Date: 7月 2nd, 2012
Cate: High Fidelity
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ハイ・フィデリティ再考(続×十八・原音→げんおん→減音)

マーチンローガンのコンデンサー型スピーカーとアルテックのA5は、
見た目からしてずいぶん異るスピーカーシステムである。
それでも、このふたつは、アンプからの電気信号を音に変換する器械(スピーカー)である。
用途に多少の違いはあるものの、どちらもいい音を聴き手に届けるためにつくられた器械である。

より正確なピストニックモーション、もっといえば完璧なピストニックモーションこそスピーカーの理想である。
そう考えて、完璧なピストニックモーションを実現するために振動板を改良したり、
駆動源になる磁気回路の改良、その他さまざまなところを改良していくことで、
スピーカーの理想像を実現していく。

ピストニックモーションの追求は、
スピーカーとしての理想動作の実現がスピーカーの理想像を具現化する。
そういう考え方なんだろう。

当然、こうやって生れたスピーカーシステムを鳴らすアンプも、アンプとしての理想動作を追求することになる。
スレッショルドのステイシス回路は、
いわばアンプにおけるピストニックモーションの追求だ、というふうに私は受け止めている。

当時のスレッショルドの謳い文句には、
トランジスターを一定電圧、一定電流で動作させることで増幅素子のもつ非直線的なところを取り除き、
いかなる負荷に対しても安定した動作を保証する──、
そういったことだったと記憶している。

こういうステイシス回路とALEPHの回路を比較すると、
マーチンローガンのコンデンサー型スピーカーとアルテックのA5の比較と重なってくるところがある。

ネルソン・パスがALEPHで目指したアンプの理想像とは、
アンプ単体での理想動作ではなく、スピーカーを含めて、さらに部屋(その空気)、
そして人間の鼓膜(これもまた動作は非対称である)をひっくるめたものを俯瞰しての動作の追求にみえてくる。

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