ワイドレンジ考(その82)
どういう音をもとめるかにもよるけれど、
実際にクロスオーバー周波数が100Hzのスピーカーシステムのコイルに空芯タイプを使うことはない。
もっと直流抵抗を低くする必要があるから、Jantzen audioのラインナップから選ぶとすれば、
鉄芯入りの5160ということになる。
5160の直流抵抗は0.83Ω。
0.83Ωという、それでもまだ高い直流抵抗と感じるけれど、
18mHというコイルの大きさからすれば、この直流抵抗はそうとうに低い値といえる。
このコイルがパワーアンプとウーファーのあいだに介在しているわけだ。
しかも18mHはあくまでも12dB/oct.の遮断特性での値であって、
18dB/oct.となるとコイルはさらにもうひとつ増える。これも直列に入る。
このとき19.1mHと6.4mHとなる。
24dB/oct.となると、コイルの値はさらに増す。24.08mHと12nmHである。
しかもネットワークはコイルだけでは成り立たない。
コンデンサーも必要となる。
クロスオーバー周波数が低いと、コンデンサーの容量もやはり大きくなってしまう。
12dB/oct.では141μF、18dB/oct.では265μF、24dB/oct.では316.25μFと69.63μFとなる。
コンデンサーはウーファーの場合(ローパスフィルター)は並列に入る。
そのため直列に入るコイルほどには音質に与える影響は少ないように感じられるが、
アンプの負荷としてネットワークを見た場合には、どうなるのか。
これだけ考えてもKingdomは、そうとうにパワーアンプにとっては厳しい負荷となるスピーカーシステムだろう。
公称インピーダンスは8Ωと、一般的な値であるし、
世の中にはもっと低いインピーダンスのスピーカーシステムは数多い。
けれど、100Hzというクロスオーバー周波数の低さは、
むしろインピーダンスは低くてもクロスオーバー周波数の高いスピーカーシステムよりも、
また違う意味でアンプを選ぶところがある、といっていいだろう。
Kingdomをいくつものアンプで鳴らした経験がないので断言こそできないものの、
私の感覚としては、300Bシングルアンプで鳴らすスピーカーシステムではないわけだ。