Posts Tagged サンスイ

Date: 7月 25th, 2014
Cate: チューナー・デザイン

チューナー・デザイン考(パイオニア Exclusive F3・その16)

パイオニアはExclusive F3の前年(1975年)に、TX9900を出している。
TX9900もダイアルスケールの上にメーターが配置されている。

ステレオサウンド別冊HI-FI STEREO GUIDEのバックナンバーをひっぱり出している。
すべての号が手元にあるわけではないが、
1976年ごろからダイアルスケールの上にメーターというチューナーが増えてきている。

トリオは1975年にKT7500でメーターを上にもってきている。
その後、トリオのチューナーはメーターが上にくるモデルが増えている。

テクニクスも1977年に発売したブラックパネルのチューナー、
ST8075、ST8080でメーターを上にしている。

サンスイも大ヒットとなったプリメインアンプのAU607、707、907とペアになるTU707(1977年)がそうだ。
オーレックスのST420も、Exclusive F3と同じ1975年に登場している。

それまで何気なく見てきていたチューナーのデザインが、ここ数年気になってきているし、気づくことがある。
だから古い資料、カタログ誌を眺めては確認している。

ダイアルスケールの上にメーターをもってきた最初メーカーはどこなのか。
HI-FI STEREO GUIDEでわかる範囲では、どうもソニーのST5000Fがそのようだ。

ST5000FはHI-FI STEREO GUIDEによれば、昭和42年10月発売となっている。
1967年──、Exclusive F3の約10年前、
すでに50年近く前から、ダイアルスケールの上にメーターを配置したチューナーが存在していたことに気づいている。

Date: 7月 18th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(補足としての、その3)

サンスイの今回の件について、(その2)までで(その3)以降は書く予定ではなかった。
けれどfacebookのaudio sharingのグループにコメントをもらった。
そのコメントへの返信の意味で、これを書いている。

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」に対するサンスイとティアックの違いについて書いた。
タンノイ号にお金を出したティアックの経営陣が立派で、
そうでなかったサンスイの経営陣は立派ではない、なんてことは思っていない。
そんなことを言いたかったわけではない。

ただ、編集者としてこういうことがあった、
一方ではこうだった、ということを書いて、
その違いが私にとっては、今回の件と決して無関係ではない、と思っている、というだけである。

この見方に賛同される人、納得される人、そんなバカな! と思われる人、
いろいろな受けとめ方をされていい。
何も私が今回書いたことに納得してほしいわけではない。

あくまでもひとつの意見でしかない。

それでも何に対してお金を出すのか出さないのか。
このことはきちんと見ていくべきではないか、とは思っている。

山水電気は「世界のオーディオ」の数年後に、あることにかなりの大金を出している。
「世界のオーディオ」とは比較にならぬほど大きな額である。
この数年後とは、1987年のことである。

1987年にオーディオをやっていた人ならば、あれか、と思い出されるだろう。
まだその頃はオーディオはやっていなかったという人でも、いまはインターネットですぐに調べられる。

この1987年のことについては、まったく別のテーマで書いていくかもしれない。
書かないかもしれない。

私の中では、書かない言わないで、墓場までもっていくことがいくつかある。
いうべきことでないことを知っている。
それらのことについては語ることは絶対にない、といえる。
だが、そのことを知っているから書けることもある。

それからいつか書いてもいい、と思えるときがきたら書こう、と決めているいくつかのことがある。
1987年のことは、ここに入っている。

山水電気の今回の件に関しては、ここまでである。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(その2)

「世界のオーディオ」が刊行されていたころは、ちょうどJBLが日本市場で爆発的に売れていた時期でもある。
ペアで100万円をこえる4343が、信じられないほど売れていた時期だけに、
JBL号が出ないのがなんとも不思議だった。出ていたら売れていたはずなのに……。

だから、この疑問もステレオサウンドで働くようになって、
編集部の先輩にきいた「なぜJBL号を出さないんですか」と。

返ってきた答は、編集という仕事についたばかりで、
出版がどういうものなのかもほとんどわかっていなかった私には、いささか驚きのものだった。
「サンスイがお金を出さないからだよ」

いわれてみると「世界のオーディオ」には広告が載っていない。
入らない、ともいいかえられる。

どのメーカー、輸入商社が、他社だけを取り上げている別冊に広告を出すだろうか。
広告がどれだけの比重なのかをまったく考えていなかった私は、
いわれてみればそうだ、と理解しながらも、
サンスイはサンスイ号とJBL号、二冊分の予算を用意しなかったんだ……、と思っていた。

メーカー、輸入商社がどれだけ出していたのか、それは知らないし、特に興味はなかった。
ただいまふり返って思うのは、サンスイとティアックについて、である。

ティアックはタンノイ号を優先した。
ティアック号は出なかった。ティアック号が出てもおかしくはないし、
むしろティアック号が出なかったことが不思議でもある。

ようするにティアックはタンノイを優先した。
サンスイはJBLよりも自社のことを優先した。

当時タンノイも売れていただろうが、
JBLの売行きはそれ以上で、売上高では比較にならないほどだったと思う。
それだけ売れていたJBLの本に対しての山水電気の態度、
それに対してティアックのタンノイの本に対する態度。

この違いが、ティアックは健在でサンスイがこうなってしまったことと、決して無関係とは思っていない。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(その1)

山水電気の倒産がニュースになっている。
二年ほど前だったか、事実上倒産状態になっているというニュースが流れていたから、
今回のニュースにさほど驚きはなかった。

twitter、facebookのタイムラインでも、サンスイの倒産は話題になっていて、
あえて検索しないでも、今回の倒産に関してのいくつかの記事へのリンクが表示される。
いくつか読んだ。
なぜ山水電気が倒産したのかについての考察もあった。食い足りなかった。

この記事を書いた人はオーディオマニアじゃないんだな、ということが伝わってくるし、
もしオーディオに関心をもっていた(いる)人であったとしても、
サンスイの製品を実際に見て触って聴いてきた人ではないな、という感じがした。

私にとっての最初で最後のサンスイの製品はAU-D907 Limited。
それから1982年から丸七年間、サンスイのあらゆる製品を見て触って聴いてきた。

それらのことを今回の倒産と結びつけて書こうと思えば書けるのだが、
ここで書くのはまったく違った視点からである。

1970年代後半、ステレオサウンドは「世界のオーディオ」という別冊を出していた。
ラックスから始まり、マッキントッシュ、サンスイ、アルテック、ビクター、パイオニア、テクニクス、
ソニー、オンキョー、タンノイと続いてた。

私はJBLが出るのを期待していた。
が結局、タンノイ号で最後になってしまった。