日本のオーディオ、日本の音(その21)
グレン・グールドがヤマハのピアノで録音している、という情報が伝わってきたとき、
こんなことを話してくれた人がいる。
ヤマハのピアノはスタインウェイのピアノと部品の互換性がある、とのこと。
だからグールドが選択したヤマハのピアノは、ほんとうに内部までヤマハのピアノだろうか、
外観はヤマハでも中身はスタインウェイに換えられている、ということだって考えられる、と。
オーディオの関係者が、そう話してくれた。
でも、実際にゴールドベルグ変奏曲を聴けば、
外観だけヤマハのピアノということではなく、正真正銘ヤマハのピアノだということはわかる。
でも、この話をしてくれた人も、心のどこかに欧米文化へのコンプレックスがあったのかもしれない。
そうでなければ、こんなことを考えたりはしない。
さらには、人に話したりはしない。
グールドがヤマハのピアノを選び、しかも絶賛していることを素直に喜べないところに、
あのころ私もふくめて、
まわりの人たちも欧米文化へのコンプレックスがまったくなかった人はいなかったように思う。
そのころの私だったら、
そして、そのころソニーのTA-NR10とマークレビンソンML2(No.20)とがすでに存在していたら、
もう間違いなくマークレビンソンの方を高く評価していたはず。
それだけではなく、ソニーの方を、つまらない音、とも評価していたように思う。
グールドのゴールドベルグ変奏曲から30年。
いまは、そのころとは違う。すでに書いているように、
グールドのゴールドベルグ変奏曲を聴くために、
ヤマハのピアノで魅かれたグールドのゴールドベルグ変奏曲を聴くために、
選ぶスピーカーシステムは日本のダイヤトーン2S305であり、
2S305を鳴らすために選ぶパワーアンプは、日本のソニーのTA-NR10である。