オリジナルとは(続々・チャートウェルのLS3/5A)
黒田先生の音楽の聴き方を少しでもみならっていこう、とある時期から思いはじめ、
オーディオ的音色の魅力から抜け出したうえでの音楽の聴き方をしていこう、と。
オーディオマニアならば、誰しも、ころっとまいってしまうオーディオ的音色がある、と思う。
そのオーディオ的音色の存在を意識しているか意識していないかの違いはあっても、
オーディオ的音色の魅力にまったく惹かれることのないオーディオマニアはいない、と思う。
そういう人は、いわせてもらえれば、どれほどオーディオにお金をかけていても、
いい音で鳴らしていようとも、オーディオマニアではないのではなかろうか。
強い聴き手でありたい──、
だから、できるかぎりオーディオ的音色の魅力から抜け出てきた、
そのつもりではあった。
でもチャートウェルのLS3/5Aの復刻記事を目にすると、
まだ抜け出方に不徹底なところがあるのを意識させられる。
そういえば、と思い出す記事がある。
ステレオサウンド別冊HIGH-TECHNIC SERIES 3、
トゥイーターを55機種集めて試聴を行った、この別冊の巻頭記事にJBL4343のトゥイーターを、
他社製品に置き換えた試聴を行っている。
そこで瀬川先生が述べられている。
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どちらにしても井上さんもぼくも、YL的世界にべったり浸っていた時期があって、抜け出てきた。この抜け出方は井上さんの方が徹底していて、ぼくなんか、どうも片足の小指くらいまだ抜けていない気がするんですね。
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この瀬川先生の発言の前に、井上先生は述べられている。
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そういう耽美的な音の世界というのも当然ありますね。これはこれで素晴らしい世界だとは思うんだけれど、ぼくはとらない。
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井上先生にも、黒田先生と同じところでの、強い聴き手の部分があったことを、
この発言、この記事からも感じとれるし、
ステレオサウンドで働くようになってからも、そう感じていた。
ただ、井上先生は強い聴き手であろう、と意識的にそうされていたとは思っていない。
しなやかな聴き手であった、とおもう。