Date: 2月 7th, 2012
Cate: 快感か幸福か
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快感か幸福か(その13・余談)

ステレオサウンド別冊「JBLのすべて」に、
朝沼予史宏、井上卓也、倉持公一、菅野沖彦、柳沢功力、佐久間輝夫、
6氏による「私とJBL」というエッセーが載っている。

朝沼さんのところには、「岩崎さんのリスニングルームがJBL研究の場だった」とつけられている。
そこにはこうある。
     *
大学を出てからマイナーなジャズ専門誌の編集者になり岩崎さんと親しくお付き合いさせていただくようになったが、肝心のJBLに関してはずっと傍観者のままでいた。最初はジャズ喫茶だったのが、社会人になってからは岩崎さんのリスニングルームがJBL研究の場だった。そのジャズ雑誌は勤めて間もなく廃刊になり、編集者仲間が集まって新しいジャズ雑誌を創刊した。その関係で岩崎さんとは、益々親しくさせていただいた。しかし弱小雑誌の我々の原稿は常に後回しでなかなか原稿が上がらず、月末になると、よくお宅に泊まり込みになった。岩崎さんからは「待っている時は、遠慮なく音を聴いても構わない」というお墨付きをもらい、これ幸いに聴きまくった。岩崎さんの装置を身近で真剣に聴けたのは、たいへんな幸運だった。
     *
朝沼さんが岩崎先生のリスニングルームで聴かれていた時は、ひとりだったはず。
岩崎先生は別の部屋で原稿を書かれていたことだろう。
私が山中先生のリスニングルームで原稿が上がるのをもっているあいだ、音を聴いていたのと同じ体験を、
朝沼さんは岩崎先生のリスニングルームで何度も体験されていたわけだ。

これは編集者の、いわば特権かもしれない。
それもこの時代、つまりインターネットなどなかった時代、原稿は手書きで編集者は取りに行っていた。
だから、こういう体験がときに味わえたのである。

いまはパソコンで原稿を書き、そのままメールに添付して送信。
これが悪いこととは思わない。時間の節約になっているし、原稿をなくしてしまうこともなくなる。
でも、朝沼さんや私が体験できたこととは無縁になってしまった。

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