「目的地」
ステレオサウンド38号からもうひとつ。
黒田恭一氏の文章から。
「したがってぼくは、目的地変動説をとる。
さらにいえば、目的地は、あるのではなく、つくられるもの。
刻一刻とかわるその変化の中でつくられつづけられるものと思う。
昨日の憧れを今日の憧れと思いこむのは、
一種の横着のあらわれといえるだろうし、
そう思いこめるのは、仕合せというべきだが、
今日の音楽、ないし今日の音と、
正面切ってむかいあっていないからではないか。」
いま読んでも、するどくふかいと感じる。
この文章と、アバド、ポリーニによるバルトークのピアノ協奏曲は同時代である。