Date: 12月 23rd, 2011
Cate: 「オーディオ」考
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「オーディオ」考(その7)

QUADのESLとESL63の重量はカタログ発表値ではどちらも18kgといっしょである。
なのにESLには持運び用の把手といえるものがあるのに対し、ESL63には把手に相当するものはついていない。
ESL63Proには両サイドに持ち運びに便利なバンドがついているが、
これはモニタースピーカーとして、
スタジオだけではなくコンサートホールなど録音会場に持ち運ぶことを考慮してのものであり、
家庭用スピーカーシステムとしてのESL63には、把手もバンドもついていない。

そしてESL63はESLのようにパネルヒーター的な外観ではない。
ESL63本体を覆っているのは布地のネットである。存在を目立たせないようにか、色もブラウンとなっている。
オーディオにまったく関心のない人だと、すぐにはスピーカーだとはわからないかもしれないESL63だが、
だからといってなんらかの家具に見えるわけでもない。

なぜESL63には把手が付いていないのか。
それは(その6)で書いたことのくり返しになるが、ステレオ再生では2台のスピーカーの位置は、
モノーラル再生よりもずっと重要で厳密になってくる。
だからリスニングルームにおける最適の位置探しが──それも片方だけではなく2台のスピーカーに対して──、
モノーラルでスピーカーシステムが1本だけのころよりもずっと大変で難しい。
そうなってくると、もうスピーカーシステムを音楽を聴かないときにはどこかに移動したり仕舞っておくものではなくなる。

ESL63に把手がなくなったのはステレオ用スピーカーシステムとして最初から開発されたものであるということ、
だから中高音域においては電極を同心円状に配置してディレイをかけることで球面波をつくり出そうとしている。

1981年に登場したESL63は、すでに音を奏でる家具ではなくなっていた。

他のスピーカーシステムはどうだろうか。
家具というイメージにぴったりなのは、やはりJBLのパラゴンがまず浮ぶ。
パラゴンに関しては、別項できちんと書いてみたい。
パラゴン以外のJBLのスピーカーシステムはどうだろうか。
オリンパスやハークネスは、どうとらえることができるか。

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