないのか、のも話題になった。

1980年代前半、すでにEMTはダイレクトドライヴの950や948を出していた。
927Dstも930stも製造中止になっていた(はず)。

927も930も原型はかなり古くからある。
しかもほとんど昔から変っていない。
イコライザーアンプが真空管のモノーラルからステレオ仕様になり、トランジスター化されたり、
トーンアームがオルトフォン製からEMT製に変ったりはしているものの、
大きく見た場合、旧態依然のプレーヤーともいえる。

世の中のプレーヤーは大半はダイレクトドライヴであり、クォーツロックまで搭載されていた。
EMTと同じ西ドイツのデュアルも、EMT同様、それまではリムドライヴを一貫して採用してきていたけれど、
ダイレクトドライヴ式のプレーヤーに切り換えていた。
ベルトドライヴはかろうじていくつか現役の製品があっても、
リムドライヴは過去の方式となっていた。

そんな時代に大金を払って、旧型のリムドライヴのプレーヤーを購入したのは、
もちろんEMTのプレーヤーでなければ聴くことができない音の良さ、持ち味に惚れてのことである。
とはいうものの、決してそれだけではなかった。

Date: 6月 19th, 2012
Cate: ケーブル

ケーブルはいつごろから、なぜ太くなっていったのか(その4)

「音楽 オーディオ 人びと」の著者、そしてトリオの会長であった中野英男氏が、
ヴァイタヴォックスのCN191を導入されたのは昭和46年5月とある。
それから「五年間私の部屋にあった」わけだから、
本田一郎氏がルーカスのケーブルを持ち出してきたり、
さらにもっと細いケーブルを30m這わせたという話は、1971年から76年にかけてのこと。

このころはマークレビンソンのHF10Cも登場していなかったし、
ケーブルによる音質の変化がオーディオ雑誌でも話題にのぼるようになってきたころと重なる。

ケーブルによる音の違いを言及したのは江川氏だということになっているが、そうとは思えない。
古い本を読んだり、大先輩の方々に話をきいてみると、
かなり以前からケーブルによって音が変化することは当然のこととして認識されていたことがわかる。

どのくらい前から、そうだったのかといえば、かなり古くから、のようである。
菅野先生の著書「新レコード演奏家論」の巻末にインタビュー記事が載っている。
タイトルは「菅野沖彦 レコード演奏家としての70年」で、聞き手はステレオサウンド編集部。

この記事の中で、菅野先生が最初に組まれたシステムの話が出てくる。
菅野先生が高校生のときで、自作当初はまだ78回転のSP盤。
すこし菅野先生の話を引用しておく。
     *
パワーアンプは、3極管やビーム管をいろいろ使いました。2A3から始まって6A2、6L6、6B4Gなどという球をプッシュプルで使い、最後のアンプは5932という球だったかと思います……。巨大な電源トランスを使っていました。ダイナミックスの12インチ・ウーファーはフィールド型でしたから、5Z3や80の整流管でフィールド・エキサイターも作りました。別のシャーシに独立させたプリアンプは12AX7と12AU7をズラッと並べた直流点火方式です。あのこはレコード会社によってイコライザーカーブが異なりましたから、あらゆるレコード会社のイコライザーに合わせられるようにターンオーバーとロールオフを個別のロータリスイッチでそれぞれ組み合わせて調整するというものでした。端子類はRCAプラグやXLRキャノンプラグもなかった時代ですから、多治見というメーカーの多ピンのもの、金属のネジで確実に止められるターミナルにしたり、ケーブルも、太いゴムのキャブタイヤケーブル。雑誌からの知識や先輩が教えてくれる、なるべく良さそうなものを選んで電源とフィールド・エキサイター類とプリアンプ部やパワーアンプをつないだんです。
──ケーブルにも凝られていたのですか。
凝ると言っても、今のケーブル事情とはまったく違いますがね。オーディオコンポーネントなどという商品はまったくない時代ですから。近頃のオーディオファイルのケーブルやターミナルに熱中している状況とはおのずと違うでしょう。いずれにせよあのころとしては、考えつくありとあらゆる部分にこだわったものでした。
     *
菅野先生は1932年の生れだから、高校生の時は1947年ごろから1950年ごろとなる。
その時代で、すでにケーブルによる音の違いは認識されていたことが読み取れる。
ただ、いまほど大騒ぎはしていなかっただけのことだ。

いまのケーブルの在り方は、正直なところ、行き過ぎていると感じている。
それでもケーブルによる音の違いを否定するわけではない。
どんなケーブルでも、ケーブルを変えれば音は大なり小なり変る。
SP盤の時代から、そうであるように。

Date: 6月 18th, 2012
Cate: 40万の法則, D130, JBL, 岩崎千明

40万の法則が導くスピーカーの在り方(D130と岩崎千明氏・続余談)

RiceとKelloggによるコーン型スピーカーユニットがどういうものであったのか、
少しでも、その詳細を知りたいと思っていたら、
ステレオサウンド別冊[窮極の愉しみ]スピーカーユニットにこだわる-1に、高津修氏が書かれているのを見つけた。

高津氏の文章を読みまず驚くのは、アンプの凄さである。
1920年代に出力250Wのハイパワーアンプを実現させている。
この時代であれば25Wでもけっこうな大出力であったはずなのに、一桁多い250Wである。
高津氏も書かれているように、おそらく送信管を使った回路構成だろう。

このアンプでライスとケロッグのふたりは、当時入手できるあらゆるスピーカーを試した、とある。
3ウェイのオール・ホーン型、コンデンサー型、アルミ平面ダイアフラムのインダクション型、
振動板のないトーキング・アーク(一種のイオン型とのこと)などである。

これらのスピーカーを250Wのハイパワーアンプで駆動しての実験で、
ライスとケロッグが解決すべき問題としてはっきりしてきたことは、
どの発音原理によるスピーカーでも低音が不足していることであり、
その不足を解決するにはそうとうに大規模になってしまうということ。

どういう実験が行われたのか、その詳細については省かれているが、
ライスとケロッグが到達した結論として、こう書かれている。
「振動系の共振を動作帯域の下限に設定し、音を直接放射するホーンレス・ムーヴィングコイル型スピーカー」
 
ライスとケロッグによるコーン型スピーカーの口径(6インチ)は、
高域特性から決定された値、とある。エッジにはゴムが使われている。
しかも実験の早い段階でバッフルに取り付けることが低音再生に関して有効なことをライスが発見していた、らしい。
磁気回路は励磁型。
再生周波数帯域は100Hzから5kHzほどであったらしい。

実用化された世界初の、このコーン型スピーカーはよく知られるように、
GE社から発売されるだけでなく、ブラウンズウィックの世界初の電気蓄音器パナトロープに搭載されている。

以上のことを高津氏の文章によって知ることができた。
高津氏はもっと細かいところまで調べられていると思うけれど、これだけの情報が得られれば充分である。
Rice & Kelloggの6インチのスピーカーの周波数特性が、やはり40万の法則に近いことがわかったのだから。