私にとってアナログディスク再生とは(リアパネルのこと・その4)
ステレオサウンドの試聴室で、以前こんなことを体験した。
まだCD以前のころで、そのときのステレオサウンドのアナログプレーヤーはExclusive P3だった。
なにかの試聴の準備が終り、チェックのために音を出したら、
いままで体験したことのないほど大きなハムが発生した。
ここまで大きなハムが出るということは、アース線は間違いなく接続したはずだったけれど、
接続し忘れたのかとチェックしても、結線にミスはなかった。
カートリッジはMC型、昇圧用にはトランスを使っていた。
トランスはヘッドアンプよりもハムをひきやすい。
けれど、このとき使っていたトランスは何重にもシールドがなされたもので、
それまでの経験からいってもハムにはかなり強いものにも関わらず、盛大にハムが出る。
トランスの向きを変えてみたり、ケーブルの這わせ方をあれこれ試したりしてもハムはほとんど減らない。
かなり時間をかけてわかったのは、パワーアンプからの漏洩フラックスが原因だった。
それも盛大な、そのパワーアンプの電源トランスからのフラックスが洩れを、昇圧トランスが拾っていたわけだ。
しかもこのパワーアンプは、国産メーカーの、それもオーディオ専門メーカーの最高クラスのものだった。
原電トランスには立派そうなケースがかぶせてあった。
なのに他社製のどんなアンプよりも漏洩フラックスは凄かった。
昇圧トランスとパワーアンプとの距離は、通常なら問題にならないくらいには離れていても、こうなってしまった。
昇圧トランスだからはっきりとハムという形で表れ、そのパワーアンプの欠点(というより欠陥)がわかったが、
このアンプをラックにいれ、その上にコントロールアンプがあったら、どうなっていただろうか。
あのアンプのメーカーは、 MC型カートリッジもつくっていたし、スピーカーもつくっていた。
けれどMC型カートリッジ用の昇圧トランスはなかった、ヘッドアンプはあったけれども。
おそらく、このメーカーの人たちは開発・試聴時にトランスを使うことはしなかったのだろう。
トランスをつかっていれば、すぐに、このパワーアンプの問題点はわかったはずだから。
このパワーアンプは、はっきりいって極端な実例である。
ここまでひどい漏洩フラックスのアンプにはその後、出合っていない。
とはいうものの電源トランスがあれば、それが容量の大きなものであれば、多少なりともフラックスは洩れている。
そのフラックスの発生源であるアンプを、アナログプレーヤーの真下には、やっぱり置きたくない。
こんなこともあって、それと操作性の面からも、フォノイコライザーを搭載したコントロールアンプなり、
プリメインアンプのデザインについては、私の頭の中はあれこれ、どうしても考え込んでしまうことになる。