「オーディオ」考(その8)
私がオーディオに興味をもちはじめた1976年は、まだ組格子のスピーカーシステムが現役であった。
学生だった者にとって、もっとも身近な組格子のスピーカーシステムといえば、
サンスイがJBLのLE8Tを採用したSP-LE8Tだった。
1976年にはすでに製造中止になっていたけれど、
JBLのオリンパスは、私にとっては見事な組格子のスピーカーシステムという印象が、まず最初にある。
オリンパスもSP-LE8Tもエンクロージュア自体は基本的に四角い箱である。
オリンパスはひさし状になっているし、組格子の上からみるとコの字型になっていて、
組格子といってもSP-LE8Tのものとは大きさも造りの立派さも違う。
当時、中学生で4343に惹かれていた若造の目には組格子そのものが、実のところ古臭いイメージとして映っていた。
SP-LE8TはLE8Tそのものに関心があったため、早く聴いてみたい、と思っていたものの、
オリンパスに関しては、立派な外観のスピーカーシステム、という印象以上のものが持てずに、
聴いてみたいスピーカーシステムのリストにははいっていなかった。
それに、あの頃は、いま、こうやって書いているように、
オーディオが家具だった時代があった、とは思ってもいなかった。
けれど、いま家具としてオーディオ機器をとらえようとすると、
オリンパスは、家具としてみることができるスピーカーシステムといえる。
オリンパスをそううけとっているのは、組格子の存在である。
もしオリンパスが組格子ではなくエンクロージュアの形状、仕上げはそのままで、
ほかのスピーカーシステムと同じようにサランネットだったら、
たとえそのネットの布地に気を使い良質の素材を使っていようと、色も慎重に決めていたとしても、
オリンパスを家具とは見れなかった、はずだ。
オリンパスのトレードマークといえる組格子だが、
音的に見た場合、スピーカーユニットの前に、けっこうな厚みの木でできた組格子は障害物となる。
布だけのサランネットでさえ、音の透過性が問題になり、
サランネットをなくしてしまったスピーカーシステムが出てきているし、
1980年代でも、ステレオサウンドの試聴室では、
大半のスピーカーシステムの試聴時にはサランネットを外していた。