黒田恭一氏のこと(その7)
サウンドコニサーの取材時のアクースタットの輸入元は、神戸のファンガティだったが、
その前に取り扱っていたのはバブコ(いまのエレクトリ)で、Model 3登場の5年前、
Acoustat Xが、ステレオサウンド 43号の新製品紹介の記事中で取りあげられている。
43号のころ(1977年)は、中学生。クラシックばかり聴いていたわけではなく、
やはり「女性ヴォーカル」に夢中になっていた時期でもある。
となると、43号に岡先生はQUADのESLを「弦とヴォーカルのよさは類のないものである」と紹介されている。
やっぱり、女性ヴォーカルを最良の音で聴くには、コンデンサー型なんだなぁ、
と中学3年だった私は、そう思い込むのが、また楽しかった。
さらに「30〜50WのAクラス・アンプでドライヴしたときはとくに素晴らしい」とも書かれている。
ということはパワーアンプはパイオニアのエクスクルーシヴM4になるのか、と妄想組合せをつくっていた。
でも、30Wぐらいの出力でもよければ、真空管アンプという選択肢もある。
やはり43号に、瀬川先生は、ラックスのSQ38FD/IIについて
「弦やヴォーカルのいかにも息づくような暖かさ、血の通った滑らかさ」と紹介されている。
QUADのESLをSQ38FD/IIで鳴らしたら、いったいどんなに素晴らしい女性ヴォーカルが聴けるんだろう……、
まだ、どちらも音も聴いたことがなかったからこそ、実際に出てくるであろう音を、
少ない経験、少ない知識しか持っていなかった、
だから自由に(勝手に)に想像でき、それが楽しかった。