Date: 10月 4th, 2012
Cate: 日本の音
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日本のオーディオ、日本の音(聴くことの怖さ)

百聞は一見に如かず、が、オーディオでは、
百読は一聴に如かず、となる。

誰かの試聴記を何度読むよりも、
あるオーディオ機器について書かれた、いくつもの試聴記、評価を読むよりも、
自分の耳で聴くことのほうが得られるものは多い、ということになるのだが、
これはおおむね事実であっても、つねに一聴したことが正しい、とも限らない。

これまでにいったいどれだけくり返されてきたことだろうか、といつも思ってしまうのだが、
オーディオ機器は、いわゆる使いこなしによって、その結果として生ずる音が影響を受けてしまう。
どういう試聴環境での「一聴」なのかが重要になるわけだが、
案外、このところには関心がないのか、
ただ聴いた印象が、その人の中に居座っていることも多い、と感じることがある。

運良く、再度、同じオーディオ機器を聴く機会があり、
前回とはまったく異る環境において、そのオーディオ機器の特質が充分に発揮されていれば、
その人の中での、そのオーディオ機器の印象は書き換えられていくはずだが、
そういう機会がないままだと、ずっと最初の音の印象のままになってしまう。

オーディオ機器の中でもスピーカーシステムは、使いこなしによる影響が大きい。
それに優れたスピーカーシステムであればあるほど、
使いこなしの未熟さだけでなく、
アンプやプレーヤーといった、
そのスピーカーシステムに接がれるオーディオ機器の性格ストレートに描き出すことも多い。

ある場所である機会に、あるスピーカーシステムの音を聴いた──、
としても、そのときの音がひどかったとしても、その原因がどこにあるのか、ということになると、
往々にしてスピーカーシステムが負うことになりがちである。

そして誤解が生れ、ときにはそれが育っていってしまう。

いま、この項でダイヤトーンの2S305について書いている。
2S305はヤマハのNS1000Mとともに、日本のスピーカーを代表する存在でもあり、
おそらく多くの人が一度は耳にされた機会がある、と思う。

いい音で鳴っている2S305を聴かれた人もいれば、そうでない2S305の音、
そしてひどい音で鳴っていた2S305の音を聴かれた人もいる。

NS1000Mとともにロングセラーモデルであっただけに、
他の国の、ほかのブランドのスピーカーよりも、
同じ日本のブランドの、他のスピーカーよりも、多くの人の耳に聴かれている。

個人のリスニングルームで、オーディオ販売店の決していいとはいえない環境下で、
さらにスタジオで、2S305は鳴ってきていた。
それだけにひどい音、ひどい音とまでいかなくとも十全でない音で鳴っていた2S305の数は、
他のスピーカーよりも多いはず、と思う。

その数が多ければ、そういう2S305の音を耳にした人の数も多くなる。
その結果「2S305なんてねぇ……」と言ってしまうのも、思ってしまうのも、
なぜ、2S305のことを延々と書いているのだろうか、と疑問に思われる方がいても不思議ではない。

だからいっておきたい。
聴くことの怖さを知ってもらいたい、と。

中途半端なかたちで聴いてしまったがために、そのスピーカーに対する関心を失ってしまうことを、
どう思うのかは、その人の自由ではある……。

オーディオにおいては、時として一聴より百読が正しいこともある。
もちろん、誰が書いたものを読むかも、とても重要なことではあるけれど。

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