ワイドレンジ考(ジャズにとって、クラシックにとって・その11)
1980年にはいってからオーディオ雑誌に頻繁に登場するようになった言葉のひとつに、音場と音場感がある。
音場と音場感──、
語尾に「感」がつくかどうかの違いだけで、
意味にも大きな違いはないかのように使われているようにも感じている。
けれど音場と音場感は、決して同じ意味のことではない。
音場とは文字通り、音の場、つまり音の鳴っている場であり、
オーディオは録音された音楽を再生するものであるから、
ここでの音場とは、音楽の鳴っている(鳴っていた)場のことである。
つまり録音された場のことと定義できる。
スタジオであったりホールであったり、ときに個人の家ということもある。
とにかく録音された演奏がなされた場こそが音場であるし、
これはあくまでも「録音の音場」である。
録音に音場があれば、再生側にも音場が存在するわけで、
この再生側の音場の定義は、録音の音場の定義のように簡単ではないところがある。