ワイドレンジ考(その81)
スピーカーを自作した人、
自作していなくてもネットワークを定数を計算したことのある人なら、
クロスオーバー周波数が100Hzということが、
どれだけネットワークの製作(実際にはコイルの製作といっていい)が大変か理解されることだろう。
タンノイのKingdomのネットワークの回路がどうなっているのかわからないので、
一般的な値でいえば、クロスオーバー周波数100Hzで12dB/oct.の場合、
ウーファーに対して直列にはいるコイルの値は18mHとなる。
そうとうに大きな値となってしまう。
実際にどの程度大きなコイルになってしまうのか、を知るには、
スピーカーのネットワーク用のコイルを製造しているメーカー、
デンマークのJantzen audioのコイルのカタログをダウンロードしてみれば、すぐにわかる。
Jantzen audioのコイルは0.01mHから700mHまで、実に幅広く、しかも細かく対応している。
インダクタンス値が小さいコイルでは空芯だが、値が大きいものでは空芯と鉄芯入りの両方が、
値がそうとうに大きいものではほとんど鉄芯入りとなっている。
このカタログで18mHのところをみると、6種類のコイルが用意されている。
空芯と鉄芯入れ、それにコイルの巻線の太さが異るからである。
100Hz用のネットワークで使うコイルを空芯でいこうとすると、1699と1717の2つがある。
この2つのコイルの違いは、巻線の太さで1699は0.7mm径、1717は1.2mm径。
重量は1699が440g、1717が1341gと大きな差がある。
巻線の太さ、重量の違いはコイルの直流抵抗の差となっても現れている。
1699の直流抵抗は5.76Ω、1717は2.4Ωで、
1699の5.76Ωは8Ωのウーファーのボイスコイルの直流抵抗値とほぼ同じ値である。
この直流抵抗はアンプの出力インピーダンスにプラスされるわけだから、
その分スピーカー(ウーファーユニット)から見たパワーアンプの出力インピーダンスはその分高くなる。